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人工石油の話 (追加情報アリ)

ネット界隈では、”人工石油”の話題で盛り上がっているようです。この話が本当なら、大部分のエネルギー源を海外からの輸入に頼っている日本にとっては、願ってもない話です。再生可能エネルギーである地熱資源の開発に多少かかわっている私にとっては、学術的な興味はもちろんありますが、個人的にも興味があります。

これまでも、ミドリムシのような微生物を使って、人工の石油を生産する試みはありました。そのなかでも、(株)ユーグレナは先頭を走っていて、バイオジェット燃料を使って飛行機を飛ばしています。またバイオディーゼル燃料も手掛けていますが、コスト的な問題(1リットルで1万円?)があるようです。(追記:この記事を書いた数日後に、ユーグレナが国産のバイオディーゼル燃料事業から撤退するとの発表がありました。)

最近噂を聞きませんが、藻類から人工石油をつくる研究があったように記憶しています。気になったので調べてみたら、この研究は続いていて、細胞内油脂生産藻類という藻類を使って、燃料物質である遊離脂肪酸(FFA)を生成、分離することに成功したようです。ただし、まだまだ実験段階なので、大量に消費する日本の石油を賄うまでの量は難しそうです。

話を戻しますが、最近話題になっている”人工石油”は、特殊なラジカル水と空中の二酸化炭素、それと種油たねあぶらさえあれば低コストで人工石油(合成燃料)ができるという新技術です。特許の関係もあるのか、残念ながら核となる技術は公開されていないようです。この辺りが、”人工石油”の真偽に疑問が持たれている理由のようです。大阪市は、一度はこの技術を支援していましたが、現在は無関係であることを表明しています。

科学技術には再現性が必要です。特定の人達だけしか再現できない技術には、信憑性がありません。最近の例で言えば、『常温核融合』や『STAP細胞』が巻き起こした一連の騒動です。ただし、将来的にこのような革新的な技術が再発見される可能性は無いわけではありませんが・・・。

このような話が出るたびに、昔聞いた大学教授(化学が専門)の話が頭に浮かびます。正確な時代は覚えていませんが、明治や大正の頃の話だったと思います。その先生は”金の人工合成”に取りつかれていて、来る日も来る日も研究に明け暮れていました。ある時、遂に試験管の中で金が合成できたと発表しました。しかし、これはインチキだったのです。その先生は関与していませんが、技術職員がこっそり試験管に金を入れたことを白状したのでした。技術職員の供述では「あまりにも先生が熱心なので、つい可哀そうになってしまって」とその動機を語りました。

この人工石油が”インチキな錬金術”にならないことを願っていますが、詳細な原理や理論がわからない今の状況では正しい評価が出来ません。まずは、特許を取得するなり、学術誌に論文投稿するなり、技術の基礎固めをすることをお勧めします。そんなことは私に言われなくてもわかっていると思いますが・・・。

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