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君たちはどう生きるか 感想

ぶっちゃけエンタメとしての面白さは薄かったです…。

私は7/14(金)公開日に仕事終わりで観に行ったのですが、
観終わった客の9割は頭に?が浮かんでいて、残り1割のオタクは座り込んで真剣に考察してる…そんな状態でした。

話の内容が、主人公眞人の主観で描かれているため分かりづらく、宮崎駿本人も「私自身、訳が分からない」と言った本作。
自分なりに嚙み砕いてみたいと思います。

プロットを自分なりにまとめると、

疎開した眞人は、学校で喧嘩をし、帰り道にわざとケガをすることで父を通して復讐を果たす。(眞人の悪意)
鷺と異世界での旅を通して、
・悪意のない食物連鎖という生と死
・嘘つきな鷺や、「あなたなんか大嫌い」と言ったナツコの悪意(二面性)
を学び、
×異世界で平和を創作するのではなく、(大叔父の過保護な提案)
〇悪意の塊である戦争で荒れ果てた日本の中(現実世界)で生きることを決めた。
鷺という初めての友人の記憶を失いながらも、「君たちはどう生きるか」を持った主人公が新たな旅たちをする。

■考察
今作のテーマは「悪意」でしょう。

  • 物語前半で兵器工場で働く父親が戦闘機のキャノピーを「綺麗だろ?」と言い、眞人はそれに同意します。
    これは知らず知らずのうちに、悪意のある戦争によって裕福な暮らしをできていることを表現しています。

  • その後、眞人は異世界にて、ワラワラの食糧のために魚を殺す。ペリカンがワラワラを捕食する。ヒミは守るためにワラワラごとペリカンを焼き殺す。死んだペリカンを埋める。という食物連鎖を体験します。
    ⇒自分たちが命を繋ぐために殺生する、悪意ではない本能的なもの。
    この2つの対比構造がポイントだと思いました。

  • 眞人自身、ナツコを鷺から取り返すために弓矢で殺そうとする、悪意のない暴力と、いじめの被害を大きく見せるために自らを傷つける悪意のある暴力。の二面性を持っています。

  • 上記のことを理解して成長した眞人は、物語終盤、悪意のない石を積み上げる創作の世界を引き継いでほしいという、過保護な提案を断って現実世界で生きることを決めます。
    ⇒自分の積み木を立てることを決意。
    ※ここの動機がいまいち分かりませんが、ナツコを救い出すという目的のほかに、異世界の経験を通して、戦争によって裕福に暮らせている眞人が咎を背負って生きる覚悟をもったからなのではないか?と考えています…

  • ラストシーンの2年後では、「君たちはどう生きるか」を鞄に入れているところから、異世界であった出来事に影響を受けつつも生きていく姿を描いています。
    ⇒これはまさしく観客自身が映画という創作に影響を受けて、現実世界で自分の積み木を立てていけ!というメッセージだと思います。

■雑多な感想

  • ナツコが何で塔に行ったか?という疑問がよく上がっていますが、
    恐らく大叔父が親族であるナツコの赤ちゃんに跡を継いでもらおうと思ったのではないでしょうか。インコがナツコを食べられないこととも辻褄が合います。

  • 物語関係なくめっちゃ飛躍した個人的な主観の話ですが、
    大叔父の親族を優遇する石との契約が切れて、今まで積み上げた創作が崩壊する演出は、宮崎駿がいなくなった後のジブリのように見えて、息子の吾朗へのメッセージ。
    その中から悪意のない石を持った眞人が新しい旅立ちをするのは、ポノックで独立した西村P、米林監督へのメッセージに見えましたね…。
    (最後の青鷺とのやりとりで、「別世界の石を持ち帰るなんてありえない」
    現代の子どもは考え方が異なるという反応からも、凝り固まった考えから脱してほしいという意味なのかなと…)

  • あとアニメーションの描き方は一級品で、所作1つ1つに感動しました。

・急な階段の上り方、靴の脱ぎ方
・自転車荷台への荷物の置き方
・鷺の羽のたたみ方。
・ベッドの沈み込む感じ。眞人が座って沈み、気が抜けると大きく沈んでいくベッド。
・着物の所作。階段昇り降り。眞人がケガをしてる中、窓を閉めようとしたときに、着物で小走りする際にカニ走りするところ。

■総評
エンタメ性が低く、面白さは微妙ですが、色んな角度から様々な考察ができる作品だと思いました。考察したり時間経つことで味が出てくる作品だと思います。昔のハウルの動く城もそんな評判だった気がします。

■追記 2023/7/18(月)
私が考察で感銘を受けた村上隆さんのツイートを引用して記録しておきます。
(※ちなみにジブリ解説界の大御所である岡田斗司夫もこのツイートに全乗っかりで、解説放棄してました)

簡潔に言うと、今作は宮崎駿の絵画へのインスピレーションが元になっているのではないか?
参照絵画の1つにベックリンの「死の島」をモチーフにしてるのではないか?という話です。確かにあの異世界と雰囲気が似ている気がしました。

ベックリン「死の島」

ベックリンの死の島とは、ヒトラーが愛して執務室に飾ったと言われる作品で、当時のドイツの家庭では「一家に一枚死の島」と言われるぐらい人気のあった絵画です。
当時のドイツ国民の死生観に関わる作品で、ヒトラーは「この世は残酷なもの(戦争は起きて当然なもの)であり、死は恐れるものではない」として、国民に戦争への参加を勧めていました。

以下、村上隆さんの引用になります。

絵画を見る視点で観てみると、違った考察ができるのでしょう。
確かに”絵画を映像化したもの”と捉えると、本作の不明点が多くあるところや、映画を観終わった後に1つの答えが出ないモヤモヤ感に納得がいきます。

ただ、私は純粋なエンタメが欲しかったです。

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