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サクセッション・プランで企業の成長を支える:いまのたかの組織ラジオ#204

 今野誠一氏(GOOD and MORE)と高野慎一氏(aima)によるユニット『いまのたかの』。マネジメントと組織の現場についてカジュアルに語る、「組織ラジオ」です。

 今回は、第204回目「サクセッション・プランは各階層に」でした。今回は各階層におけるサクセッション・プランの重要性について議論されています。さらに、企業の成長や持続的な運営を支えるためには、次世代のリーダーを計画的に育成する仕組みが欠かせないという視点が強調されていました。

 まず、ある企業において役員経験のない部長が突然社長候補に選ばれたケースを紹介しています。これは社内にとって「青天の霹靂」のような出来事であり、当初この部長も戸惑いを隠せなかったとのことです。しかし、コーチングセッションを通じて、社長として何をすべきかという演習を行い、その結果、部長は社長候補としての役割を自覚し始めました。特に、事業の運営や経営に関する広い視野を持つためのサポートが非常に効果的だったと述べられています。

 次に、サクセッション・プランの重要性についての話題です。後継者育成において計画的な取り組みが不可欠であり、特に社長候補や役員候補を計画的に選び、育成していくプロセスが求められるとしています。このようなプランがなければ、突然の人事異動や抜擢が行われた場合、候補者自身が準備不足で戸惑うだけでなく、企業全体としても大きな混乱を招くリスクがあります。そのため、計画的なサクセッションが行われていれば、後継者候補が必要な能力を事前に養い、役割に対する心構えや経営者としての視野を広げる機会を得ることができるのです。

 また、今回のテーマにもありますが、サクセッション・プランを全ての階層において導入すべきであるとしていました。つまり、単に社長や役員だけでなく、部長、課長といった役職においても後継者育成計画を策定することが必要だと述べています。
 例えば、課長クラスでは将来的に部長としての役割を果たせるように、部長クラスでは役員としての視野を持つことができるように、それぞれの役職に応じた能力や視野を広げるための施策を導入することが求められています。このような施策が進んでいれば、企業は強くなると考えられており、次世代のリーダーたちが準備万端で役割を引き継ぐことができるようになります。

 さらに、企業の中でよく見られる問題点として、多くの企業では、特定のポストに適した能力や要件を十分に明確にしないまま昇進や昇格が行われることがあり、その結果、ポジションに見合わない人材が重要な役職に就くことがあると指摘しています。特にトップ営業マンが早期に課長に昇進することが多いですが、必ずしも課長としてのリーダーシップやマネジメント能力が備わっていない場合も少なくありません。このような状況では、個人の能力が十分に発揮されないだけでなく、チーム全体にも悪影響を及ぼす可能性があります。そこで、ポストに必要な要件を明文化し、その要件に適合する人材を選び、適切なトレーニングを行うことが重要であると述べられています。

 サクセッション・プランは企業にとって非常に重要な戦略であり、後継者育成は経営者の責任であると強調しています。特に経営陣においては、自身が役職に就いた瞬間から次の後継者を見据え、その育成に取り組む姿勢が求められます。このような計画的なアプローチが企業の長期的な成功に繋がり、経営の継続性を保つために欠かせない要素であると結論付けられています。

 サクセッション・プランは、ただの人材育成の一環ではなく、企業全体の成長や持続的な成功を支える重要な仕組みであり、特に経営陣がその責任を果たすことが、組織全体の強さに繋がるというのでしょう。

人事の視点からの考察

 人事部門が果たす役割は後継者の計画的な育成と、組織全体の人材戦略の一環としてのサクセッション・プランの実施でしょう。具体的な視点を考察してみます。

1. 計画的な人材育成の重要性

 サクセッション・プランは、単なる昇進や昇格の制度とは異なり、次世代のリーダーを戦略的に育成する仕組みです。人事部門としては、企業の将来を見据えた長期的な人材育成プランを立てることが不可欠です。具体的には、各役職に必要な能力やスキルを明確化し、それに基づいて次のリーダー候補を選定し、計画的に育成していくことが求められます。これには、日常業務をこなすだけではなく、リーダーシップ、経営視点、問題解決能力など、より高度なスキルの習得を促進するトレーニングやコーチングが含まれます。

2. 透明な昇進基準と公正な評価プロセス

 サクセッション・プランの成功には、透明で公正な昇進基準の設定が不可欠でしょう。人事部門として、組織内の各役職に必要なスキルや経験、リーダーシップ能力などの明確な要件を定義し、それに基づいて昇進プロセスを管理します。気をつけるべきは、「トップ営業マンだから課長に昇進させる」といった感情的・非合理的な判断を避け、役職の要件に合った人材を公平に選び出すことです。こうした基準が明確でない場合、適材適所の人事が行われず、組織全体に悪影響を及ぼすリスクが高まります。

3. 柔軟なリーダーシップ育成

 リーダーシップ育成において柔軟性を持たせることが求められます。リーダーシップのスタイルやスキルは一律ではなく、部門や役職によって必要とされる能力が異なるため、人事はそれぞれの候補者に応じた適切な育成プランを設計する必要があります。
 例えば、若手の管理職候補には、基本的なマネジメントスキルや意思決定のトレーニングを施す一方、役員候補にはより戦略的な視点での経営判断能力や危機管理能力を育成するプログラムを導入することが重要です。

4. 多様性を考慮した後継者選定

 サクセッション・プランを人事が実施する際に考慮すべきもう一つの視点は、多様性です。組織内のリーダー候補を選定する際、性別、年齢、国籍など、多様なバックグラウンドを持つ人材を積極的に取り入れることが、イノベーションや組織の柔軟性を高めることに繋がります。多様な視点を持ったリーダーを育成することで、組織はより広い視野で課題に対処できるようになり、変化の激しい環境にも適応しやすくなります。人事部門はこの多様性の促進を重視し、後継者育成において公平なチャンスを提供する役割を担うべきです。

5. 次世代リーダー育成のためのコーチングとメンタリング

 特に経営陣や上級管理職候補の育成において、コーチングとメンタリングは非常に重要です。人事部門は、コーチングやメンタリングのプログラムを設計し、候補者が実際に経営視点を持って行動できるようサポートします。例えば、実際の経営シミュレーションを通じて、経営判断のトレーニングを行い、候補者が現場での実践を通じて経営に対する理解を深める機会を提供することが効果的です。また、メンターを通じて経験豊富な経営者からのフィードバックを受けることで、候補者は自分自身の成長領域を明確にし、より具体的な目標を持って成長できるようになります。

6. ポストサクセッション・プランの構築

 後継者が適切に選定され、トレーニングを受けた後、重要なのはその後のフォローアップです。サクセッション・プランの成功は、後継者が正式な役職に就いた後も継続的なサポートを行うことにかかっています。人事部門は、新しい役職に就いた後も、引き続き成長をサポートする体制を整え、継続的な学習やフィードバックを提供する必要があります。特に、リーダーシップの初期段階では、失敗や課題に直面することも少なくないため、その都度サポートし、経験を通じて成長を促す仕組みが求められます。

まとめ

 サクセッション・プランは企業の長期的な成功にとって極めて重要な要素であることを改めて認識させられました。計画的な人材育成、透明な昇進基準、多様性の促進、そして柔軟かつ継続的なサポート体制が不可欠です。人事はその中心的な役割を担い、企業の未来を支える次世代のリーダーを育成するために、戦略的かつ組織的なアプローチを実施することが求められるのでしょう。


後継者育成とリーダーシップの計画をテーマにしたビジネスシーンを描いています。リーダーが図解を含む書類を手に持ち、若い社員に対して指導を行っている姿が描かれており、メンターシップや計画的な人材育成の重要性が強調されています。背景のホワイトボードにはリーダーシップ階層を示すフローチャートが描かれ、継続的な組織運営と成長を支えるための体系的なプランが示唆されています。柔らかな自然光に包まれたオフィスの雰囲気が、前向きでプロフェッショナルな環境を表現しています。


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