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開業医の老後資金

年金の面から開業医の老後資金を考える

「いよいよ開業医になろう!」と年来の願望実現に燃えている先生方にとっては、今からリタイア後の生活に思いを馳せるのは気が進まないことかもしれません。ですが個人事業主の開業医には勤務医と違って退職金がないため、いつかは真剣に考えなければならない日が必ず訪れます。安心して仕事に専念できる現役生活を築くためにも、大きなキャリアチェンジとなる開業のタイミングでこそ、引退後の“老後資金”について考えてみてはいかがでしょうか。そこで今回のコラムでは、安定した定期収入となる「年金」という側面からお伝えしていきます。
ご存知の通り、勤務医の先生方には民間企業に勤めるサラリーマンなどと同様の厚生年金が公的年金として用意されています。現在のところ原則65歳になれば加入期間と平均給与に見合った金額が支給されるため、長いあいだ勤務医として勤め上げた医師であれば、将来それなりの収入源となり得ます。

開業医になると厚生年金の手厚い保障が無くなる

しかし勤務医から開業医へと転身すると、公的年金のいわゆる“2階建て部分”であった厚生年金がなくなり、“1階部分”である国民年金のみとなってしまいます。リタイア後の生活を楽しむのに充分とは言えない額にまで目減りしてしまう恐れがあるばかりか、遺族年金や障害年金についても厚生年金加入者ほどの手厚さが無くなります。そのため開業医となるならば、公的年金に加えて任意加入である私的年金を組み合わせて老後資金の設計をしておくことをお薦めします。代表的な私的年金を以下にあげていきますので、ぜひ検討なさってください。
まずは国が運営する「国民年金基金」。そもそも厚生年金と国民年金の年金額の差を解消するために創設された基金ですので、国民年金に上乗せをしていく制度となっています。つまり個人事業主となることで失った「厚生年金の2階建て部分」を補完するようなイメージの年金です。掛け金に上限があるものの、全額が所得控除の対象となり節税に繋がるのがメリットです。

年金を複数組み合わせることも検討してみる

節税に有利な年金対策と言えば、独立行政法人の中小企業基盤整備機構が運営する「小規模企業共済」もお薦めです。小さな会社の事業主にとって退職金代わりになるような共済制度であり、こちらも国民年金基金同様に掛け金全額が所得控除されるのが魅力です。また、日本医師会に入会するつもりならば、医師会運営の「医師年金」も検討してみましょう。いつでも保険料を増減できたり、加入時ではなく受給開始時に年金の受けとり方を選べたりと、ライフスタイルに合わせた使い方ができる積立型の私的年金です。

この他にも、全国の保険医協会による積み立て型の年金制度もありますし、民間の保険に目を向けると、保険料支払いや保険金受取を外貨で行う「外貨建て個人年金保険」や、払った保険料の運用実績によって受けとる金額が増減する「変額個人年金保険」など、元本割れのリスクはあるものの収益性の高い商品も存在しています。堅実本位でいくのか、節税面を重視するのか。あるいはリスクを取って大きなリターンを狙うのか。目的に合わせて複数の年金を組み合わせることも、ぜひ検討なさって下さい

医師ならではの年金制度、医師年金

国民年金にしか加入していない開業医は、厚生年金に加入している勤務医よりも少ない年金しか受け取ることができないのでしょうか? それは「その通り」とは言い切れません。なぜなら、各個人が年金制度3階部分の企業や団体が独自に運営している企業年金に加入することもできるからです。
その1つに、日本医師会が運営している「医師年金」があります。医師年金は日本医師会会員であれば種別を問わず満64歳6カ月未満まで加入資格があり、保険料は全員加入の「基本年金保険料」と、任意加入の「加算年金保険料」があります。基本年金保険料は月額 12,000円(年払:138,000円)で、加算年金保険料は月払:6,000円単位、随時払:10万円単位でいくらでも掛けることができます。

老後は年金の受け取り方法を選ぶことができる点も特徴です。満65歳から受給が可能な「養老年金」、若手医師の教育資金として活用する「育英年金」、傷病により従事できない場合に支給される「傷病年金」、本人が死亡した際に遺族に支払われる「遺族年金」などがあります。
現役世代が高齢者を支える公的年金制度とは異なり、自分で積み立てた分を将来自分で受け取るという積立型の年金です。
デメリットを挙げるならば、通常の年金やiDecoなどと違い、掛金が所得控除の対象にならない点です。そのため、節税を考えている場合はよく検討する必要があります。

国内最大規模の私的年金制度、保険医年金

全国保険医団体連合会(東京保険医協会など各地の保険医協会が加盟する団体)が運営する「保険医年金」というものもあります。会員は任意で加入することができて、保険料は月払1口1万円で、最大30口まで増やすことが可能です。
ユニークな点は、「いつからでも受け取ることが可能」というところでしょう。加入5年未満の場合は元本割れする可能性もあるようですが、それでもここは他の年金制度にはないポイントですね。
他にも、1口単位で解約できることも記載されています。たとえば40歳で10口の月払で加入して、50歳でどうしても資金が必要になった場合、一時金として数百万円を受け取り、残りの5口は継続して払い続けるなど、柔軟に変更することができます。
加入時と数年後、数十年後では社会の状況が変わり、それに合わせてライフスタイルも大きく変わっている可能性があるので、この柔軟性は大きなメリットと言えそうです。
懸念点を挙げるとすれば、給付額は配当利率で決まる点です。現在の予定利率は1.259%と高い数値で、HPにも「年金受給開始後の受給額を過去に削減したことはありません」と明記されていますが、今後の経済情勢の変動により利率が可能性もないとは言い切れません。


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