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ぶったん四方山話

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これまでに経験した物理探査にまつわるエピソードを紹介します。
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2021年9月の記事一覧

ぶったん四方山話#7 「測点まで移動できません!」

 熊本県の阿蘇南外輪山の大自然の中に、アスペクタと呼ばれる世界最大級の野外ステージがあります。この劇場は、1987年に熊本県が県民の文化施設として設置しました。”アスペクタ”とは世界の『アソ』の景観の中で体験する『スペクタクル(壮大な光景・景観)』という意味の造形語です。この野外ステージは、ホテルグリーンピア南阿蘇の敷地内にあります。バブル真っ最中の頃、年金のお金が余っていましたから、グリーンピアホテルがかんぼの宿として各地に作られました。ここも、その一つです。  丁度、こ

ぶったん四方山話#6 目の力

 視力の測定方法には様々な方法があります。私が小学校の頃は、ひらがなを読む方法が一般的でした。学校の保健室にも眼科にあるものと同じものが置いてありました。確か左端の列は上から、”りさつくけてへこいりぬ・・・”だったと記憶しています。  今は、大きさの異なる“C”の形をした環が開いている方向を識別する事で測定するランドルト環が用いられています。ランドルト環での視力検査では、5mの距離から約1.45mmの切れ目を判別できると視力1.0とされます。昔は悪くても1.5、調子がいいと

ぶったん四方山話#5 カナダの寒さを舐めてました

 カナダのアサバスカ地方には、オイルサンドと呼ばれる重質油を含んだ砂層が広範囲に存在します。オイルサンドから油を回収する方法には2通りあります。一つは、露天掘りでオイルサンド層からオイルサンドを採掘する標準的な方法です。この方法は単純ですが、次のような大規模な工事が必要です。最初に、地表の地衣蘚苔類を取り除きます。つぎに、オイルサンド層までの表土層をはぎ取ります。このときのコケや表土は後で戻すので、どこかに保管しておく必要があります。最後にオイルサンドを採掘します。このオイル

ぶったん四方山話#4 伊良部島の空洞探査

 伊良部島(いらぶじま)は、人口およそ5,000人ほどののどかな島です。この島は宮古列島の島のひとつで、2005年の市町村合併により、いまは全島が沖縄県宮古島市です。しかし、宮古島市の一部になる前は、西側に隣接する下地島とともに宮古郡伊良部町でした。下地島には、小さな島には似つかわしくない大きな飛行機の滑走路があります。この島の半分を占める下地島空港は、かつて日本で唯一のパイロット訓練用空港として活用されていました。現在は、旅客用空港として整備され那覇便や神戸便など出ているよ

ぶったん四方山話#3 臨機応変が大事!!

 物理探査のフィールド調査では、事前に準備を十分していても、想定外のことが起こります。ですから、フィールド調査ではその場で何とかする臨機応変の対応力が大事です。  今から随分前ですが、東北地方の雄勝という場所で、電力中央研究所が高温岩体発電の研究をしていました。こう岩体発電のためには、高圧の水で地下深部にある硬い岩盤を割る必要があります。これを水圧破砕と言いますが、この水圧破砕のモニタリング技術として、流体流動電位法を電力中央研究所に提案していて、この場所で共同研究を実施し

ぶったん四方山話#2 温泉探査のその後

 30年以上前の話です。当時は博士課程の学生でしたが、担当教官から温泉探査に行こうと誘われました。先生から詳しい話を聞けば、既に温泉掘削が始まっているので、その坑井を使って流電電位法を試してみようという話でした。この探査の話は、現在掘削中のボーリング会社から来たようでした。  場所は山口県萩市の『萩本陣』という立派な観光ホテルでした。温泉井戸の場所は、ホテルの敷地の境界にある目立たない場所でした。探査作業については記憶が薄れていますが、ホテルのバーラウンジで毎晩飲んだことだ

ぶったん四方山話#1 熊本県・旧久木野村の幻の露天風呂

 シリーズ化するかは決めていませんが、色々な場所で物理探査を実施した時のエピソードを紹介します。面白いかどうかは、あなた次第です!!。  現在は平成の大合併で南阿蘇村になっていますが、かつて久木野(くぎの)村というのがありました。久木野村には、久木野温泉センター・木の香湯という温泉施設がありました。大きな露天風呂があることや、村営(第三セクター)で入浴料も安価なことなどから、結構人気がありました。残念ながら、2016年4月の熊本地震で被災(建物は全壊)して、現在は休業してい