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ミリしら物理探査

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物理探査を1ミリも知らない人に、物理探査に関する専門用語を解説します。
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#MT法

ミリしら物理探査#29 受動と能動

 物理探査には数多くの手法がありますが、2つに大別すれば受動的な方法と能動的な方法に分けられます。受動的(passive)な方法は、自然(天然)の物理現象を利用する方法で、能動的(active)な方法は、人工的な送信源を利用する方法です。  例えば、電気探査ではSP法(自然電位法)は受動的な方法になりますし、比抵抗法はトランスミッタを使って地面に電流を流すので能動的な方法になります。  また電磁探査では、MT法(地磁気地電流法)は、自然の電磁場応答を利用するので受動的な

ミリしら物理探査#20 磁気嵐

 地球全体にわたる激しい地磁気の擾乱現象を磁気嵐と言います。磁気嵐は、太陽から飛来するプラズマ (太陽風 ) によって引き起され、そのプラズマ流が地球の磁気圏を圧縮するために生じると考えられています。プラズマ流の一部は、地球の磁力線に沿って極地方の上空から入り込み、オーロラを引き起こします。  大規模な磁気嵐の多くは、太陽フレアに伴なうコロナ質量放出と呼ばれるプラズマの塊と関係があります。このような磁気嵐は、太陽フレアの発生から1~数日後に観測され、太陽フレアが太陽黒点の活

ミリしら物理探査#16 シューマン共振

 地磁気地電流法(MT法)では、自然の電磁場変動を利用して、地下深部の構造を解明できます。自然の電磁場のうちで低周波なものは、太陽からのプラズマ流である太陽風と地球磁場との相互作用が原因です。一方、高周波な自然電磁場の原因は、シューマン共振あるいはシューマン共鳴(Schumann resonance)と呼ばれる現象が原因です。  シューマン共振は、地球の地表と電離層との間で極極超長波 (ELF波) が反射をして、その波長が地球一周の距離の整数分の一に一致することをいいます。

ミリしら物理探査#10 『スキンデプス』

 地磁気地電流法(MT法)では、自然の電磁場変化を測定して地下を探査することができますが、低周波(長周期)の電磁場を使えば、かなり深い地中まで探査が可能です。このMT法の可探深度を表わす指標に、スキンデプス(表皮深度;skin depth)と呼ばれるものがあります。    元々、表皮深度とは、ある材質に入射した電磁場が 1/e (≒ 1/2.718) に減衰する距離です。 この表皮深度は、透磁率がμ、導電率がσの導体では 1 / √(π f μσ) となります。透磁率に真

ミリしら物理探査#4 『MT法』

 MT法は、日本語では地磁気地電流法と言います。名前が長いので、通常はmagneto-telluric(地磁気-地電流)の二文字を取ってMT法と呼びます。  地球は大きな磁石なので、地磁気という大きな磁場に常に晒されています。しかも、この磁場は一定ではなく、様々な要因で常に変化しています。その一つの要因が、大気中で起きる雷の放電現象です。雷が発生すると、その電磁波が電離層の間で共振して、特定の周波数成分が大きな磁場変動が生じます。これが、シューマン共振という現象です。