見出し画像

モンスターペイシェント

増えつつあるモンスターペイシェント

ここ最近メディアでもしばしば取り上げられ、私たちも耳にするようになった言葉に「モンスターペイシェント」という単語があります。医師や看護師に対して、理不尽なクレーム等、難癖を長時間繰り返す患者やその家族たちのことです。今、このコラムを読んでいる先生の中にも、遭遇経験をお持ちの方がいるのではないでしょうか。「待ち時間が長過ぎる」「もらった薬が効かなかった」「診察費が高い」など、まだ怒りの原因が理解できる不満ならともかく、診察順を守らない・看護師にセクシャルハラスメントをはたらく・診察料を払わない・悪態をつき暴力をふるう、など著しくモラルの欠けた振る舞いをする患者は、クリニックに深刻なダメージを与えかねません。警備員のいるような大病院ならともかく、小規模なクリニックはモンスターペイシェントにどのように対処していけばいいのでしょうか。

火を消すのならボヤのうちに

「そんなの簡単だ。クリニックに入れずにすぐ追い払ってしまえばいい」と考える先生もいらっしゃるかもしれません。ですが医師には応招義務があるため、正当な事由がない限り患者を拒否することができないのです。たしかにエスカレートしたモンスターペイシェントの行動は「正当な事由」に該当することも多いと考えられていますが、クリニックや病院の医療従事者から見ればその線引きを自分たちで行ってよいか判断に苦しむところ。また、「先生に文句をつけたら出入り禁止になるクリニック」と事実と異なる噂がたっても困ります。そもそも「モンスターペイシェントに遭ったら○○しよう」という考え方自体が受動的であり、後手に回りやすいのです。どんな種類のトラブルであろうと、問題は小さなうちの火消しが効果的なはず。どうにかして、彼らの行動がエスカレートする前に危険の芽を摘み取ることができないものでしょうか。

対話力の向上がモンスター化を防ぐ

ここで大切なのが、百貨店などのクレーム対策でも重要視されている「対話力」です。理不尽なクレームとはいえ、その根っこに潜んでいるのは感情のもつれであることが多いため、その怒りを刺激することなくフラストレーションを解消してあげるような会話を心がけるのです。例えば、長時間待たされイライラし始めている患者に対しては、受付スタッフや看護師がまず「待たせて申し訳ない」という気持ちを言葉にして投げかけるようにしましょう。決して「他の患者も待っているのだからあなたも待つのが当然」という姿勢を見せてはいけません。もちろん怒ったり威圧することも厳禁です。その上で患者に、急いで診察して欲しい理由があるのか尋ねてみましょう。多くの場合は、理由の有無にかかわらず自分の都合を聞いてくれたことだけで納得してくれます。もし納得してくれない場合でも、時間がかかることを丁寧に説明し再来院を提案するなど、相手の立場になって対話することで事態の悪化は防げるでしょう。

「患者一人にそこまで時間をかけられない」という声が聞こえてきそうですが、もしその一人が完全にモンスター化した場合、院長もスタッフも途方もない時間を浪費させられ心身ともにボロボロになってしまうことも珍しくありません。モンスターペイシェント対策は初動が肝心、と胸に刻んでクリニック全体で対話力向上に励むようにしましょう。患者の体から聞こえるSOSに毎日耳を傾けている先生方なら、そう難しいことではないはずです。

居心地の良い場所に、人々は集まる

体に不調を抱え不安な気持ちでクリニックを訪れる患者さんたちにとって、最も長い時間を過ごすことになる待合室の印象は、そのままクリニック全体の印象と直結すると言っても過言ではないからです。カフェやレストランの例をあげるまでもなく、人は居心地の良い場所に集まりやすいもの。もし先生が「医師は腕前ありき」とのポリシーをお持ちであろうとも、最終的にどのクリニックを選択するかの決定権を持つのは医師ではなく患者です。明るく開放的な内装の待合室には「安心して診てもらえる」と無意識のうち感じるでしょうし、感じの悪い待合室には「ここ大丈夫かな…」と無意識に警戒心を抱くことでしょう。つまり待合室のありよう如何で、集患率は少なからず影響を受けるということ。では集患率の上がる、“患者を呼べる待合室”にするためのポイントはどこにあるのでしょうか。

まずは存在感の大きいインテリアから考える

突然ですが「待合室のインテリアでいちばん目立つもの」といえば何でしょうか? 答えには様々あるでしょうが、医師目線ではなく患者目線で考えた場合にはソファーという回答がかなりの数を占めることでしょう。空間に占める割合の大きさはもとより、待ち時間のあいだずっと座り続けることで印象に残りやすいからです。つまり待合室のインテリアを考える際、ソファーの選択には細心の注意が必要だということです。デザインテイストが待合室の内装としてふさわしいものか? 床材や壁材とマッチする色合いか? 高齢者や足腰の弱い患者にとって座面が低すぎないか? 汚れが拭き取りやすいか? といった複数の観点からチェックしていきましょう。ソファについては必ずしも医療機器専門業者の取り扱い製品から選ぶ必要はないため、街の家具店にも置いてあるような一般向けの製品にも目を向けるべきです。選択肢が一気に増えるため、理想に近い製品に行き当たる可能性が高まることでしょう。

ポスターの色褪せは、クリニックイメージの色褪せ

また、待合室の印象に影響を与える意外なものとして、医療情報などを知らせるポスターがあげられます。これらは一度掲示してしまうと剥がす必要性を感じるタイミングがあまりないため、ついついそのままになってしまいがち。長期間貼っぱなしになったポスターは色が褪せ、汚れも目立ってきます。ところがついに破れまでが見られるようになっても、医師やスタッフは毎日目にしており、そのことに鈍感になっている場合があるのです。みすぼらしいポスターがほったらかしになっているクリニックに、好印象を持ってくれる患者さんはいるでしょうか? 定期的に掲示するものを見直して、常にフレッシュなイメージを保つようにしておきましょう。

なお、内装計画の段階で掲示スペースを集約化しておくと、ポスターが無造作に貼られることもなく、雑然とした印象を抑えることができます。集患のためにもう一歩積極的な取組みをするのなら、ポスターを貼り出す際にクリニックからの一言コメントを追記するのがお薦めです。「なぜこの医療情報を掲示しているのか」「ポスターのどの部分が特に重要なのか」などが解説してあると親しみも湧きますし、他のクリニックとの差別化にも繋がります。書店の手書きPOPなどを参考に、トライなさってはいかがでしょうか。

宜しければサポートお願い致します!