森信三氏の『修身教授録』は私の大好きな書籍の一つです。この書籍は、いろいろな局面で読む度に新しい気づきを与えてくれます。
2023年7月号の『致知』では、「学を為す故に書を読む」が取り上げられました。これは、江戸時代後期の陽明学者・佐藤一斎の『言志四録』にある言葉です。「読書は学問のための手段である」ということです。これについては、以下の記事で取り上げました。
実は、『修身教授録』の中にも、「読書」について述べた章があります。今回、ここを取り上げて少し深掘りしたいと思います。該当は箇所は 第一部 第9講 仕事の処理 p61-69です。
読書は「心の食物」
読書を「心の食物」という捉え方をしています。つまり、我々は食べるということに対してはなんら不思議もなく実践しているわけです。一方、「心」の栄養分についてはなかなか実践していないのではないでしょうか。人間たるもの、「心」というのが非常に重要である。まずはそこをしっかりと認識する必要がありそうです。
人間生活は読書が半分
「人間の生活の半分を読書に費やす」というのは、非常に大変なことだと思いますが、それだけ重要だということです。ただし、物理的な時間を本当に半分を使うということではなく、「質」が大切だということがいえます。そしてさらに、「実践」をし、また読書に戻る、ということが大切なのでしょう。読むことだけが目的になっており、この点に気づいているという方はあまりいないような気もします。それがきちんとできている方もいらっしゃいそうです。
偉大な先人たちの足跡をたどる
読書は、「偉人のたどったことを容易にたどることができる」、これは非常に重要なことであります。それができるということは読書以外にはないでしょう。「偉大な人」というのは死んでしまっていたり、また、生きていたとしても、常に側にいるわけではありません。偉大な先人は、非常に苦労したということもあるでしょう。それをわずかな金額でたどれるというのは非常に大きいことであります。
「心の養分」は何を取っただろうかということを日々反省
「心の養分」改めて大切にしたいと思います。食物であるとものすごく意識するのですが。「一日読まざれば一日衰える」というのは大変厳しいお言葉。日々実践していくことの大切さを改めて知らされます。
土台は重要ではあるが、その上の建築物は何か
「土台」は確かに重要。しかし、その上の「建物」が非常に重要となってくる。それが学校の学びは「土台」でしょう。しかし、本領発揮は「建物」であり、世に出てからになります。
毎日少しずつの訓練も重要
とにかく、忙しくとも「積み上げていく」ということも重要であるということが分かります。「心の養分」というのはすぐに育ったものではないから、日々の鍛錬というのが重要です。「読書」に対する向き合い方について、いままで自身に甘さがなかったか、改めて問い直しをしたいところです。