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無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)に注意

 アンコンシャス・バイアスとは、「我々が無意識のうちに持っている、歪んだ思考・偏見」を指します。アンコンシャス・バイアスはトラブルになることが多く、できる限り顕在化しないようにする必要があります。アンコンシャス・バイアスについて、具体的な例、生じる理由、問題点、難しさ、減少させるメリット、どうやって減少させるかについて考えてみます。

アンコンシャス・バイアスの具体的な例

特定の属性からの思い込み

 特定の属性(例えば、人の外見、出身地等)に基づいて人や物事を判断する傾向があります。これにより、客観的な評価や公平な判断が妨げられる可能性があります。
 例えば、ある人が特定の人種や民族の出身だと知った場合、それに基づいてその人の能力や性格を予測することは、アンコンシャス・バイアスの一例です。

学習、未学習による間違った知識の習得とそのこだわり

 間違った知識や情報を学習したり、たった一度の経験や情報源に基づいてそれに過剰に固執する傾向があります。そうなると過去の経験や学習の限られた情報に基づいて、新しい情報を受け入れることが困難になります。
 例えば、過去にある特定のグループのメンバーと悪い経験をしたことで、そのグループ全体に対して偏った見方をするような場合、このバイアスが影響している可能性があります。

他者の意思による判断

 他人や社会の意見・期待に合わせて自分自身を判断したり行動したりする傾向があります。自分の本当の意見や価値観を無視して、他者の影響によって判断を下すことがあります。
 例えば、ある人が、特定のグループに所属しているために、そのグループの期待に合わせた行動を取ることがあります。これにより、自分自身の考えや感情を抑制する場合、このバイアスが働いているといえます。

自身にとって心地よい知識・情報への偏った思い込み

 自分自身にとって都合の良い情報・知識を好んで信じる傾向があります。自分の既成の信念や意見をより強化する情報を選択したり、それに対する反対意見や証拠を避けることがあります。これにより、客観的な判断や新たな視点を見落としてしまう可能性があります。
 例えば、ある政治的な信念を持つ人が、自分と同じ意見を主張する情報源だけを選んで情報を収集し、反対の意見を無視する場合、このバイアスが働いていることになります。

過度の一般化

 個々の経験や情報を基に、あまりにも広範な一般化を行いがちです。特定の事例やパターンに基づいて、全体を判断したり予測したりすることで、個別の差異や多様性を見落とすことがあります。
 例えば、ある人が、数人の代表的なメンバーに基づいて、特定のグループ「全体」を判断したり、ステレオタイプを持ったりする場合、このバイアスが影響しているといえます。

アンコンシャス・バイアスが生じる理由

理由はいくつかあります。

評価を他者に依存

 他人からの評価や承認を求める欲求に関連しています。自分が属しているグループや組織からの認められたいという願望が、バイアスを引き起こすことがあります。

自己の自尊心の形成

自己のアイデンティティや自尊心を形成する一環として機能することがあります。自分独自の理論や信念を持つことで、自己の特徴や独自性を強調し、自己価値を高めようとする傾向があります。

認知することを省略してしまう

 情報処理の効率化、認知の省略が生じ得ます。情報の過剰な処理や複雑な分析を避け、短時間で意思決定を行うために、単純な判断基準や既存の信念に頼ることがあります。この結果、正確な判断や客観的な視点が欠如することがあります。

自身で心地よさを得るため

 心地よい感情を生じさせるために働くことがあります。自分の信念や意見が正しいと感じることで、ある意味の安心感、自己肯定感を得ることができます。

アンコンシャス・バイアスの問題点


 アンコンシャス・バイアスには、いくつかの問題点が存在します。以下にそれぞれの問題点を分かりやすく解説します。

個別の判断を放棄
 個別の特徴・能力に基づく個別判断を放棄する傾向があります。代わりに、一般化やステレオタイプに基づいた判断を行うことがあります。これにより、個人の個別の特徴や能力を見逃し、公平性や的確性が欠如することがあります。

無意識的なハラスメントを生じさせる
他者に対して無意識のうちに偏見や差別的な態度を取ることにつながる可能性があります。例えば、特定の人種や性別に対して不公平な扱いをすることがあります。これにより、ハラスメントや不適切な行動が生じることがあります。

論理的思考の歪み
 論理的思考・客観的判断に影響を与える可能性があります。個人の感情や既存の信念に基づいて判断を下し、情報や証拠を無視する傾向が生じることがあります。これにより、誤った結論や不合理な判断が生じる可能性があります。

現実的な対応を避ける
 現実に即した適切な行動や対応を妨げることがあります。個人のバイアスに基づいた判断や行動は、問題の解決や目標の達成に対して効果的ではない場合があります。

他者からの信用が低下 
 
他者からの評価や信用を失う可能性があります。バイアスに基づいた不公平な行動や思考が明らかになると、他者からの信頼を失い、自身の信用が低下することがあります。

洗脳や妄信が生じる
 他者や組織の意見や信念に盲目的に従うことを促す場合があります。バイアスによって洗脳や妄信が生じ、自身の判断力や独立した思考を損なうことがあります。

機会損失となる
 
多様性や異なる意見を受け入れることを妨げることがあります。これにより、異なる視点やアイデアを見逃し、新しい機会や創造的な解決策を見つけることが困難になる可能性があります。

アンコンシャス・バイアスの難しさ

自己で認識することが困難

 無意識のレベルで働くため、自己認識や自己評価の難しさがあります。自分がどのようなバイアスを持っているのかに気づくことや、それを正確に認識することは困難です。自己の思考や行動に対して客観的な視点を持つことが難しいため、アンコンシャス・バイアスに気付きにくくなります。

無意識の領域で活動

 意識的な制御が効きにくい無意識の領域で働くため、自覚や意識的な努力をしなければ修正することが難しいです。バイアスが無意識のうちに働くため、自分自身がそれを気づかずに行動したり、判断を下したりすることがあります。

偏見の認識が抵抗を受ける

 偏見やステレオタイプを含むことがあります。自己が偏見を持っていることに気づくことは、個人的な抵抗や防衛メカニズムによって妨げられることがあります。自分自身が偏見を持っていることを受け入れることは、認知的な不快感や脆弱性を感じさせることがあります。

アンコンシャス・バイアスを減少させることのメリット

多様性や包括性のある組織に

 個人の能力やポテンシャルが適切に評価され、多様性や包括性のある組織環境が築かれる可能性があります。バイアスが少ない状態では、さまざまな背景や経験を持つ人々が平等に機会を得て、その能力を発揮することができます。

より客観的な意思決定に

 より客観的な思考や意思決定が促進されます。バイアスが少ない状態では、情報やデータをより客観的に評価し、より適切な判断を下すことができます。これにより、組織や個人の成果や成果物が向上する可能性があります。

人事評価などがより適切・正確に

 人々の評価や考課が公平かつ正確に行われる可能性が高まります。バイアスが少ない状態では、個人の実績や能力が公正に評価され、公平な報酬や昇進の機会が与えられます。これにより、モチベーションや働きがいが向上し、組織全体のパフォーマンスが向上するでしょう。

従業員満足度の向上

 従業員の満足度・リテンションが向上する可能性があります。バイアスが少ない状態では、個人が公平に評価され、自己成長やキャリアの機会が提供されることが期待できます。これにより、組織内での人材の定着率が高まり、人材の流出を防ぐことができます。

どうやってアンコンシャス・バイアスを減少させるか

固定観念や先入観の見直し(アンラーニング)

 自分たちが持っている固定観念や先入観を見直し、アンラーニングすることが重要です。これは、過去の経験や社会的な影響によって形成された既成の思考パターンを意識的に解除し、新しい情報や視点を受け入れることを意味します。

事実(ファクト)確認の習慣
 情報の選択や解釈において起こります。事実(ファクト)確認の習慣を身につけることで、偏った情報や誤った情報に惑わされることを避けることができます。信頼性の高い情報源を活用し、主張や主張の根拠を確認することが重要です。

自分とは違った視点の人とコミュニケーション
 
他者との対話やディスカッションにおいても顕著に現れることがあります。自分とは異なる意見や視点を持つ人々と積極的にコミュニケーションを図ることで、自身のバイアスを認識し、多様な視点を理解する機会を得ることができます。

事実確認済・未確認情報を分類
 自分たちが持っている知識や情報には、事実確認を経たものとそうでないものがあります。アンコンシャス・バイアスを減らすためには、この分類を明確にすることが重要です。事実確認済みの情報に基づいて意思決定を行うことで、バイアスの影響を最小限に抑えることができます。

特定の人物・グループを信頼しすぎない
 特定の人物やグループに対する盲目的に信頼することは、アンコンシャス・バイアスを引き起こす要因となります。常に批判的思考を持ち、自分自身で情報を評価し判断する能力を養うことが重要です。複数の情報源や意見を比較し、自分の判断を形成することが求められます。


アンコンシャス・バイアスは色々なところに作用

 アンコンシャス・バイアスはいろいろな場面に作用します。例えばハラスメント。アンコンシャス・バイアスがあることで生じることが非常に多いです。難しい側面もありますが、なるべく減らすことが必要でしょう。

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