武蔵小杉タワーマンション

タワーマンションのSPOF

 台風19号の豪雨により、武蔵小杉のタワーマンションでは地下の配電盤が水没したことでタワーマンションに居住する数百戸が停電した。
通信システムなどの高可用性システムでは、この場合の配電盤にみられるように、システム内でその個所に障害が発生すると、システム全体が使用不可になるか、または信頼できなくなってしまう可能性を有するポイントを
SPOF(Single Point Of Failure:単一障害点)と呼ぶ。

 「この仕組みのSPOFはどこか?」という観点は通信システムだけでなく、世の中の信頼性を求められる構築物すべてにおいて重要な観点である。タワーマンションの配電盤は、マンションを「多数の住居が集合した居住システム」と捉えた場合にはまさしくSPOFそのものであると言える。

 法規制の観点では、現在の建築基準法にはSPOFという概念も、その信頼性を確保すべきという考え方も 備わっていないらしい。電気、上水道、下水道などのネットワークが各戸に張り巡らされているタワーマンションは立派なネットワークシステムである。このようなネットワークシステムにおいてSPOFに障害が発生した場合には、その影響は当然全戸に及ぶ。配電盤の個別部品としての信頼性だけでなく、災害時の高可用性の確保も視野に入れた、法律的な施策が必要ではないだろうか。

 一方、タワーマンションを維持が必要な資産としてみると、今回の災害がマンションの利用価値や資産価値を回復するための費用はかなりの額にのぼるとの指摘がある。資産価値を維持するためにも、マンションの購入時にはSPOFがどこにあるかの見極めと、それが資産価値に与える影響のリスク・アセスメントが重要になるだろう。

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