見出し画像

新しい組み合わせ AとBのマリアージュ

食品には、一見合いそうもない2つを組み合わせたものが結構あります。あんパンは、それが異種の組み合わせであることを忘れるくらい、一体化した食べ物になっています。またイチゴ大福は、発表当初こそゲテモノ扱いでしたが、今や和菓子の定番になっています。甘いアンコとイチゴのほのかな酸味が絶妙なバランスをとっています。

スイーツではありませんが、カツカレーやカツサンドなども、カツとカレーライス、カツと食パンを組み合わせた食べ物です。フランス料理では、ワインと料理の相性が合うことをマリアージュ(結婚)と言います。 

科学分野でも、2つ以上のものを組み合わせて発明/実用化した例があります。最も有名なのは、イタリアのマルコーニが実用化した無線通信装置です。20才のマルコーニは、別荘で退屈しのぎで読んだ科学雑誌で、稲妻のような衝撃を受けました。それは、ヘルツの実験に関する記事でした。このときマルコーニは、「ヘルツの電波を利用したら、無線通信が可能なのではないだろうか?」という着想が浮かびました。

裕福な家庭で育ったマルコーニは、自宅で、電波を送信する『誘導コイル』と電波を受信する『コヒーラ』の研究を始めます。誘導コイルもコヒーラも、既にあった技術なので、マルコーには何ら新しい発明はしていません。しかし、既存技術の組み合わせとその改良で、それまで誰もなし得なかった無線通信を実用化しました。下の図は、火花放電を用いた初期の無線通信装置の電気回路です。

マルコーニが最も苦労したのは受信側のコヒーラでした。コヒーラは、金属粉の電気抵抗が、高周波の電波によって変化することを利用した検波装置です。しかし、当時はまだコヒーラの原理がよくわかっていなかったので、試行錯誤を重ねて何とか実用化に辿り着きました。

新しいものは何一つ発明していないマルコーニですが、無線通信の実用化が認められて、ノーベル物理学賞を受賞しています。マルコーニの誘導コイルとコヒーラの組み合わせは、見事なマリアージュでした。

マルコーニが開発した初期の無線通信装置の電気回路

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?