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ミリしら物理探査

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物理探査を1ミリも知らない人に、物理探査に関する専門用語を解説します。
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2022年5月の記事一覧

ミリしら物理探査#33 ゼーベック効果とペルティエ効果

 ゼーベック効果(Seebeck effect)は、物体の温度差が電圧に直接変換される現象です。ゼーベック効果は、1821年にエストニアの物理学者トーマス・ゼーベックによって偶然発見された。ゼーベックは金属棒の内部に温度勾配があるとき、両端間に電圧が発生することに気づいたのでした。  このゼーベック効果を利用して温度を測定するセンサが、熱電対です。熱電対は、二種類の金属の熱電能の違いを利用するため、二つの金属を接合した構造になっています。二種類の金属を接合した熱電対を途中に

ミリしら物理探査#32 季節を選ぶ地温探査

 物理探査は、基本的には時間と場所を選びませんが、地温探査だけは例外です。最も一般的な地温探査に、1m深地温探査があります。この探査法は、その名前からもわかるように、地下1mの深さでの温度(地温)を測定します。1m深地温探査の目的は、地中の”水みち”の探査です。  ”水みち”は、地下の透水性が高い部分を指します。地下水は地下に一様に分布しているのではなく、透水性の高い部分を選択的に移動します。そのため、同じ深さの地下でも、水が多い部分と水がほとんどない部分があります。  

ミリしら物理探査#31 地中レーダ

 地中レーダは英語では、Ground Penetrating Radarなので、GPRと省略されます。昔は地下レーダとも呼ばれていましたが、最近は”地中レーダ”と言う用語で統一されつつあります。レーダ(radar)の英語綴りは”rader”のように間違う人が多いのですが、radarという単語自体が”radio detection and ranging”の略語であることを知っていれば、間違うことはありません。  地中レーダの原理をわかりやすく言えば、”ヤマビコ”です。遠くの

ミリしら物理探査#30 百分率と百万分率

 物理探査では様々な物理量を扱いますが、絶対的な変化量だけではなく、相対的な変化量を扱う場合もあります。そんな時に使われるのが、百分率や百万分率です。  百分率は普段でもよく使っているパーセントのことで、1パーセントは100分の1を表わす割合のことです。厳密には、パーセントはppc(parts per cent)ですが、前半の”parts”の部分が省略された”percent”がよく使われます。英語の”parts per cent”というのは、”100個に分割した中の一部分”

ミリしら物理探査#29 受動と能動

 物理探査には数多くの手法がありますが、2つに大別すれば受動的な方法と能動的な方法に分けられます。受動的(passive)な方法は、自然(天然)の物理現象を利用する方法で、能動的(active)な方法は、人工的な送信源を利用する方法です。  例えば、電気探査ではSP法(自然電位法)は受動的な方法になりますし、比抵抗法はトランスミッタを使って地面に電流を流すので能動的な方法になります。  また電磁探査では、MT法(地磁気地電流法)は、自然の電磁場応答を利用するので受動的な