トップダウンは悪いこと?
今日は経営層と一般社員(現場)での認識のズレ、についてお話をしてみたいと思います。
コーチの仕事を通じて、経営トップの方、そして同じ会社の現場の方と個別にお話するという機会が数回あったのですが、その中で、両者の間に会社の運営について真逆な認識があるケースに遭遇しました。
それは1社だけではありませんでした。
何についての真逆な認識か?
組織内でよく使われる言葉、「トップダウン」についてです。
組織運営や意思決定がなされる時に、トップダウンという言葉が使われることがありますが、この言葉が意味するところは、指示、方針、意思決定などの方向を示しているだけなので、良し悪しの問題ではありません。
それが、何故かネガティブに使われたり、あたかも問題の様に使われることがあります。
トップと社員の認識ギャップを端的に表している言葉だと思いました。
「トップダウン」は意思決定の方向を示しているだけ
トップダウン、またその反意語であるボトムアップは、組織のみならず、分析、設計、思考方法でも使われる言葉です。
大枠から検討を始めて詳細に詰めていく、上位概念を決めてからその下に続く要素を挙げていく、等々。
そう考えると、良し悪しを意味する言葉ではないことは理解できるのですが、組織行動に用いると、その組織の文化を象徴する表現がなされます。
例えば一般社員からよくネガティブなセリフ。
「うちの会社は強烈なトップダウンだから逆らえない」
「トップダウンでどんどん物事が決まっていくのでついていくのが大変」
「トップダウンでコロコロ方針が変わるから混乱する」
などです。
一方ポジティブはセリフは、
「ここはトップダウンでサッサと決めてもらえれば楽だ」
「今期の営業戦略はトップダウンで明確に発信してくれた」
「意思決定がトップダウンなので、スピード経営が出来てる」
などですね。
トップダウンが悪者にされてしまう認識のギャップ
トップダウンには長所、短所があり、トップダウン型経営が良いのか、あるいはボトムアップ型経営が良いのか、について様々な視点で議論する価値はありますので、これは別の機会に取り上げたいと思います。
ここで考えてみたいことは、トップダウンにせよ、ボトムアップにせよ、その方針や企業文化について、経営、マネジメント側からの見え方と、現場のからの見え方のギャップが何故起こるか?ということです。
企業経営者が、
「うちの会社は社員一人一人の声をよく聞いて経営に反映している」という一方で、
一般社員は上述した様に
「うちの会社は超トップダウンでホントついていけない」と嘆くことを数多く耳にしたことが、このテーマを取り上げた理由であることは冒頭に述べた通りです。
企業トップと一般社員の間で、意思決定や企業文化に対する見え方が異なっているわけですね。
この様な経営層と一般社員間の認識ギャップの発生は以下の要因が考えられます。
ここでは「トップダウン」を対象に考えてみました。
「トップダウン」に対して起こる認識のギャップ要因
1.コミュニケーションの不足
説明不足:
経営層の意思決定が社員に伝達される際、プロセスや決定に至った背景について十分な説明がなされないことがあります。その結果、社員は自分たちの意見やフィードバックが反映されていないと感じ、意思決定の外に置かれていると思いがちです。
情報のアンバランス:
経営層は、全体的な戦略やビジョンに基づいて決定を行っているため、その意思決定の背後にある理由を理解しています。
しかし、これらの情報が社員に適切に共有されなければ、社員は決定が一方的に下されていると感じます。もちろん、経営層と社員が全く同じ情報を共有することは現実的ではありませんが、そのバランスをチェックすることは必要と考えます。
フィードバックが機能していない:
従業員からのフィードバックが経営層に届かない、または届いても適切に対応されない場合、従業員は自分たちの声が聞かれていないと考えがちです。
「社員アンケート」や「目安箱」などの施策を打ち出しても、フィードバックがなければ、「結局お題目だけ・・・」との評価になります。
2.権限の委譲の欠如
社員が、自らの仕事において十分な権限を持っていないと感じる場合、すべての決定が上層部からの指示に依存していると感じることがあります。
このような状況は、社員の創造性や自己効力感を低下させる可能性があります。
3.自己認識の欠如
経営層が自らの行動や決定がどのように従業員に受け取られているかについての自己認識が不足している場合、経営者は自らが推進している文化の実態を正確に把握できていない可能性があります。
極端に言えば「裸の王さま」状態です。トップダウンの短所が表出するというよい、独裁に近い形になる危険をはらんでいます。
4.企業文化の認識の差
経営層が持つ企業文化への理解と、社員が感じている企業文化との間にギャップがある場合、認識の違いが生じます。
これはM&Aが行われたケースや、外部企業に就職して修行を積んできた社長の息子が2代目として戻ってくるケースなど、いわゆる生え抜きでない人が経営者になった場合に起こり得ます。
経営層は自らが信じて推進する文化を肯定的に見ますが、社員に直ちに受入れることが難しいというケースです。受入れることが難しい文化の中では、社員は経営者が独断に走っていると思いがちです。
以上の様な要因について、経営層だけに責任を求めるのは不合理かもしれませんが、これらの課題に向き合いその解決のための旗振りを、正に「トップダウン」で推進することが大切です。
そして例外無く、「コミュケーション能力」はとても大切です。
今日のお話しはここまでです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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