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多忙解消は誰がしてくれるのか

文科省が次々に新しい施策を出している。
教員不足問題や多忙解消といった、現場の窮状を鑑みて捻りだしてきた案であり、どれも素直に有難いことである。

しかし、何をやろうが、これらは全て批判の対象になる。
文科省が何かしらの方針を出すと、ネット上を中心に批判が上がる。
何でもそうだが、関心が高い一部の人の中の、更に不満を感じる人しか声を上げないから、そう見えるだけかもしれない。
出す方も、問題を感じていてかつ苦しいからこそ声が出ているのである。

学級経営においても、満足している人や陰ながら応援してくれている人は特に何も言わないことの方が多い。
旅行業や飲食業などあらゆるサービスに対しても、満足していたり特に問題がなかったりであれば、多くの人は何も言わないのと同様である。
だからこそ、わざわざ感謝の言を述べてくれる方の存在は超貴重であり、文字通り有難いことである。

だから批判の声は、実際の数よりも目立って割合的に多く見えがちという性質がある。
そして批判にも種類があり、前向きな批判と悪口とは全く違う。
例えば授業研をした後に「授業のここが課題」という指摘は必要で適切な批判である。
一方で「このやり方が嫌い、気にくわない」というのは、単なる悪口である。

批判するということそのものに善悪はない。
逆に必要な批判が適切に出てこないことの方が恐ろしい。
それは例えば独裁国家の支配下や、戦争中の言論統制のような状態である。
問題を感じたことに対して批判が出るのは、社会が健全な証拠でもある。

我々現場の教員も、似たような体験をする。
一生懸命に考えてやったことであっても、一部の批判となって返ってくることがある。
(わざわざ「先生のことで嫌なことがありませんか」とアンケートをとれば、必ず一部の誰かしらから何かしら出るのが世の常である。)

人の口伝えからの「情報」である以上、間違ったり誤解されたりして伝わってしまうこともある。
そんな時、一生懸命にやったことほど、「もうやりたくない」と思ってしまうのも自然な感情である。
意欲・やる気が失われていく構造である。
苦労して滅私奉公した気がすることほど、そうなる。

だから、普通以上にがんばるのは好きで得意なことだけにした方がいいと主張している。
自分の好きで勝手にやったことなら失敗や文句にも納得ができるからである。

話を各種施策の話に戻す。
確かに、どれも学校の多忙解消への根本的な解決にはなっていないかもしれない。
しかし、それは当然である。

『不親切教師のススメ』でも他でも何度でも繰り返し主張しているが、多忙解消の主体者は、我々学校現場の教員である。
学校現場の「親切」の度が過ぎるのである。
やりすぎである。

本当にそれをやりたいのか、あるいはやるべきかの検討が必要である。
何でもやったらいいとなるに決まっているが、資源は限られているのである。
たくさん作ってたくさん売れれば人々が喜ぶしいいことだ、というバブル経済的発想はいい加減捨てねばならない。
世間の潮流はとっくにSDGsなのである。

「自分はこれがやりたい!」
「子どものこの願いを叶えたい!」
本来、この辺りの動機で動けば十分なはずなのである。
何でもかんでも良かれと思って、必要以上にやりすぎ、作りすぎである。

文科省が全国に与える影響の規模、範囲は最も大きい。
ヒト・モノ・カネの三大要素に関わる行政の範疇については、少なくとも私のような立場の人間には関与できない。

しかし教諭の立場だからこそ、自分の学年や学級、目の前の子どもに与えるインパクトは十分に大きい。
校長ならば、自分の学校の全てに与える影響力は、他の誰よりも最大級である。

各種施策については、どれも増えれば増えないより有難いぐらいの話である。
そこに文句を言っても、正直どうしようもない。
ないものねだりは無理なのだから、あるもので何とかするしかない。

行政に対しては常に淡い期待を抱きつつ、どんな状況下であっても、自分たちのできる範囲からの改革が必要である。
「改革」の「革」とは、元の動物が全く違うものに変わってしまうことを指す。
それぐらいの大きな変化である。
「前からやっていたから」「当たり前」という考え方は、改革にとって大きな障壁といえる。

学校の多忙の原因は、確かに人手不足かもしれないが、その原因の構成要素は間違いなく「業務量過多」である。
軽トラに1トントラックの荷積みをした状態の、パンク寸前過積載の業務量を減らす努力が必要である。
そして、降って来る業務が多いのは間違いないが、自分たちが過去にNOを突き付けなかったせいというものも、かなりある。

上は上で、常にやることをやってくれるはずである。
そこへの注視はしつつ、学校現場にいる人間として、自分ができることを確実にやっていきたい。

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