見出し画像

トップアスリートが感じる「楽しさ」とは?

パリ五輪が感動のうちに閉会しましたが、今日は、オリンピック選手がインタビューの時に口にする「楽しかった」「楽しめた」という言葉を取り上げてみたいと思います。


2000年のシドニーオリンピックで女子マラソン金メダルに輝いた高橋尚子さんの「とても楽しい42kmでした」に代表される様に、競技を振返って「楽しかった」と表現する選手は少なくありません。
あれだけの重圧、緊張の中にあって、それを「楽しさ」と言語化できる心の置き方について考えてみました。

普通の「楽しさ」とは違うようです

私たちが経験や体験について「楽しかった」と口にする時は、それは娯楽であり、交友であり、笑顔であり、安らぎであり、新たな経験やワクワクした経験、等々です。

私も「なんちゃってアスリート」の端くれとしてトライアスロンを「楽しんだ」という感覚でレースを終えることは多くありますが、この「楽しさ」は、澄んだ海で存分に泳げた、海風に当りながら海岸沿いを疾走した、エイドステーションのスタッフの笑顔に元気づけられた等々、出来事であり、5感への刺激に対する反応である場合が殆どです。

しかし、オリンピック出場選手や一流のアスリート達が「楽しめた」という言葉を使うとき、それは単に娯楽的な理由から生まれる楽しみではなく、複雑な感情、思考、視点が混ざり合った、正にトップアスリートならではの要因によるものではないかと・・・、独断と偏見をもって以下の様に考えてみました。

アスリートが感じる「楽しさ」の源泉は?

源泉というと大袈裟かもしれませんが、先ず挑戦することへの喜びがあるでしょう。

自分の限界に挑むこと、より強い相手、ランキングが上位の相手に対して挑むこと。そして今、その機会が自分に与えられているという喜びだと思います。プレッシャーの中でも挑戦することに価値を感じ、自分がどこまでやれるかを試すこと自体が「楽しさ」を生み出しているのではないでしょうか。

そして、達成感と充実感も大きな要素ですね。ここに至るまで長期間にわたる準備や努力、そして自分がベストを尽くしてパフォーマンスを発揮できたという言葉にし難い気持ちが競技を終えてこみ上げてくるはずです。

しかし、思わぬミスや相手の仕掛けによって、まさかの敗退という結果になった場合は「悔しさ」「残念」「後悔」の感情が先に立ち、達成感や充実感どころではないというケースもあるでしょう。悔し泣きする選手の姿をみると、これは例外かなぁとも思います。「楽しめた」という感覚には程遠いでしょうが、力を出し切ったという充実感によって、次に繋がるエネルギーやモチベーションが生まれることを期待します。

また、「自分らしさ」を発揮することも「楽しめる」感覚の要因だと思います。

競技スポーツは対戦相手があり、超えるべき記録や基準があり、それらとの比較、ギャップを意識することは避けられません。それらを意識しなければ勝つための戦略、トップを目指す対策は生まれませんから当然と言えば当然です。しかし一方で、周囲を気にすることなく自分らしさを発揮できているとき、「楽しい」感覚になるのではないかと思うのです。

アスリートにとっての「自分らしさ」というのは、「自分の強み」であり、鍛え上げてきた自らの能力や技術力、戦略、が最大限に発揮されている瞬間かと思います。それが「楽しむ」という感覚につながっているのではないでしょうか。

ちょっと非日常的な感覚になりますが、フロー体験というものもありますね。

フロー体験(Flow Experience)」とは、ポジティブ心理学で知られる、ミハイ・チクセントミハイ(1934~2021)が提唱した概念で、人がその時していることに完全に浸り、精神的に集中している状態、いわゆる「のめりこんでいる状態」であり、時間の感覚もなくなる様な状態をいいます。

選手が競技中にフロー状態に入ると、純粋に競技に没頭することができ、プレッシャーや不安から解放されます。この没頭感が正に「楽しむ」という感覚になるのでしょう。

マラソン、トライアスロンに挑戦している身ですが、残念ながら私には未だこの体験は訪れません。集中していない証拠ですね。

学びと成長の実感も「楽しさ」を感じる源泉になると思います。

アスリート達は競技を通じて学びと成長を得る、また得続けているわけですが、これがオリンピックの舞台となれば、周囲は世界のトップアスリートですから、その影響、得られる学びは大きいでしょう。また競技以外の場での交流も、「世界レベル」の視座を得ることに一役買うでしょうし、そして国を超えた友情も生まれる。オリンピックの閉会式でハグし合う選手達の姿は、お約束の風景になりました。

これまでにない経験を通じて新しいことを学び、自分の成長を自覚することが、「楽しさ」につながるものだと思います。

そして、湧き上がる感謝

インタビューに答える中で多くのアスリートが、家族、関係者、コーチ、仲間等への感謝を口にします。勝っても負けても、メダルが獲れても獲れなくても。オリンピックという特別な場に立てること、世界中のトップアスリートと競えること、に対する感謝の気持ちが、「楽しんでいる」という気持ちを生み出すのでしょうね。

私たちだって、この「楽しさ」は引き寄せられるはず

以上、勝手な解釈ながら、オリンピック選手という、その道の頂点を極める人達を例に上げましたが、程度の差はあるにせよ、私たちも趣味のスポーツで、ビジネスの場で、学校で、部活動の試合や発表会で、こうした場面に身を置くことはありますよね。

上述した様な感覚に視点を移すことによって、無用な緊張を解き、集中力を発揮して「楽しく」パフォーマンスを上げることが出来たらいいですね。

例えばイベントでの講演の本番、どうしようもない重圧やプレッシャーに押しつぶされそうになる勝負のプレゼンテーション、期日に追われて徹夜続きの提案書作成・・・

いわゆる「メタ認知」で、自分を空から眺めて、挑戦している姿、充実感に溢れた様子、強みを認識して自分らしく振舞う姿、感謝している気持ち、学びの場だと思う気持ち、等に視点を向けて少しは「楽しい体験」にすることが出来るかもしれません。

終わってみたら、フロー状態にいたことに気づくことがあるかもしれませんね。

最後までお読みいただきありがとうございます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?