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直感力=ヒューリスティックス

はじめに

羽生善治さんの本に「直感力」という本があり、以下のような文章があります。

直感は、本当になにもないところから湧き出てくるわけではない。考えて考えて、あれこれ模索した経験を前提として蓄積させておかねばならない。また、経験から直感を導き出す訓練を、日常生活の中でも行う必要がある。もがき、努力したすべての経験をいわば土壌として、そこからある瞬間、生み出されるものが直感なのだ。それがほとんど無意識の中で行われるようになり、どこまでそれを意図的に行なっているのか本人にもわからないようになれば、直感が板についてきたといえるだろう。

直感力: 羽生善治著, PHP研究所, 2012.

この文章を読んだとき、ヒューリスティクス[Heuristics]という言葉が思い浮かびました。

ヒューリスティックスとは

ヒューリスティックスとは、人が複雑な問題解決のために何らかの意思決定を行う際、暗黙のうちに用いている簡便な解法や法則のことを指す概念です。

元々は、心理学の用語だったようですが、行動経済学という学問にも導入されました。それまでの経済学では、人間は常に合理的な判断をする生き物として扱われていましたが、行動経済学ではこの考え方を見直し、「経済学の数学モデルに心理学的に観察された事実を取り入れていく」ことで、いまや主流派経済学の一部として扱われるようになり、これに関連する書籍も多数出版されています。

この手法を用いた判断によって、

  • メリット:判断に至る時間は早い

  • デメリット:数学的・経済学的に必ずしも正しい選択肢とはならない

    1. 「損をしたくない」と考えるせいで、確率的には損となる選択肢を選ぶ(プロスペクト理論)

    2. 最初に示された対象が印象づけられ、損となる選択肢を選ぶ(アンカリング効果)

といった効果が期待できます。

直感力は磨ける

ところで、最初の羽生さんの文章に戻ると、

直感は、本当になにもないところから湧き出てくるわけではない。考えて考えて、あれこれ模索した経験を前提として蓄積させておかねばならない。また、経験から直感を導き出す訓練を、日常生活の中でも行う必要がある。もがき、努力したすべての経験をいわば土壌として、そこからある瞬間、生み出されるものが直感なのだ。

直感力: 羽生善治著, PHP研究所, 2012.

と書いています。直感力は蓄積された経験から導き出されるものとして書かれています。瞬間的にパッと引き出されるのですが、「直感」とは決してあてずっぽうなどではなく、過去に蓄積された経験から引き出されるというのです。なので、経験を増した状態の「直感」は、数学的・経済学的に必ずしも正しい選択肢とはならないとしても、経験が低い状態の(あてずっぽうよりも)精度は高くなるということを言っているのだと思います。

結局、直感力を上げるには経験値を積むのが一番良い

全ての状況を読み切れるわけではない状況において、「直感力」の精度を上げるにはなるべくたくさんの経験を積むのがよさそうです。直感で判断しなければならない状況で、最初は上手くいかないことが多くても、段々と「直感」の精度が上がるということはこのことからもよくわかりますね。

(おわり)

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