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アンサング偉人伝#5 もう一人のキュリー博士

 ピエール・キュリー(Pierre Curie)は、フランスの物理学者です。あの有名なキュリー夫人の旦那さんです。ピエールも夫人以上に優秀な研究者で、結晶学圧電効果放射能といった分野の先駆的研究で知られています。1903年には、妻マリ・キュリーやベクレルと共にノーベル物理学賞を受賞しています。なお、"radioactivity" (放射能)という用語を作ったのも、この夫婦です。

 しかし、残念なことに馬車による事故で比較的早く亡くなったので、奥さんのキュリー夫人の方が有名になってしまいました。キュリー夫妻は、タイトル図のフランスの旧札の図案にも使われていましたが、この図案でも夫人が前で、旦那さんが一歩下がった後ろに控えています。

 ピエール・キュリーは博士論文のテーマとして強磁性、常磁性、反磁性について研究して常磁性への温度の影響を発見し、いわゆるキュリーの法則として定式化しました。また強磁性体が温度を上げると、その磁性を失うことを発見しました。この業績にちなみ、鉄などの強磁性体がその磁性を失う温度のことをキュリー温度(キュリー点、Curie Temperature)と言います。

 キュリー温度は、鉄などを含む鉱物が磁性を獲得する際に重要な温度です。地下深部で出来た花崗岩は、最初はキュリー温度以上の高温なので、磁性を持ちません。しかし、この岩石がゆっくりと冷えていく過程で、その当時の地球磁場の方向に磁化されていきます。岩石が十分冷えた頃には、獲得した磁性が固定され、安定した磁化方向を維持します。これが、岩石が持つ熱残留磁気です。

 ピエールとマリは共同で放射性物質の研究を行い、ポロニウムとラジウムを発見しました。マリの有名な博士論文を含む彼らの研究では、ピエールと兄のジャックが製作した高感度な圧電式電位計が利用されました。マリの研究は、ピエールの助力なしには出来ませんでした。

 ピエールの圧電効果の研究を引き継いだのが、ピエールの教え子であるランジュバンです。彼は、超音波の研究をしている人なら、知らない人がいないランジュバン式超音波振動子の発明者です。超音波振動子は、海中のソナー魚群探知機に利用されています。控えめなピエール(?)は、夫人の陰に隠れながら、人類に多大な貢献をしています。


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