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『公聴会』というもの。

博士号を取得するためには、多くのハードルを乗り越えなければなりません。学位論文(博士論文)は、査読付きのジャーナルに投稿した論文に基づいて作成されます。そのため、最初の難関は論文の投稿&掲載です。研究をまとめて投稿するまでは大変ですが、査読という他の研究者の論文審査をパスして掲載されるのはもっと大変です。投稿された論文は必ず採択されるわけではありません。有名なNatureやScienceなどになると、その採択率は1/10程度と言われています。つまり10篇の論文のうち9編はリジェクト(拒絶)されます。

数編の掲載論文をもとに作成された学位論文は、3人の審査員によって厳しく審査されます。通常は指導教員が主査と呼ばれる審査員を務めます。その他にも、研究分野と関連がある教員2名が副査と呼ばれる審査員となります。この3人の審査員候補(この段階では正式な審査員ではありません)が、その時点での学位論文と本人の説明を受けて、予備調査会に進んで良いかどうかを判断します。

予備調査会は、その専攻の教授・准教授が構成メンバーとなる会議です。ここで、主査が論文提出者の経歴・論文目録・論文要旨を説明して、学位論文を提出してよいかどうかの判断をします。この予備調査会をパスして初めて、正式に学位論文を大学に提出することができます。学位論文が正式に受理された後、学位論文審査願を提出して認められると、大学から学位論文審査の正式な命令が届きます。

次の関門は、『公聴会』です。正式には、学位論文公聴会ですが、一般的にはシンプルに公聴会と呼ばれています。公聴会は、学位論文の公開審査の役割を持っています。そのため、公聴会開催に当たっては、開催を広く告知して、出席者の確保を含め活発な会となるように努める必要があります。公聴会では、論文提出者による40分程度の発表と、主査の司会のもとで20分程度の質疑応答の時間を設けます。

今週の水曜日と金曜日に、あわせて3件の公聴会を開催しました。私が担当した公聴会では、60分の発表と30分の質疑応答の時間を設けました。コ〇ナ感染の拡大もあり、3件ともリモートによる公聴会の開催となりました。リモート公聴会では、論文提出者の生の発表態度はよくわかりませんが、遠方からでも参加しやすいというメリットもあります。今回の公聴会では、遠方から参加した研究者から、研究の本質を突いた質問や有益なコメントを頂くことができました。

再来週には『論文審査会』という最終ハードルが待ち受けていますが、ここまでくれば全体の80-90%が終了した感覚になります。ただし、論文審査会での最終判断が博士号の合否を決めるので、まだまだ油断はできません。もうひと踏ん張りです。

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