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地震対策には順法意識も必要です。

トルコ南部のシリア国境近くで2023年2月6日発生した大地震では、これまでに4万3000人以上の死亡が確認されています。最新の統計ではさらに死者数が増えているかもしれません。ニュース映像で見る建物被害は甚大です。多くのビルがペシャンコになり、粉々に砕けて瓦礫の山と化しています。

このような、建物の各階層が重なるように崩壊する現象を『パンケーキクラッシュ』というそうです。この崩壊によって、多数の人が逃げる間もなく崩壊に巻き込まれたと考えられています。同じような現象は、過去に日本でも起きているとのことですが、そのリスク情報が様々な国で共有されているとは言い難い状況のようです。

トルコは地震の多い国なので、耐震基準はある程度厳しいと思います。しかし実際には、手抜き工事や、完成後の”柱の撤去”などが黙認されていて、被害を拡大させたという話をラジオで聞きました。もちろん想定外の大きな地震が起きれば、必ずしも安全とはいえなくても、定められた建築基準を守らないのでは意味がありません。

現在の科学技術では”短期的な地震予知”は出来ません。我々にできることは、来るべき地震に備えて準備することしかできないのです。今住んでいるマンションは海岸近くの埋め立て地に立っています。私も一応、地球科学の研究者の端くれですから、埋立地が地震に弱いことは重々承知していました。若干の不安はありましたが、モデルハウスを見学した時に、マンションの基礎がを硬い岩盤まで届いているという説明を信じて、購入を決めました。

購入した時はまだ、「福岡市は地震が少なくて良いよね」と楽観的な雰囲気が蔓延していました。しかし9年後、最大震度6弱の福岡県西方沖地震が起きました。地震発生時はリビングにいましたが、大きな揺れと長い継続時間に驚きました。幸い、”硬い岩盤まで達した基礎”のお陰で、マンションの建物には大きな被害はありませんでした。

海岸付近や埋立地などの被害で、よくあるのが液状化です。液状化現象は、地震の際に、地下水位の高い砂地盤が振動により液体状になる現象です。液状化が起きると、液状化した土壌より比重の大きい構造物が埋もれたり倒れたりし、下水道管等の比重の小さい構造物は浮き上がったりします。たしか、東日本大震災の時には千葉県の埋めて地にある住宅に大きな被害が出たと記憶しています。タイトル画は、1964年の新潟地震(震度5)のときの液状化による被害例です。

トルコ・シリア地震は内陸部での地震だったので、液状化の話は出ていませんでした。いずれにしても、大きな構造物を建築する場合は、安定した地盤の上に、しっかりした建物を建てることが重要です。当たり前のことなのですが、守られない場合があります。日本では、耐震強度の偽装や、地盤改良工事の手抜きなどが過去にはありました。

せっかくルールがあっても、守らないと意味がありません。法律やルールを守ることが、地震被害を最小限に抑える近道なのかもしれません。

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