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(続)「リフレクション」ってなんだろう?

さて、前回からお話しを始めた「リフレクション」ですが、
コーチングとの共通点もあり奥が深いです。
今回もこのお話を続けたいと思います。


リフレクションとコーチングの違い

リフレクションをひも解いていくと、コーチングとの
共通点もありますが、基本的には異なる手法と概念です。

リフレクションは主に自分自身が内省によって自己に
焦点を当て、過去の経験や感情から学びを得るプロセス
ですが、一方コーチングは他者(コーチ)がクライアントに
対して質問、提案、フィードバックなどを行うことによって、
目標達成を支援するプロセスです。

しかし、コーチング技法の中にはクライアントに対して
「リフレクション」を促すものが含まれています。
これは主に「質問」によるもので、コーチングにおいては
質問によってクライアントに新たな考えや視点を提供します。

例えば、
「あなたがそう考える理由は何ですか?」
「あなたがどの様に行動すれば理想に近づきますか?」
の様な質問を受ければ、自ずと「内省」が生まれるからです。

つまり、自分の内面に眼を向ける、自分と向き合う、ことを
促すのはリフレクションもコーチングも共通ですが、
そのきっかけが自分自身となるか、他者(コーチ)
となるか、が大きな相違点です。

自律型人材を育てるリフレクション

リフレクションは、今の時代に求められる「自律型人材」の
育成のために効果的なツールです。

現代は「正解の無い時代」、また、予測困難な
「VUCAの時代」ともいわれています。
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雑性)
Ambiguity(曖昧性)
の頭文字ですね。

かつての、前例や正解を探しにいけば済む時代は、
「答え合わせをすることが近道であり効果的だった時代」
ともいえるでしょう。
しかし、今現在は正解の無い、予測困難な時代です。

この様な状況の中で、「正解」を探しにいったり、安易に
人に答えを求めるのではなく、自分の経験と知恵で「正解」となる
ものをつくりだす内発的動機やエネルギーに満ちた人材、
自ら定めた目的を実現するために学び続ける人材が求められ
ます。それが「自律型人材」です。

逆の見方をすれば、前例があり、正解を探せばよい時代には、
自律型人材もリフレクションも必要なかったと言えるでしょう。
PDCAサイクルを回して答え合わせをし、繰り出された
指示命令(Action)に対して迅速に対応できるする人材
がいれば済んでいたわけです。

しかし、前例の無いものに対応する時代では、PDCAではなく
リフレクションのAARモデルが成果を上げています。

見通し(仮説)=Anticipation
行動 =Action
リフレクション(振り返り)=Reflection

の頭文字をとったもので、
見通しを立てて、行動し、リフレクションを通して、
次の見通しに繋げる、という循環による
「前例の無い時代にの正解の作り方」です。

OECDでは、小中学生にも義務教育の中でAARモデルを
教えることを奨励しています。
また、オランダでは4歳児の子供がリフレクションを学んでいます。

  • 過去3ヵ月を振返り、最も誇りに思うワークは何か?

  • なぜ、そのワークを誇りに思うのか?

  • 一番苦労したことは何か?

  • 次に同様のワークに取組む時には、何を変えるのか?

4歳の子供でも、こうした質問に答えられるそうです。
幼児に「内省せよ」といっても無理があるので、コーチングの
手法となる「質問」が有効になりますね。

この話を聴いて思い出したのは、私がコーチングセッションで
よくクライアントにする以下の質問です。

  • 今週、上手くいったことは何だろう?

  • それ(ら)は何故上手くいったのだろう?

  • 今週、上手くいかなかったことは何だろう?

  • それ(ら)は何故上手くいかなかったのだろう?

  • 次の一手として、来週どんなことに取組んでみたい?
    (上手くいった事の加速、いかなかった事のリカバリ―など)

これは、2022年6月に寄稿した
「効果が得られる One on One ミーティングとは?」
の中で、1on1ミーティングで有効な質問例として記しています。

これをリーダーがチームメンバーに励行させることで、
チームパフォーマンスが上がったという実績に基づく、コーチングの
世界では良い質問のモデルとされているものですが、
今般AARモデルを知り、コーチングとリフレクションの共通点を
改めて見出した気がします。

反省 vs リフレクション

AARモデルをご紹介したところで、改めて
「反省」との違いで考えると、リフレクションへの理解が進むと
思います。

反省は結果に焦点をあてる考え方です。
言い換えれば、責任追及であり、変えられない過去に
視点を当てています。

  • どんな間違いがあったのか?

  • 誰の責任か?

  • 言い訳と謝罪。

この状況から、何か未来への価値につながるものを
生み出すことはできません。
反省すること自体悪いことではありませんが、
反省の短所は「学べないこと」です。

申し訳なさ、負い目、恥ずかしさ、といった
心理的安全性が侵されることが先に立ち、
「学ぶ」という心の状態になりにくい、ということでしょう。

リフレクションも過去を振り返る行為ではあるのですが、
経験に「価値がある」と考え、それを学びとして可視化し、
活用します。未来にどう活かすかという発想です。

  • 想定した姿と実際の結果のギャップは?

  • 何故、ギャップは生まれたのか?

  • この経験を次にどう活かすか?

と、考えます。

コーチングにおいても、思い通りに事が運ばなかった事を
「失敗」と呼ばずに、「気づき、学び、成長する機会」と定めて
います。ここにもコーチングとの共通点があります。

上述のオランダの4歳児へのリフレクションで
お気づきになったと思いますが、「実際の結果」は
マイナスだけとは限りません。
上手くいった、成功した、経験についても
考えて学びの機会とします。

なぜ勝てたのだろう、
なぜ交渉がうまくいったのだろう、
なぜ成約できたのだろう、

これらを単に「頑張ったから」「ラッキーだった」と
短絡的に結論づけるのではなく、掘り下げて、
可視化することが大切です。

なぜなら、可視化された学びは他者と共有することが
できるからです。
つまり自分の成功例が、誰かの成功を手助けする
わけですね。

自律型人材は、経験を学びに変える思考を
もつ人なので、こうした視点で考える習慣が
身についています。
そして、自律型人材がチーム内に育成されていけば、
いわゆる「学習する組織」が生まれてくるのは必然でしょう。

さて、自律型人材になるために5つのリフレクションが
有効といわれています。それは、

  • 自己を知る

  • ビジョンを形成する

  • 多様な世界から学ぶ

  • 経験から学ぶ

  • アンラーンする

です。

最初の4つはイメージが掴みやすいと思いますが、
最後の「アンラーン」はいかがでしょう?
あまり馴染みの無い言葉かもしれませんが、リフレクションに
おいて大切な考え方です。

次回は「アンラーン」を取り上げて、リフレクションのお話を
続けたいと思います。

安藤秀樹
株式会社ドリームパイプライン代表

公式ホームページ: https://dreampipeline.com
お問い合わせ先: hideki.ando@dreampl.com

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