日本語で学べる有難さ
日本では大学の授業が日本語で行われています。これは当り前のようですが、母国語で高等教育が受けられるのは当り前ではないのです。母国語で学べることは、大変有難いことなのです。”有難い”とは”有るのが難しい”という意味です。つまり、元々は滅多にないことを意味しています。
日本は本の種類が豊富で、学術書、実用書、雑誌、コミック、文庫、新書、単行本など、大型書店に行けば様々なジャンルの本を探すことができます。今なら、アマゾンでポチれば本屋に行くことさえ必要ありません。私は電子書籍はあまり好きではないのですが、今時の人なら電子書籍も当たり前の時代です。
娯楽から学術まで、幅広い分野の本が日本語で読めます。これは、日本だから当たり前ですが、そうではない国が少なくありません。ある国の大学教育が英語で行われていると聞くと、「やっぱり大学は凄いんだ!」と思われるかもしれませんが、”英語で教えたい”のではなく”英語でしか教えられない”のです。例えば、専門用語一つとってみても、その国の母国語で同じ意味の用語が無ければ、難しい概念を母国語で教えることはできません。また、大学の授業には教科書(学術書)が必要ですが、母国語で書かれた専門書が無ければ、英語で書かれたものを使うしかないのです。
日本も昔は同じ環境でした。江戸時代から明治時代に変わった頃、日本政府は殖産興業や富国強兵を国を挙げてのスローガンにしましたが、これらのための専門知識を教えてくれる人がいません。そこで、登場したのが御雇外国人です。御雇外国人は、幕末から明治にかけて、欧米の技術・学問・制度を導入するために国や県によって雇用された外国人たちの総称です。その多くは、イギリス人やアメリカ人などの欧米人でした。
江戸時代の日本に来ていた医師のフィリップ・フォン・シーボルトは有名ですが、その子供たちが御雇外国人として日本に来ていたことを知りました。長男のアレクサンダー・フォン・シーボルトは、外交関係の専門職で、 外務大臣を務めた井上馨の秘書などをしていました。また次男のハインリヒ・フォン・シーボルトは、考古学の研究者で、大森貝塚の研究などをしていました。
その他にも、 札幌農学校(現・北海道大学)初代教頭であるウイリアム・スミス・クラークや、小泉八雲の日本名を持つラフカディオ・ハーンなども有名な御雇外国人です。理系の私としては、ハインリッヒ・エドムント・ナウマンは外せません。ナウマンは、その名前からもわかるようにナウマンゾウの発見者です。また、フォッサ・マグナの発見でも知られています。
フォッサマグナ(Fossa magna:大きな溝)というのは、日本の主要な地溝帯の一つで、地質学においては東北日本と西南日本の境目となる地帯です。中央地溝帯や大地溝帯とも呼ばれています。要するに、古い地層でできた本州の中央をU字型の溝が南北に走り、その溝に新しい地層が溜まっている地域のことです。フォッサマグナは、本州中央部の中部地方から関東地方にかけての地域です。西縁は糸魚川静岡構造線(通称・糸静線)、東縁は新発田小出構造線及び柏崎千葉構造線となりますが、東縁には異説もあるようです。何故か、東端より西端の方が有名です。
明治の初めには、英語、フランス語、ドイツ語などから専門知識を学んでいました。母国語(日本語)で、専門知識を学べることは本当に貴重なのです。
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