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実録・コミュ力おばけ

コミュニケーション能力は、仕事だけでなく普段の生活にも欠かせません。コミュニケーション能力はコミュりょくと略されたりしますが、特にコミュ力が高い人は”コミュ力おばけ”と呼ばれたりします。私の研究室にもコミュ力の高い卒業生がたくさんいますが、その中でも特にコミュ力が高かった人がいました。その卒業生を、ここでは仮にN君としましょう。

コミュ力おばけの人の特徴には、「とにかく明るい」や「すぐに打ち解けられる」などがあります。N君も明るい性格でしたが、飛び抜けて明るい方ではありませんでした。性格が明るいだけなら、他にもたくさんいたでしょう。N君が凄いのは、”人見知りせずに、誰とでもすぐに打ち解けられるところ”でした。また、とにかく面倒見が良いのも特徴でした。

そのコミュ力の高さは、日本人の枠に留まりませんでした。私が所属している部門は工学部の中でも特別に留学生が多いところで、私の研究室にも当時5-6人の留学生が在籍していました。N君は最初こそ英語が得意ではありませんでしたが、留学生と仲良くなってからは急速に英語力を高めていきました。さらには、研究室の枠を超えて、多くの留学生から頼られていました。

留学生の間でもN君の面倒見の良さは知れ渡っていて、「買い物に行きたい」と言ってはN君にリクエストが来ますし、「引越したいので手伝って欲しい」などともよく言われたようです。こんなのは序の口で、ある時には「妻が産気づいたんだけど、どうしようか?」などと連絡が来たりしたそうです。さすがにその時はどうしようもないため、「いますぐ救急車を呼べ」と応えたそうです。

N君は大学院の修士課程を卒業する間際に、学生結婚をしました。結婚式と披露宴は、今話題の老舗旅館『大丸別荘』で行われました。コミュ力おばけのN君には友人も多く、高校・大学・大学院のそれぞれの時代の友人がたくさん招待されていました。正確な数は覚えていませんが、200人規模の披露宴でした。

私の研究室の留学生も全員招待されていたので、日本の披露宴を体験できる貴重な機会になったのではないかと思います。トイレに行く際に、留学生が集まっている席に立ち寄ると、見知った留学生の中に知らない留学生の顔がありました。不思議に思ってあとでN君に聞いてみると、「彼は同じ授業を選択して仲良くなった別の学科の大学院生です」と言いました。コミュ力おばけの面目躍如でした。

私は恥ずかしがり屋なので、披露宴のスピーチや来賓の祝辞みたいなものはこれまで全て断ってきました。親友の披露宴の時でさえ、スピーチだけは勘弁してほしいと固辞したくらいです。その私が、N君の披露宴ではお祝いのスピーチをすることになりました。たぶんこれが、私の人生の中で最初で最後の披露宴スピーチになるでしょう。

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