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人事のコミュニケーションー感情を言葉で橋渡しする技術

 人事のコミュニケーションは、企業の枠組み内で橋渡しをするだけに留まらず、感情や思いを言葉にして伝える繊細な技術を要します。私の人事の経験から、この技術は、採用、人材開発、パフォーマンスマネジメントなど、人事のあらゆる側面で中核的な役割を果たしています。

 例えば、採用プロセスでは、応募者と企業との間で、お互いの価値観や目指す方向を明確に共有する必要があります。面接では、応募者が持つ経験やスキルを超え、その人の価値観や動機、情熱を理解し、同時に企業のビジョンや文化、仕事の意義を言葉で表現し伝えることが求められます。ここで、単に情報を伝達するだけでなく、企業側の想いや情熱を言葉にして伝えることにより、応募者にとって響くメッセージを届けることができます。
 新卒採用の面接では、応募者が自分の未来に何を求めているのか、どのようなキャリアを描いているのかを深く理解することが求められます。企業側は、提供できるキャリアパスや教育体系、社内の風土を具体的な言葉で伝え、応募者にとって魅力的な未来像を提示する必要があります。中途採用では、応募者の持つ職務経験が新しい環境でどのように活かされ、応募者自身の成長にどうつながるのかを具体的に示すことが重要です。応募者のキャリアビジョンと企業の方向性が一致していることを言葉で明確にすることで、より強い共感と関心を引き出すことができます。

 人事としての役割は、組織内外のコミュニケーションを円滑にし、橋渡しをすることにもあります。部署間、個人間の調整、組合との交渉、福利厚生制度や給与体系の説明など、幅広い場面で感情を込めた言葉でコミュニケートする力が求められます。自分の想いや感情を適切に言葉にして伝えることは、信頼関係を築き、スムーズな人事業務の遂行に直接つながります。

 日常業務においても、想いや感情を言葉にすることは重要です。パフォーマンスマネジメントの場面では、従業員の行動や成果に対して具体的かつ建設的なフィードバックを提供する必要があります。評価結果を伝えるだけでなく、その背景にある想いや意図を言葉で表現することで、従業員の理解とモチベーションの向上につながります。

 このように、人事の仕事においては、自分の想いや感情を言葉にして伝える能力が、さまざまな場面で求められます。これは単に情報を伝達するだけでなく、相手の心を動かし、より良い関係を築くための重要な手段です。人事としてのコミュニケーション能力を磨くことは、組織全体のパフォーマンス向上に大きく貢献します。この能力を高めることは、人事としての専門性を深め、組織にとって不可欠な価値を提供する鍵となるでしょう。


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