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エネルギーでは『貯蔵』がキーワード

 気候変動の防止策として、世界中で二酸化炭素の削減が叫ばれています。そのやり玉に挙がっているのが、いじめられっ子の石炭です。では、どうして石炭が、エネルギー源としていまだに日本を含め世界中で使われているのでしょうか。

 石炭は露天掘りや坑内採掘で大量安価に採掘できることが、利用される一つの理由です。しかし、多くの人が見落としているもう一つの理由があります。それは、貯蔵の容易さです。石炭は固体であるため、使う(燃やす)時には工夫が必要ですが、貯蔵するためのコストは余りかかりません。極端な話、土地さえあれば野ざらしでも大丈夫です。そこら辺に転がしていても、全く安全です。もちろん、自然発火などの対策は必要ですが・・・。

 液体の石油の場合は、そうは行きません。石油には揮発成分が含まれているので、そのまま放置していたら空気中に拡散してしまいます。石油を貯蔵するためには、きちんとした貯蔵用の設備が必要なのです。また、気体の水素を使った燃料電池が開発されましたが、なかなか普及しません。これは、爆発的に化学反応する水素を安全に、大量に貯蔵することが難しいためです。

 最近、燃やしても二酸化炭素を出さないアンモニアを燃焼させる発電方式が注目されていますが、反応性の高いアンモニアを安全に貯蔵するためには、やはり高コストな貯蔵施設が不可欠です。安定したエネルギー源を考える場合は、そのエネルギー源にかかるトータルコストを考慮する必要があります。

 地熱エネルギーは、純国産の再生可能エネルギーです。地下から生産される蒸気や熱水は、エネルギーを取り出した後には、貯めることなく再び地下へと戻されます。地熱発電は、発電サイクルが閉じているため、安全性も極めて高いのが特徴です。そんな良いとこだらけの地熱発電にも欠点があります。それは、地熱発電の有望箇所を見つけて発電するまでに、長い時間がかかることです。太陽光発電は、太陽電池パネルを設置すればすぐに発電できますが、地熱発電を実施するには10年程度が必要です。

 我々の研究室では、地熱の有望地点を効率よく探すための、探査手法の研究プロジェクトを実施しています。このプロジェクトで小型の探査装置が完成すれば、地熱発電までにかかる長い期間を縮めることが期待できます。

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