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『物理探査学入門』のあとがき

 インターネットで”物理探査”を検索すれば,多くの情報が簡単に手に入ります.ただし,インターネットの情報は,わかりやすさに主眼が置かれているので,理論が曖昧であったり,時には間違っているものも少なからずあります.物理探査を正しく知る手段の一つに,教科書や専門書などの出版物があります.しかし,物理探査の良い教科書のほとんどは英語で書かれていますし,その内容も難しいものが多く,入門に手頃な日本語で書かれた本は中々見つかりません.

 無いなら,自分で書こう.浅学非才を顧みず,物理探査学の教科書を書こうと思い立ってから,すでに三年以上が過ぎました.最初の一年は,どこから手を付けて良いかわからず,何も出来ないままに無駄な時間を過ごしました.次の一年は,資料集めが肝心と,物理探査に関する文献や教科書を集めたりしましたが,怠け癖や筆無精のせいで,事態は一向に進展しませんでした.これでは埒があかない,とにかく何でも良いから書くしかないと,書き始めたのが約一年前です.

 偶々,そのときに某出版社からお声がかかり,ひょっとしたら出版できるかも,と淡い期待を寄せましたが,その計画は途中で頓挫してしまいました.気を取り直して,九州大学出版会に問い合わせたところ,出版できる可能性有りとの,有り難いお言葉を頂きました.それからは,一心不乱に教科書作成に没頭したのですが,今度は書きたい内容が膨れあがってしまい,収拾が付かなくなりました.内容を削ったり,また増やしたりしながら,何とか形が見えてきたのが2018年の5月です.この本の冒頭にも書きましたが,物理探査学は総合的な学問で,いろいろな分野の知識を幅広く学ぶ必要があります.これから物理探査学を学ぼうとする人や,仕事として物理探査を使ってはいるが理論的なことを少し詳しく知りたい人,の役に立てれば望外の幸せです.

 このあとがきの最初に,インターネットの批判めいたことを書きましたが,そのような意図は全くありません.実はこの本は,インターネットの情報に大きく依存しています.実際の引用箇所は,引用文献に記していますが,人物や写真の画像の多くはネット上で公開されているものを利用しています.また,自作した図面についても,ネット上で公開された図をアレンジして作成したものが数多くあります.さらに,学術論文の検索や専門用語の英訳などにも,インターネットを活用しています.ここで改めて,智の宝庫であるインターネットの情報に感謝したいと思います.

 最後に,時々挫けそうになる教科書の執筆活動を励まし,温かく見守ってくれた妻に,心からの感謝を捧げます.

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