見出し画像

ぶったん四方山話#1 熊本県・旧久木野村の幻の露天風呂

 シリーズ化するかは決めていませんが、色々な場所で物理探査を実施した時のエピソードを紹介します。面白いかどうかは、あなた次第です!!。

 現在は平成の大合併で南阿蘇村になっていますが、かつて久木野(くぎの)村というのがありました。久木野村には、久木野温泉センター・木の香湯という温泉施設がありました。大きな露天風呂があることや、村営(第三セクター)で入浴料も安価なことなどから、結構人気がありました。残念ながら、2016年4月の熊本地震で被災(建物は全壊)して、現在は休業しています。

 木の香湯は1990年、旧久木野村が総工費約6億円をかけて完成した温泉です。それまでは、久木野村には温泉がありませんでしたが、九大の物理探査学研究室が電気探査による温泉調査を実施して、温泉の掘削に成功しました。久木野村では、大学の夏休み期間中を利用して、何度か温泉探査を実施しました。詳しい経緯は知りませんが、「久木野村には温泉は出ない」という謎の学説(?)があって、それを覆して温泉が出てきたのですから、当時の村長さんは大喜びでした。

 この場所での温泉掘削が成功した時に、現場を見学に行きましたが、既に即席の立派な岩風呂が出来ていました。ただし、周りの囲みも全くないので、剥き出し状態の露天風呂でした。村長さんに勧められて、一緒に行ったU教授や学生さんたちと一緒に入りました。タイトル図は、営業当時の木の香湯の露天風呂ですが、これよりもっと大きな築山(岩山)が作られていました。その時は、「やっぱり露天風呂は気持ちいいよね」で終わりましたが、後日談がありました。

 温泉法では、温泉が出てきても保健所による水質検査が済むまでは、温泉を使うことが出来ません。実は私たちが入った温泉は、まだ検査前だったのです。これは、温泉掘削成功に喜び過ぎた村長さんのフライングでした。その後、保健所の指導もあり、その露天風呂は取り壊されることになりました。この幻の露天風呂に入ったのは、たぶん10名もいないでしょう。

 きちんと温泉の成分検査を済ませた後にオープンした温泉は、この地域に温泉が少なかったこともあり、当初は年間40万人を集客しましたが、90年代に入ると自治体による温泉開発が南阿蘇地域で相次ぎ、利用者は減少していきました。2008年頃まで年間9万人前後で推移しましたが、観光客の増加などから利用者数が上向きになり始めた頃、熊本地震が起きました。建物は全壊したものの、幸い源泉部分は壊れませんでした。現在、再建を目指しているそうです。早期の再建を願うばかりです。

 木の香湯、頑張れ!!。応援しています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?