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【書籍】人事として学ぶ安井義博氏の教訓ーブラザー工業における持続可能な成長戦略

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp110「3月21日:仕事は自らつくり出していくもの(安井義博、ブラザー工業会長)」を取り上げたいと思います。

 安井義博氏は、ブラザー工業の現在について、自らの経験と価値観を基に形作ったとしています。40年前、日本の高度成長期には、生産技術部は存在していたものの、ブラザー工業には研究開発部や技術部がなく、開発管理が不十分でした。安井氏は「いちゃもん会」というグループを通じて、会社の問題点や改善点を提言する立場にありました。特に、アメリカでの体験から学んだことを基に、開発の標準化や米国流の販売システムの導入を提案しました。

 安井氏は、仕事は与えられるものではなく、自分で作り出すものという考えを持っており、与えられた仕事は決められた時間の80%で終わらせるよう努め、効率性を重視していました。例えば、設計作業で頻繁に使う計算を表にまとめることで、設計者が手計算で時間を費やすことなく、本来の仕事に集中できるようにしたのです。これは彼にとって直接的な職務ではなかったものの、会社全体の効率化に寄与するものでした。

 また、安井氏は、父親から時間管理の重要性を厳しく教えられたと述べています。食事時間に遅れると厳しく叱られた経験から、「約束は守るべきであり、時間は皆に平等に与えられているが、一度遅れるとその借りは決して返せない」という教えを受け継いでいます。これらの経験と価値観が、安井氏がブラザー工業を現在の成功に導く基礎となっています。

時間管理という面でも父親は大変厳しい人でしたね。例えば、食事の時間に遅れようものならこっぴどく叱られました。こっちにも仕事があるわけですが、言い訳は通じない。「駄目だ。約束した以上は守れ。人間であれば、二十四時間は誰もが皆平等に与えられている。時間は遅れたら借りができる。しかも、その借りは絶対に返すことができない」。そう教えられました。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)p110


人事の立場から考えられることは何か

 安井氏のブラザー工業における経験とその価値観は、人事の観点から見ても、非常に示唆に富むものです。安井氏の経験は、人事の専門家としての私の視点から評価すると、以下のような重要な教訓を提供しています。

イニシアチブと自発性
 安井氏が「いちゃもん会」を通じて会社の問題点や改善点を提案した姿勢は、人事が推進すべき自発的な職場文化の典型例です。従業員が自ら課題を見つけ、解決策を提案する環境は、組織の革新と成長に不可欠です。

効率性の追求
 安井氏が設計作業の効率化に貢献した方法は、人事が目指すべき生産性の向上と密接に関連しています。こうした取り組みは、業務プロセスの改善だけでなく、従業員の仕事の満足度やモチベーションの向上にも寄与します。

時間管理の厳格さ
 安井氏が父親から学んだ時間管理の重要性は、プロジェクト管理や日々の業務遂行においても非常に重要です。人事部門は、時間管理のスキルを従業員に教育し、時間を効率的に使う文化を育む責任があります。

 安井氏のこれらの価値観や行動は、組織の成長と効率性の向上に大きく寄与するものであり、人事部門が取り入れ、推進すべき要素です。具体的には、以下のような取り組みが考えられるでしょう。

イノベーションと自主性の奨励
 従業員が自らのアイデアを自由に提案できるプラットフォームや制度を設け、イノベーションを促進します。例えば、定期的なアイデアピッチ会や、改善提案制度の導入が考えられます。

効率化への取り組み
 業務プロセスの見直しや、新しい技術の導入を通じて、仕事の効率化を図ります。具体的には、定型業務の自動化や、業務フローの最適化が挙げられます。

時間管理の教育と文化の醸成
 効果的な時間管理のトレーニングを提供し、時間を尊重する企業文化の構築に努めます。具体的には、タイムマネジメントのワークショップの開催や、業務時間内の集中力を高めるための方策の導入などが考えられます。

 安井氏の経験から学ぶべきは、個々の従業員の自発性と創造性を尊重し、それを組織全体の成長に結びつけることの重要性です。人事部門は、これらの価値観を組織内に浸透させ、継続的な改善と発展を促進する役割を果たすべきでしょう。

安井義博氏がブラザー工業における重要な変革と貢献を表しています。古風な日本のオフィス環境を背景に、過去に専門の研究開発部門が不在であったことを示唆する要素が含まれています。画面には、社内の問題点や改善点を議論し提案する「いちゃもん会」を象徴するような、活発な会議に参加している従業員のグループが描かれています。効率性への重点は、設計作業の時間を節約するための計算表など、革新的なアプローチを象徴する要素を通じて微妙に示されています。また、厳格な時間管理の要素も、風景に組み込まれ、規律正しい労働文化を促進したことをほのめかしています。このアートワークは、ブラザー工業の変革の時代における、伝統的要素と進歩的要素の混在を捉えています。



1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。





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