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「じゃらん」と「コッペパン」

  大学の授業の内容はほとんど覚えていませんが、面白かった雑談はよく覚えています。そのなかでも、私にとって特に面白かった”じゃらん”の話を書きます。『じゃらん』は、日本で刊行されている旅行専門雑誌で、リクルートライフスタイルが発行しています。じゃらんは、道を意味するインドネシア語の”jalan”から来ています。雑誌の『じゃらん』は1990年発行ですが、そのずっと以前から私は”じゃらん”の意味は知っていました。 

 インドネシアに海外赴任したことがある非常勤講師の先生の雑談でした。「インドネシア語で”じゃらん”と言うのは””のことなんですよ。また、これを続けて”じゃらんじゃらん”と2回言うと、”歩く”とか”散歩する”という意味になるんですよ」と物腰の柔らかな講師の先生が教えてくれました。インドネシア語に限らず、ミクロネシア・ポリネシア・メラネシアの島国の言語では、名詞を重ねることで動詞を表わす言葉が結構あります。

 つぎに、その先生が私達生徒に質問しました。「”歩く”は”じゃらんじゃらん”ですが、”走る”はどう表現するかわかりますか?」。先生に答えることはしませんでしたが、「ひょっとすると、”じゃらんじゃらんじゃらん”かな?」と頭の中で考えていました。しかし答えは違っていました。「”走る”を表現したいときは”じゃらんじゃらん”を素早く言います」。「そっちかぁ~!」。何とも意外ですが、道理に合った答えでした。私は、喋る速度で意味が変わる言語を、その時初めて知りました。

 たぶんその先生だったと思いますが、もう一つエピソードを思い出しました。その先生が、海外のレストランで無性にコッペパンが食べたくなったそうです。しかし、パンはbreadだと知っていますが、英語でコッペパンを表わす単語が浮かびません。そこで、「A hotdog without a sausage.」(ソーセージ無しのホットドッグ) と苦し紛れに言ったら、ちゃんとコッペパンが出てきたそうです。

 コッペパンの英語を調べたら”Koppe bread”でしたが、これでは伝わらないので”hot dog buns” (ホットドッグ用のパン)と表現するのが良いでしょうと書かれていました。講師の先生の苦し紛れの表現は、ほぼ合ってたんですね(笑)。

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