L.E.T.に学ぶ:対決的I-メッセージとギアシフトの実践例
L.E.T.(リーダー・エフェクティブネス・トレーニング)における、対決的 I-メッセージは、相手の行動が自分のニーズを満たすことを妨げているときに、自分の気持ちを率直に伝えるメッセージです。
ところが、往々にして、部下が反論してくる場合があります。そのときは、アクティブ・リスニングを実施、下の言い分を聞きましょう。そして、ギア・シフトし、改めてI-メッセージを伝えたり、解決策を一緒に考えたりすることで、問題解決を目指します。
I-メッセージ、アクティブ・リスニング、ギア・シフトそれぞれについては、以下にて記事にしていますが、今回は、これらを一連の事例をまとめてみたいと思います。
例えば、「無駄話が多い部下」に対しては、次のような対決的 I-メッセージを送ることができます。この方法は、相手を非難せずに自分の気持ちや状況を伝えることができるため、効果的なコミュニケーション手段として広く使えるものです。
「あなたが業務中に無駄話が多いと、集中して仕事が進められないので困っています」
このI-メッセージには、以下の3つの重要な要素が含まれています。これらの要素を適切に組み合わせることで、相手に自分の思いを効果的に伝えることができます。
相手の具体的な行動:「業務中に無駄話が多い」
この部分で、問題となっている具体的な行動を明確に示します。曖昧な表現や一般化を避け、特定の行動に焦点を当てることが重要です。自分への具体的で明確な影響:「集中して仕事が進められない」
ここでは、相手の行動が自分にどのような影響を与えているかを具体的に説明します。これにより、相手は自分の行動が他者にどのような影響を及ぼしているかを理解しやすくなります。自分への影響についての率直な気持ち:「困っている」
最後に、その影響によって生じる自分の感情や状態を正直に伝えます。これにより、相手は問題の深刻さを理解し、共感する機会を得ることができます。
このI-メッセージを伝えることで、部下は自分の行動が上司にどのような影響を与えているかを具体的に理解し、行動を改善しようとするかもしれません。しかし、場合によっては反論や言い訳が返ってくる可能性もあります。そのような状況に対処するためには、アクティブ・リスニングやギアシフトといったコミュニケーション技術を活用することが効果的です。
アクティブ・リスニングとは、相手の話を積極的に聞き、理解しようとする姿勢のことです。相手の言葉を繰り返したり、言い換えたりすることで、相手の気持ちや考えを正確に把握し、共感を示すことができます。
ギアシフトは、会話の流れを変えたり、新しい視点を導入したりする技術です。対立が生じそうな状況で、話題を少しずらしたり、共通点を見出したりすることで、建設的な対話を継続することができます。
以下は、これらの技術を取り入れた会話例です。この例では、上司が部下の反論に対してアクティブ・リスニングとギアシフトを用いながら、問題解決に向けて対話を進めていく様子が示されています。
【会話例】
上司:「あなたが業務中に無駄話が多いと、集中して仕事が進められないので困っています。」
部下:「でも、チームのコミュニケーションも大事じゃないですか?それに、雑談から新しいアイデアが生まれることもありますし...」
上司:「チームのコミュニケーションは大事だし、雑談からアイデアが生まれることもあると思っているんですね。」
部下:「はい。それに、最近新しいメンバーも入ったばかりなので、コミュニケーションをとることで、チームに馴染んでもらおうと思って...」
上司:「新しいメンバーに早くチームに馴染んでもらいたいと思っているんですね。でも、無駄話が多いと、他のメンバーの集中を妨げてしまうこともあるんじゃないかな。」
部下:「確かにそうですね。でも、雑談も全くダメということでしょうか?」
上司:「雑談を全否定しているわけではありません。業務時間外や休憩時間など、適切な時間にとる分には問題ありません。ただ、業務時間中にあまりにも無駄話が多いと、他のメンバーの集中を妨げ、私の仕事も進まないので困るんです。」
部下:「なるほど、他のメンバーの集中を妨げているかもしれないんですね。それは申し訳ないです。でも、雑談にもメリットがあると思っています。例えば、雑談を通してメンバー同士の仲が深まったり、仕事の悩みを相談し合ったりすることもありますし...」
上司:「雑談がメンバー間の関係性を良くしたり、悩みを相談する場になったりすることもあると、君は考えているんだね。それは理解できるよ。でも、雑談に夢中になって、業務に支障が出てしまうと、チーム全体の生産性が低下してしまう可能性もあるんじゃないかな。」
部下:「確かにそうですね。チーム全体の生産性を下げてしまうのは良くないですね。これからは、業務時間中は雑談を控えめにして、業務に集中できるよう心がけます。雑談は休憩時間など、業務に支障がない時間帯にとるようにします。」
上司:「そうしてくれると助かります。ありがとう。チームのコミュニケーションは大切なので、雑談自体を禁止するつもりはありません。ただ、業務時間中は、メリハリをつけて仕事に取り組んでほしいと思っています。何か困ったことがあれば、いつでも相談してください。」
如何でしょうか。この会話例では、上司が部下の意見を尊重しながらも、業務への影響について懸念を表明しています。部下も上司の立場を理解し、最終的に両者が納得できる解決策に至っています。このような建設的な対話を通じて、チーム内の問題を効果的に解決し、より良い職場環境を作り出すことができるでしょう。
効果的なコミュニケーションは、相手の立場を理解し、互いの意見を尊重しながら、共通の目標に向かって協力することから生まれます。I-メッセージ、アクティブ・リスニング、ギアシフトなどの技術を適切に活用することで、職場での対立を減らし、生産的な関係を築くことができるわけです。
上司と部下がオフィスで対話している場面が描かれています。上司はデスクに座り、体を前かがみにして手を開きながら共感を示すボディランゲージを見せています。立っている部下はリラックスした表情で、話を聞いてもらっていることが伝わります。オフィスの背景にはデスクやコンピュータ、オフィスプラントがあり、他の従業員たちが働いたり軽い会話を交わしたりしています。これにより、理解と建設的なコミュニケーションの瞬間が捉えられ、協力的でプロフェッショナルな雰囲気が伝わります。
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