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成人玩具009~こけしマンの憂鬱 #2


 俺はため息を一つ吐き警察署の外に出た。黄色い太陽が目に染みる。
 俺はデリヘルドライバーのジロー。またの名を電動こけしマン。
 昨日は職質振り切ろうとした結果逮捕され、一晩警察に厄介になっちまったぜ。
 ポケットから財布を取り出し中身を確認すると、一万円札が数枚入っていた。そのまま通りでタクシーを止めて滑り込み、デリヘルの詰所まで向かう。
 詰所に着くと、社長が出迎えてくれた。
「おう、ジロー。こないだは大変だったな」
「ありがとうございます。ご迷惑おかけしました。あ、あいつらどうなりました?」
「あ~ハゲの田中か。さくらから聞いたぜ。あいつは今頃山奥で小動物のえさになってるかもな」
 ぐ、相変わらずえげつない。
「そ、そうだったんですね。ありがとうございます」
「早速で悪いんだが、これから一件行ってもらえるか? 初めての客で駅前のホテルの306号室に美佐子指名だ」
「わかりました。すぐ支度します」
 ロッカールームで着替えると、駐車場から車を出し後部座席に美佐子を乗せて走り出した。
 ホテルの正面で美佐子を降ろし、再び車を走らせた。
 事務所に戻るかどっかで時間潰そうか逡巡していると、ケータイが鳴った。美佐子からだった。
「どうした?」
「ジローさん助けてください! このお客さん、変なんです!」
「わかった、今すぐ行く!」
 俺はサイドブレーキを引いて車をUターンさせ、さっきのホテルまで戻った。
 エレベーターに飛び乗り3階で降りると、まっすぐ306号室のドアの前までやってきた。
 ドアを開けようとノブを回しても、鍵がかかっていて当然開かない。俺は義手になった左手の人差し指をそっと鍵穴にあてると、がちゃ、と鍵の開く音がした。
 そう俺の左手の人差し指は、触れるだけでどんな鍵も開けられるシステムが装着されているのだ。
 ドアを開け中に踏み込むと、両手を縛られ仰向けに寝かされた美佐子に馬乗りになったデブが、美佐子の顔面を何度も殴っていた。殴られた美佐子の顔面は紫色に腫れあがっていた。
「こら、おっさん! やめろ! その拳に愛はあるのか!?」
「はあ? 何言ってんだお前、愛なんかある訳ないだろ」

「そっか、愛の無いやつは死ね」
 
 俺は左手の義手を外すと、こけしの先をデブに向け、キンタマスイッチを押した。
「こけしシャワー!」
 そう言うと同時に、白濁した液がデブの身体に降りかかる。
 すると、デブはみるみる小さくなり、最後には4センチくらいの大きさになった。その状態になっても甲高い声でわめいていた。
「うるせーなお前」
 俺はそいつをつまみ上げると、便座の蓋を開けトイレに流した。

 愛の無いやつは皆殺し。

 そう、俺は電動こけしマン。

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