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一般的であることと、驚きがあること(ポール・グレアム)

Paul Grahamのエッセイ、General and Surprisingを訳しました。

2017年9月

もっとも価値のある洞察というものは、汎用的であると同時に驚きがある。例としてはF = ma(ニュートンの運動方程式)だ。しかし、汎用的であることと驚きがあることは、実現が難しい組み合わせだ。そのような領域は、まさにそれらの洞察が非常に価値があるという理由で、刈り尽くされる傾向にある。

たいていは、人々ができることはせいぜい片方のみを満たすものだ:驚きはあるが汎用的でないもの(例:ゴシップ)、または汎用的だが驚きはないもの(例:決まり文句)。

物事が興味深くなるポイントというのは、適度に価値のある洞察だ。あなたはそれらの洞察を、汎用的であること・驚きがあることのどちらでも良いのでクオリティが足りていない方を少し良くすることで、得るだろう。多い方のケースは、汎用的であることの方を少し良くすることだ:一部のゴシップは、世の中についての面白いことを教えてくれるため、ただのゴシップ以上のものとなっている。しかし、もう一方の少ない方のアプローチは、最も汎用的なアイデアにフォーカスし、もしそのアイデアについての何か新しいことを発見したら確かめるというものだ。これらのアイデアはもともと非常に汎用的であるため、少しの目新しさを見つけるだけで有用な洞察をつくることができる。

少しの目新しさというのは、ほとんどの場合においてあなたが見つけることのできるすべてだ。というのもこの道を選んだ場合、あなたのアイデアは既に存在した多くのアイデアのように見えるだろうからだ。あるときは、既に存在したアイデアを単に再発見しただけだということに気がつくこともあるだろう。しかしそこで挫けてはいけない。あなたがなんとかして、ほんの少しでも新しいことを考えるときに作用する大きな増幅器のことを気に留めておいてほしい。

推論:より汎用的なことをについて話すほど、同じことを繰り返すことへの注意は少なくて済むだろう。もしあなたが十分に書くことをしているならば、同じことを繰り返すことは避けられないことだ。あなたの脳は年を経てもほとんど同じであり、あなたの脳を刺激するものもほとんど同じだ。私は、まるで自分自身を剽窃したかのように自分が以前言ったことに近いことを言っていることを発見すると、かすかに後悔する。しかし合理的な人は後悔すべきでない。あなたは何かについて、完全に同じ方法で2回言うことはないだろうし、その変化が小さな、しかし重要な目新しさを手に入れられる確率を上昇させる。

そしてもちろん、アイデアはアイデアを生む(聞き覚えがある話だ)。少しの目新しさを持つアイデアは、より大きな目新しさを持つアイデアを導いてくれる可能性がある。しかし、それはあなたが続けたときにしか起こらない。だからあなたの見つけたものに対して、大して新しいものはないじゃないかと言う人によってあなた自身がやる気をなくすことを防ぐ、ということが非常に重要なんだ。「大して新しいものはない」というのは、あなたが最も汎用的なアイデアについて話しているときには、本当の偉業なんだ。もしあなたが続ければ、おそらくあなたはより多くの新しいことを発見するだろう。

この世の中に新しいものがない、というのは真実ではない。いくつかの分野では、ほとんど新しいものがない。しかしこの世の中のある分野で、「ない」ということと「ほとんどない」ということの間には大きな違いが存在する、その分野により新しさが増幅されるときには。

謝辞:このエッセイの草稿を読んでくれた、サム・アルトマン、パトリック・コリソンとジェシカ・リビングストンに感謝する

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