見出し画像

私たちは「励まし方」を教えられていない

今日は、コミュニケーションの基本に立ち返って、
「言葉選び」について考えてみたいと思います。


社会人なら身につけている常識的な言葉選び

私達大人は社会で生きていく中で、状況に応じた
言葉のテンプレート(雛形)を持っています。

人への挨拶、礼儀・・・、
おはようございます。 こんにちは、こんばんは。
お疲れ様。ご苦労さま。お世話様です。ありがとう。

人生の様々なイベントにおいては・・・、
おめでとうございます。
末永くお幸せに。
元気なお子さんですね。
ご活躍をお祈りいたします。

ご愁傷様です。
お悔やみ申し上げます。
どうぞお気を落とさずに。
一日も早い回復をお祈りしております。

これらに加えて手紙というコミュケーションとなると・・・、
「拝啓」、「敬具」、季節の挨拶、と
書き出しの常套句など。

これらの状況に「相応しい」言葉選びは、
幼児期から社会と触れだした頃の
「ちゃんとご挨拶しなさい」
という躾けから始まり、様々な状況で人に
教えられたり、人の真似をしたりすることで
身につけていきます。

そしてある関係性において用いる「敬語」や、
ある特定の状況や人に対して発しては
ならない「禁句」も、経験と通じて学んでいきます。

こうした人との関係性や様々な状況に応じて
正しい言葉使いができることが、社会人としての
「常識」や「教養」と見なされます。
(なので、ネットで軽々しく発せられる「死ね!」
などは間違っても使ってはなりません)

意外に難しい、前向きな言葉選び

この様な状況に応じた言葉選びの中で、
ポジティブな言葉がけって、結構難しく思うことがあります。

人を前向きな方向に導く言葉がけの種類は色々ありますね。
褒める、共感する、賛同する、励ます、認める(承認)、
などなど・・・。
激励と一緒に使われることから「叱咤」もこの一部かもしれません。

これらの言葉は、ポジティブな響きがあるからといって、
オールマイティではなく、状況や相手によって配慮が必要です。

「褒める」という行為も仇になることが起こり得ます。
なぜなら、褒める、励ます、共感する、叱る、諫める、等々、
ポジティブな表現に限らず、私達は大人になるまで、
あるいは大人になっても、状況に応じて正しく感情を
伝えることで、相手に影響を与えることを学ぶ機会が
少ないからだと思います。

数ヶ月前のことです。あの暑い夏のことです。
ジョギングコースの途中にあるサッカーグラウンドで
たまたま少年達の試合を観る機会がありました。
中学生かな?練習試合の様です。

そこで父兄から子ども達にかけられている
言葉の数々に、コミュニケーションアドバイザー
としてのアンテナが立ってしまいました。

親御さん達は皆、お子さんを励ますのに
一生懸命です。そして・・・

いいぞぉ~!
イケイケェ~!
ドンマイ、ドンマイ!
頑張れぇ!
大丈夫、大丈夫っ!

と、大声で応援。
よく見かける風景です。

日本サッカー協会では、ジュニアプレーヤー育成の
ポリシーとして「Player First」を掲げ、
保護者には「ベストサポーター」としての
振舞いを啓蒙しているので、子供が委縮する
するような応援や、具体的な指示の様な
応援は控えられていますし、審判や相手チーム
への野次などは論外です。

ですので、応援も非常に紳士的です。

私のアンテナが立ったのは、「頑張れぇ!」

この試合の応援の状況では全く問題ありません。
ところが、状況が異なると逆効果になる言葉でもあります。

第一回の東京マラソン(2007年)のボランティアを
務めた時のことですが、FINISH前の最後のエイド
ステーション(40km地点、東雲のあたりです)
のチームでした。

大会前に行われたボランティア向けの説明会で
あるリーダーの方が言われたことは、
「皆さん、ランナーに応援の声掛けをしてあげてください。
しかし、「頑張れ!」はやめてください。
多くのランナーは既に力を使い果たして40km地点まで
来ているのです。「これ以上何を頑張るの?」という
心情です。
その代わりに「ナイスラン!」とか「あと2kmですよ!」
という声掛けをお願いします。」と・・・・

一理あるな、と思いました。

「頑張れ」ではなく「頑張ってるね」

つい先日、通っているジムでお世話になっている
パーソナルトレーナーのMさんと雑談していたら、
この「頑張れ」「頑張ってる」の使い方に話題が
及びました。

Mさんはベテランのフィジカルトレーナーですが、
「言葉の力」への関心も高く、
コミュニケーションの勉強もされている方なので、
トレーニング中にこの手の雑談が多くなります。

Mさん曰く、
「頑張る」って言葉、
「あの人頑張っているよね」とか「よく頑張ったね」とか、
評価言葉、褒め言葉として使うのは効果的だけど、
「頑張れ」になると重い言葉になって、
「私、頑張る・・・」「頑張らねば!」と、プレッシャーとして
働いてしまうことがある、と。
そして、チームメンバーに「頑張れ」を禁句にした
こともある、と。

なるほど、東京マラソンのケースと同じだなと思った次第。

「これ以上、何を頑張れっていうんだよ!」と、
内心反抗するのも、一概にヒネクレ者とは言えない
でしょう。

駅伝のシーズンになりますが、
箱根駅伝でランナーと並走する監督車から、監督が
メガホンで声がけしているシーンを観ることがあります。

あれにはルールがあって、片道走路で7か所、
一回1分の制限時間があるそうです。
ですので、その制約の中で選手のモチベーションを
最大に上げる声掛けを考えるのが監督の
腕の見せ所です。

ここで各大学の監督からの声がけは単に
「頑張れ、頑張れ」になるでしょうか?

信頼している人が大声で自分を励ましてくれれば、
その言葉の中身が何であれ、やる気が出るのかも
しれませんが、激励の言葉には一工夫要ることは
間違いないようです。

今日は、「頑張れ!」の功罪を取り上げましたが、
実は、件のサッカーの試合で耳にした、
「大丈夫、大丈夫!」や「ドンマイ!」も、
一度考えてみたい言葉なのです。

安藤秀樹
株式会社ドリームパイプライン代表

公式ホームページ: https://dreampipeline.com
お問い合わせ先: hideki.ando@dreampl.com

拙著 『ニッポンIT株式会社』
https://www.amazon.co.jp/dp/B09SGXYHQ5/
Amazon Kindle本 3部門で売上一位獲得
「実践経営・リーダーシップ」部門
「ビジネスコミュニケーション」部門
「職場文化」部門

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?