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「企業の個性」を形成する:組織アイデンティティの力


「組織アイデンティティ」とは何か

 「アイデンティティ」とは、なかなか説明が難しい用語ですが、自分が自分であること、そして、そのような自分が、他者や社会から認められているという感覚を指します。「自我同一性」あるいは、「存在証明」と呼ばれたりもします。

 では、そこに「組織」を結びつけた、「組織アイデンティティ」とは何か。組織にもアイデンティティがあるのです。最も簡単にいえば、「社員が認識している、自社の個性・らしさ」といったところでしょうか。 この概念を深掘りしていくと、組織の理念・良さを社員に浸透させることができ、社員をひきつけ、さらには組織全体のパフォーマンスの向上に繋げることができるようになるわけです。

 従来から、組織アイデンティティに関する概念は存在していたと思われますが、現在ほど重視されていなかったのではないでしょうか。どちらかといえば、組織の成功は主に戦略、構造、プロセスに依存するため、アイデンティティはこれらの要素に従属すべきという方向であったと思います。組織アイデンティティを過度に強調すると、実際の業務や市場動向から目を逸らすリスクがあったともいえるでしょう。

 一方、現代の組織においては、組織アイデンティティの役割が非常に重要になっていると感じます。特に、従業員のエンゲージメントやブランド認識において、組織アイデンティティは核となる要素ともいえます。現代の市場は変化が激しく、従業員や顧客の価値観も多様化しています。その中で、組織アイデンティティを明確に持つことは、競争優位性の確立と持続的な成長への鍵ともなるでしょう。

 そして、組織アイデンティティは人事戦略においても中心的な役割を果たすようになっています。社員が組織のアイデンティに共感し、それを内面化することで、エンゲージメントやモチベーションの向上が見込めます。また、採用や研修、パフォーマンス管理など、人事の各プロセスにおいて組織アイデンティティを意識することは、組織の一体感や効率性の向上に直結するといえるでしょう。

 組織アイデンティティが明確であると、仕事に対する自己の位置づけが理解しやすく、モチベーションにも繋がると感じます。組織の目的や価値観が明確なほうが、仕事に対する意義を感じやすくもなります。一方で、アイデンティティが固定的すぎると、変化に対応しづらくなるのではないかと懸念も出ます。市場や社会の変化に柔軟に対応するためには、組織アイデンティティ自体も進化し続けなければなりません。

人事の立場から考えられること

 組織アイデンティティに関して、人事の立場からはどのような観点で考えていけば良いでしょうか。組織アイデンティティは、企業の独自性や文化、価値観、使命などを内包する概念であり、これを適切に理解し、活用することで組織の効果的な運営に寄与することができます。

組織アイデンティティの重要性

社員の帰属意識の強化
組織アイデンティティが明確であると、社員はその一員であるという自負を持ちやすくなります。これは、社員のモチベーション向上や組織への忠誠心を高める効果があります。

採用活動の効果化
採用市場での競争が激しい中、組織の個性を明確に打ち出すことは、適合する人材を惹きつける上で有効です。また、新卒採用や中途採用において、組織アイデンティティに共感する人材を選定することは、長期的な社員の定着率向上につながります。

組織文化の形成・浸透
組織アイデンティティは、組織文化の形成と浸透にも影響を与えます。社員が共通の価値観や信念を共有することで、協力しやすい環境が生まれ、組織全体の生産性向上に繋がります。

人事における組織アイデンティティの活用

人事制度の設計
人事制度を組織アイデンティティに合わせて設計することで、社員の行動や意思決定を組織の目指す方向に導くことができます。例えば、報酬制度、評価基準、キャリア開発プログラムなどを組織アイデンティティに沿って設計します。

研修・教育プログラムの展開
組織アイデンティティを反映した教育プログラムや研修を実施することで、社員の組織理解を深め、組織に対するコミットメントを強化することができます。

コミュニケーションの強化
社内コミュニケーションを通じて組織アイデンティティを頻繁に伝え、社員の意識に深く根付かせることが大切です。例えば、全社会議、社内ニュースレター、イントラネットなどを活用して、組織アイデンティティに関連するメッセージを発信します。

パフォーマンス管理
社員のパフォーマンス評価においても、組織アイデンティティを考慮した基準を設けることが重要です。これにより、社員一人一人が組織アイデンティティに基づいた行動を意識するようになります。


 組織アイデンティティの理解と活用は、人事領域における多岐にわたる業務に影響を及ぼし、組織の持続的な成長と社員の満足度向上に寄与します。人事担当者としては、この概念を組織運営の各面に積極的に取り入れ、組織と社員の双方にとって価値ある成果を生み出すための施策を考案し実施することが求められます。ここは、私自身も意識して追求していきたいところです。

組織アイデンティティの重要性と人事におけるその活用を表現しています。それぞれのセクションが組織の異なる側面を描いており、組織のアイデンティティがいかに多面的に社員や組織の活動に影響を与えるかを示しています。


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