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ウェルビーイング学部長 前野隆司教授登壇!経済的幸福の新しい切り口ーブロードマインド株式会社のセミナーにて

 2024/05/29、ブロードマインド株式会社による、『日本初「ウェルビーイング学部」学部長 前野隆司教授が登壇!従業員幸福度を高める、まったく新しい“切り口”を学ぶセミナー』をオンラインにて聴講しました。

 このセミナーは、従業員の幸福度を向上させるための新たなアプローチとして注目されている「ファイナンシャルウェルビーイング」に関するセミナーです。
 幸福学の第一人者である前野隆司教授と、ファイナンシャルウェルビーイングプログラム「ブロッコリー」を開発・提供する株式会社ブロードマインドの中村氏が登壇し、それぞれの視点からファイナンシャルウェルビーイングの概念、重要性、そして具体的な実践方法について取り上げられており、大変興味深く、また、参考になる内容でした。

前野隆司教授による講演

 前野教授は、ウェルビーイングを「心身の良好な状態」と定義し、身体的、精神的、社会的な側面に加えて、経済的な側面であるファイナンシャルウェルビーイングも重要な要素であると強調しました。経済的な安定は、衣食住といった基本的な欲求を満たすだけでなく、自己実現や社会貢献といった高次の欲求を追求するための基盤となるからです。

 お金と幸福の関係性については、お金は生活に必要な水や食料のようなものであり、ある程度の収入までは幸福度に貢献するものの、それ以上は幸福度に影響を与えにくいという研究結果を紹介しました。つまり、高収入を得ることが必ずしも幸福に直結するわけではないということです。例えば、高級レストランでの食事や豪華な旅行は一時的な満足感をもたらしますが、その幸福感は長続きしません。

 前野教授は、幸福にはドーパミン型(一時的な快楽)とセロトニン型(持続的な幸福)の2種類があり、両者をバランスよく満たすことが重要であると説明しました。ドーパミン型の幸福は、目標達成や欲しいものを手に入れた時などに感じる高揚感ですが、持続性はありません。一方、セロトニン型の幸福は、人との繋がりや感謝の気持ちなどから生まれる穏やかな幸福感であり、長く続く傾向があります。

 お金に関しても、自己投資や利他的な使い方をすることで、セロトニン型の幸福感を高めることができると提案しました。例えば、自己成長につながるスキルアップにお金を使う、社会貢献活動に寄付する、家族や友人との時間を豊かにするために使うなどが挙げられます。

株式会社ブロードマインド 中村氏による講演

 中村氏は、ファイナンシャルウェルビーイングを「現在と将来にわたって経済的な健全性が確保され、お金の不安から解放された状態」と定義しました。イギリスやアメリカでは、ファイナンシャルウェルビーイングの向上が国家戦略として取り組まれており、経済的安定は個人の幸福だけでなく、企業の生産性向上や社会全体の活性化にもつながると述べました。経済的な不安を抱える従業員は、仕事に集中できなかったり、将来への不安からモチベーションが低下したりする可能性があり、企業にとっても大きな損失となるからです。

 中村氏は、ブロードマインド社が実施したアンケート調査の結果を紹介しました。この調査では、ファイナンシャルウェルビーイングが高いと幸福度も高い傾向があり、特にライフプランニングと金融知識の習得が幸福度に大きく影響することが明らかになりました。
 ライフプランニングは、結婚、出産、住宅購入、子どもの教育、老後など、将来のライフイベントを想定し、その実現のためにお金と時間をどのように使うかを計画することで、将来への不安を軽減し、目標達成へのモチベーションを高めます。また、金融知識は、預金、投資、保険、税金など、お金に関する正しい知識を身につけることで、適切な判断を下し、経済的なリスクを回避するために不可欠です。

 さらに、同社が提供するファイナンシャルウェルビーイングプログラム「ブロッコリー」の導入事例として、SSK株式会社での取り組みを紹介しました。このプログラムは、従業員が金融知識を身につけ、ライフプランニングを立てることをサポートするもので、導入の結果、従業員の金融に関する不安が軽減され、ファイナンシャルウェルビーイングの状態に近づいたと感じる人が9割近くに上ったと報告しました。具体的には、家計管理の改善や将来設計への意識向上など、従業員の行動変容が見られたとのことです。

質疑応答の中で

 ファイナンシャルウェルビーイング教育のあり方については、前野教授は健康教育と同様に義務教育に取り入れるべきだと主張し、中村氏は企業と個人の両面からの取り組みが重要だと述べました。
 また、ファイナンシャルウェルビーイングの高低差の特徴については、中村氏はライフプランニングや金融知識の習得度合いが大きく影響すると指摘し、前野教授は、年齢やライフステージによって幸福度が変動する可能性を示唆しました。
 さらに、ウェルビーイングという言葉が注目される背景については、前野教授は社会の複雑化や価値観の多様化により、人々の幸福に対する関心が高まっていると分析しました。

全体を通して

 このセミナーは、ファイナンシャルウェルビーイングの概念とその重要性を理解し、それを高めるための具体的なアプローチ方法を学ぶことができる貴重な機会となりました。
 お金と幸福の関係は複雑ですが、ファイナンシャルウェルビーイングを高めることで、より豊かな人生を送ることが可能になるでしょう。
 セミナーで紹介されたライフプランニングや金融知識の習得は、ファイナンシャルウェルビーイングを高めるための第一歩であり、企業にとっても従業員の幸福度を高め、生産性を向上させるための有効な手段となるでしょう。

人事視点からファイナンシャルウェルビーイングを考える

 人事の視点から、従業員のファイナンシャルウェルビーイングを高める重要性について考察してみます。ファイナンシャルウェルビーイングとは、従業員が現在そして将来にわたって経済的な安定を感じ、お金に関する不安から解放された状態を指します。この状態は、従業員の幸福度や仕事への集中力、モチベーションに直結し、結果として企業の生産性や業績向上に貢献する可能性を秘めています。

 今回のセミナーで得られた内容に基づき、人事としてファイナンシャルウェルビーイング向上に取り組むべき具体的な方向性考えてみます。

ファイナンシャルウェルビーイング向上施策の戦略的な設計

 ファイナンシャルウェルビーイングが高い従業員は幸福度も高いという調査結果は、ファイナンシャルウェルビーイング向上施策が従業員満足度向上に繋がる可能性を示唆しています。従来の福利厚生とは異なり、ファイナンシャルウェルビーイング向上施策は従業員の経済的な安定と心の健康を同時にサポートするものであり、離職率の低下、エンゲージメントの向上、そして優秀な人材の獲得にも繋がると期待されます。

 例えば、従業員が将来設計について考える機会を提供する「ライフプランセミナー」や、投資や保険、税金などに関する知識を身につけるための「金融リテラシー講座」などを定期的に開催し、従業員の主体的な学習を促すことが有効です。また、社内にファイナンシャルプランナーを配置し、従業員が気軽に相談できる体制を整えることも検討すべきでしょう。

営層の理解と協力を得る

 一方で、ファイナンシャルウェルビーイングは従業員のプライベートな領域に関わる問題であるため、経営層の中には企業としてどこまで介入すべきか悩む人もいるかもしれません。しかし、従業員の経済的な不安は、ストレスや集中力の低下を招き、結果として企業の生産性や業績に悪影響を及ぼす可能性があることを理解してもらう必要があります。

 経営層に対しては、ファイナンシャルウェルビーイング向上施策が従業員のエンゲージメントを高め、企業の成長に不可欠な投資であることを具体的に説明し、理解と協力を得ることが重要です。
 例えば、ファイナンシャルウェルビーイング向上施策を導入している他社の成功事例を紹介したり、ファイナンシャルウェルビーイング向上によって期待できる効果を数値化して提示したりするなどの工夫が考えられます。

個別対応と継続的なサポート

 従業員のファイナンシャルウェルビーイング状態は、年齢、ライフステージ、家族構成などによって大きく異なります。そのため、画一的な施策ではなく、個々の状況やニーズに合わせたきめ細やかなサポートを提供することが重要です。
 例えば、定期的なアンケート調査や面談を通じて、従業員の経済的な状況や不安を把握し、適切な情報提供やアドバイスを行うことが求められます。また、社内イントラネットやコミュニケーションツールを活用して、ファイナンシャルウェルビーイングに関する情報を定期的に発信し、従業員の意識向上を図ることも有効です。

 ファイナンシャルウェルビーイング向上は、一朝一夕に達成できるものではありません。人事としては、長期的な視点で継続的なサポート体制を構築し、従業員の経済的な安定と心の健康を支え続けることが重要です。

 これらの取り組みを通じて、従業員のファイナンシャルウェルビーイングを高めることは、従業員一人ひとりの人生を豊かにするだけでなく、企業全体の成長と持続可能性にも大きく貢献することになるでしょう。ファイナンシャルウェルビーイングの進んだ企業は差別化ができるかも知れません。


ファイナンシャルウェルビーイングの概念を視覚的に表現しています。左側には、ノートパソコンで予算を管理している人物が描かれ、収入、支出、貯蓄のグラフが表示されています。中央には、経済的安定による心の平和を象徴するかのように、家族が楽しそうに一緒に時間を過ごしています。右側には、退職後の計画についてファイナンシャルアドバイザーと相談している人物が見られます。全体として、柔らかく親しみやすい色合いで、バランスと調和が取れた、平穏で楽観的な雰囲気が表現されています。


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