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地熱発電所巡り(番外編) バイナリー発電

 マグマによって熱せられて、高いエネルギーを得た高温・高圧の熱水や蒸気のことを地熱流体と呼んでいます。この地熱流体の温度が150℃以上なら、分離した蒸気で直接タービンを回し、発電することができます。しかし、この温度以下なら通常の地熱発電は出来ません。このような150℃以下の中低温の地熱流体を使って発電しようとするのが地熱バイナリー発電です。

 バイナリー発電では、水蒸気の替りに、水より沸点が低い媒体(水とアンモニアの混合物等)と熱交換し、この媒体から出る高圧の蒸気(気体のアンモニア)でタービンを回して発電します。バイナリー発電では、地熱流体は低沸点媒体を気化させるためだけに使われるので、熱交換器で温度が低下した地熱流体は、還元井から地下に戻されます。この発電方法は、地熱発電の可能性を大きく拡げるものとして、今まで通常の治地熱発電が困難だった中低温の地熱流体を持つ地熱地域で利用されています。

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 温泉に利用できる適温は40℃前後ですが、50℃以上の高温の温泉水は、そのままでは浴用に利用できず、冷まして使う必要があります。しかし、バイナリー発電を使えば、温度が70〜120℃のような高温な温泉水でも、発電した後の温度の低下した熱水を浴用に利用できます。発電温泉ができるので、一石二鳥ですね。福島市の土湯温泉では、400kW級の温泉バイナリー発電が2015年11月から運転を開始し、順調な発電を継続しています。

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 大分県別府市の杉乃井ホテルで地熱発電を行なっているオリックスは、北海道函館市南茅部地域で設備容量6500kWの地熱発電所・南茅部地熱発電所(仮)の建設に着手しています。オリックスは、2022年初春の竣工・商業運転の開始を目指していて、これが完成すればバイナリー方式では国内最大規模の地熱発電所になります。上のイラストはバイナリー発電所の完成予想図です。

 カーボンニュートラルには、発電規模が大きな本格的な地熱発電所が必要ですが、小規模でもバイナリー発電が増えて行けば、地熱発電を身近に感じてもらえるはずです。頑張れ、地熱バイナリー発電!。


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