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ミリしら物理探査#15 放射能と放射線

 放射能ほど、間違って使われる物理現象はありません。よく「原子炉から放射能が漏れている」と表現したりしますが、厳密に言えば間違っています。放射能とは、放射線を出す能力なので、原子炉から出ているのは放射線です。”放射能漏れ”はよく使われる言葉ですが、本当は”放射線漏れ”です。放射能と放射線の関係は、タイトル図のように熱源(焚火)と熱を考えると、分かりやすいかもしれません。熱源は熱を出す能力を持っていますが、熱源自体は移動しません。熱源から出てくるのは赤外線(電磁波)として届く熱です。

 それでは、放射線とは何でしょうか。放射線をザックリと説明すれば、「高エネルギーを持った粒子または電磁波」になります。放射線は、粒子タイプのものと電磁波タイプの2種類に大別されます。粒子タイプのものは、アルファ線(ヘリウムの原子核)、ベータ線(電子)です。また電磁波タイプのものには、ガンマ線やエックス線などがあります。これ以外にも、宇宙から降り注ぐミュー粒子(ミューオン)なども粒子タイプの放射線の一種です。

 質量が大きい粒子線は重粒子線と呼ばれ、炭素イオン線などがそれに相当します。重粒子線と呼ばれる炭素の原子核(炭素イオン)は、ガンの治療に使われますが、人工的に重粒子線を作るためには大きな加速器が必要です。手術が難しい場所にできたガンの治療に重粒子線が使われますが、大電力が必要です。そのため、必然的に高額な治療になります。九州では佐賀に九州国際重粒子線がん治療センターがあります。

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 放射能の強さは、Bq(ベクレル)という単位で表します。1Bqは、1秒間に核種が1つ崩壊したことを意味します。放射線の単位は線量を使って表し、グレイ(Gy)やシーベルト(Sv)を用います。これは、どれだけ放射線のエネルギーを吸収したかを表す量です。自然な状態でも、大地や宇宙からの放射線や食物からの放射線を浴びるので、年間線量は2.1mSv となります。ただし、場所によっては、この値を大きく超える場合もあります。例えば、ラジウム温泉やトロン温泉などがそうです。世界的に見れば、ブラジルのガラパリ、インドのケララ州、イランのラムサールなどが高放射能地域として有名です。

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