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少女漂泊~Monologue by HARUKA  θ

仏教のお坊さんと言えば・・・

昔、ママが、書き留めていたノートを見つけたとき
、あの中に「漢字がぎっしりの紙」と、
その注釈みたいなものが張ってあったんだけれど、
このお坊さんに何の意味か聞いてみようかな。

たしか、「写メ」取っておいたと思う。
そう思った。それで、訊いた。

「お坊様、お伺いしたいことがあります。」
「ほう、なんや・・・。」

あたしは、ママのメモの写メを見せた。

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「これって、ママのメモ帳なんですが、
お経だと思うんです。どんな意味なのかな。」
「・・・ほう・・・これを、あんたのおかんが?・・。」

すると、お坊さんは、あたしの顔をじっと見て、
また、写メに見入って、またあたしの顔を見て、

そして、中空を仰ぎながら、女将さんに語りかけた。

「なぁ、綾さん、この嬢ちゃん、
そうや、咲ちゃんに似とらんか?」

すると女将さんは、ぽんっと手を叩いて
「せや!思い出したわ、うん、ほうか~・・。
つっかえてたのがとれた・・。」

・・・え・・なんでこの人たち、
ママの名前を知ってるんだろ・・。

逆に不思議に思ったというか、怖くなった・・・。
この人たち一体何?

「お嬢ちゃん・・。あんたのおかんは、
咲さん、いわはんか?」
「・・・図星ですけど、どうして???。
うっちーセンパイから訊いたんですか?

うっちーセンパイはあたしの顔を見て
「ちゃうちゃう!」
と大きく否定した・・。

ま、ウソついたりごまかせるような
器用なキャラじゃないから、とりあえずは信じる。

だったらなお不思議、もしかしたらこのお坊さん、
ものすごい人なのかも知れない。
なんとか上人みたいな・・。
超能力でもあるようなオーラがあるし・・。

「お嬢ちゃん、これな、わしが書いたもんやが、
この意味を知りたいちゅうことか?
それとも、いきさつを知りたいちゅうことか?
どっちや?。」

「・・・え・・?」

っていうか、なんともいえない気持ちになった。
びっくりとか、なんだかだとか、
とにかくなんだかわかんない気持ちに支配された。

「・・・意味を知りたいです!」

あたしはきっぱりと言った。
するとお坊さんは、さっきにも勝る満面の笑みを浮かべた。
そして、こう言った。

「では、わしが、なんで、これを、
あんたのおかんに書き付けた理由は、訊かんでもいいのか?」
「それも訊きたいです。」
「どっちを優先するか?」

「意味です!」

お坊さんは、般若湯を口にしながら、ぽつんと言った。

「・・ほうか、ほなら、この経文の意味は、
今は教えられへんなぁ・・・。
もう少し、ぐるっと回ってから、もう一回お聞き。
まぁ、こうやって無下にするのもなんやから、
この経の名前だけは教えたるわ。」
「お願いします。」
「これは、般若理趣経の「十七清浄句」のくだりや。

初めて聞いた・・・。

「これは、理解するもんやなく、観じるもんや。
字面だけで考えたら間違った意識を持つしろもんや。
いずれ機がきたらそれを気づかせたる。
まぁ、それまでわしが生きておれば。の話やがな・・
かかかか。まぁ精進せいや。」

う~~~ん。丸め込まれたっていうか、
軽くかわされたっていうか・・。

ただもんじゃないなぁ・・。

だけど、うっちーセンパイって、
こういうとき全然頼りにならないって、
あらためて気づいたよ。

TO BE CONTINUE

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