見出し画像

『世界で通用する心の強さ』久保利英明×斉藤惇

久保利英明×斉藤惇
(日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー/KKRジャパン KKR Global Institute シニアフェロー)対談Vol.3


久保利「ちょっとテーマを変えて」
斉藤「はい」

久保利「次の世代がどんどん出てきて、会長ももう80を超えられた」
斉藤「とっくに超えてます」

久保利「いやいや(笑)次代を担う、さっき冨山さんという名前も出ましたし」
斉藤「ええ」
久保利「もっと若い世代というのも出てくると思いますけど。この人達にこの日本国というのをちゃんと世界で通用する国としてやっていこうとしたらどんなことを期待されますか」

斉藤「そうですね。時代時代がそのそれなりの人を生んでいくと思うんですね。江戸時代には江戸時代の素晴らしい改革的な方もおられたでしょうし、もちろん明治はそうですし。おそらく昭和でもそうだったと思うんですけど。ですから今の時代、DXだとか、それこそYouTubeだとか」
久保利「はいはい」

斉藤「こういう時代にはまったくそのへんを完全に血にし肉にしてる」
久保利「なるほどね」
斉藤「方がおられて、新しいテーマも絵面もちゃんと描かれていくと思います」
久保利「なるほど」

斉藤「だからそこはあんまり心配しないんです。一貫して私は、日本人ってほんとにいい民族ですよね。ようするに、私も仕事柄、世界150ヶ国ぐらいまわってアルメニア人やジューイッシュや中国人やいろんな人たちと」
久保利「はいはい」

斉藤「場合によってはトランプさんともやりましたけど、商取引をやってくる中で、やはり厳しいんですよね」
久保利「あー、世界はね」


斉藤「いわゆる教科書的な善悪とかだけでなくて臨機応変の価値観とか色々なものがある。別に悪いことをあれしろと言いませんが、すべてにトラップ、罠があったり、仕掛けがあったり、そのある意味では、すごいのはイギリス人だと思うんですけど」
久保利「はい」

斉藤「先生の世界ですが、やっぱり法律、ルールっていうのを作る天才だと思うんです」
久保利「ですね」

斉藤「しかもそれは非常にフェアのようにみえるんだけども」
久保利「に見えていて」
斉藤「実はずっとやっていくと、何かいつの間にか向こうにポトンと落ちるように作ってある」
久保利「(笑)」

斉藤「こういうのをしっかり学んだ人が少ないですね。非常に学校の教科書的に正しい、正しくないということを、これ非常に僕は大事だと思うんです、大事だと思うんですけども、地球はこんなちっちゃな世界になってますので、常に日本人相手の政治であり、経済でもないので、おそらくこっからますますですね、中国やいろんな方、中国の方々っていうのは歴史があるということと、キャラクターかもしれませんが、非常にたくましいんですよね」
久保利「たくましいですね(笑)」

斉藤「たくましいです。それでやっぱり過去からよく学んでるんですよね」
久保利「うんうん」


斉藤「この前、こういうところで言っていいのかどうか知りませんが、NHKで蒋介石さんのね、日記を放送しました。戦争、8月15日でしたか16日にね。蒋介石の日記を大東文化大学におられる中国の先生が、10年かかって写された」
久保利「写した」
斉藤「はい、アメリカへ行って。というのは」
久保利「アメリカに行ってるんですか」

斉藤「蒋介石の一家は写真を撮ったりすることを禁じてるらしくて、写して、それをこうやられたんですが。我々がたとえば日本が進軍した上海事件、蒋介石の日記には、「してやったり」トラップなんですね、あれ。で、待ち構えて日本軍を」
久保利「うん」

斉藤「わざわざそこを撃たせて欧米の注目を浴びる」

斉藤「彼の日記に「このまま我々は、単独では日本とは戦えない。勝たない」どうしても欧米の力、特にイギリス、アメリカの力が必要だというので、ところがなかなか注目してくれない。日本はどんどん中国に入っていってるのに、だから、悲惨な上海事件というのを起こすわけです。実は、そこでは見たら、日本兵ものすごく亡くなってるんですね」
久保利「うん」

斉藤「向こうは待ち構えていたようなトラップですから」
久保利「はいはい」
斉藤「でも、まあ一応おさえた。ところが日本の報道は「上海おさえた」とかね、やってるわけですね。その真珠湾攻撃報道を見たときの日記が出てきて」
久保利「ほお」

斉藤「ここがもう彼の絶好調「大成功」」
久保利「大成功ね」
斉藤「結局これでアメリカは、日本に宣戦する」
久保利「参戦する」
斉藤「参戦する」
久保利「せざるをえないですね」


斉藤「これで中国は助かる。っていう。こういう計算がね、日本の政治家とか行政官に欲しい」
久保利「うーん、まあ。無理だろうと思いますけども(笑)」

斉藤「(笑)商取引やいろんなことやってて、ほんとにみんな真面目でいい方なんです、日本の方」
久保利「うん」
斉藤「だけど、弱いなあと」


久保利「だから日本でいう真面目というのと彼らの真面目というの、やっぱりもう血の汗を脳みそにかきながらですね、それで、なんとかしてこの中華民国が生きていくためには、中国がやっていくためにはどうしたらいいかというのをたぶん、必死で考えて考えて闘ってるんですよね」
斉藤「必死ですよ。まったく必死なんですよ。必死」
久保利「誰が必死で考えてくれてるんだろうかと日本はね」
斉藤「そうです」
久保利「ようするに真面目さが僕は足りないと」
斉藤「うん(笑)」

久保利「言われたことを真面目にやるっていう真面目はわかりますよ」
斉藤「うーん」
久保利「そうじゃない。だけど、この民族、この国をなんとか維持していくために本当にもうあらん限りの脳髄をしぼってでも、トラップをつくってでもなんとしてでもこれをやっていかなければ、この国は危ういという認識と覚悟と戦略っていうか、それがどうもないような気がするんですけどね」
斉藤「おっしゃるとおりですね」

久保利「日本人はね」
斉藤「やっぱりあれですね強くあってほしい」
久保利「うん」
斉藤「強いというのはなんというか、戦前のような何も知らないでただ精神的な」
久保利「強がってるというのじゃなくてね」

斉藤「強がってるのじゃなくて本当に強ければ寛大なんですよね。そんな厳しいだけじゃなくて。あの心も広い、ほんとうに強い人というのは」
久保利「強いから優しいってね」
斉藤「柔道なんかでもそうです。優しいの本当は」
久保利「ねえ、うん」


斉藤「そういう強さをもってほしいんですね。だから、世界の歴史も学び相手のことも学んだ上で、別に脅迫したりそういう強さじゃなくて、正論を吐き、どうどうと論破しながらですね、やっていけるような人たちが、今後日本に、やっぱり教育だと思ってるんですね、これ」

久保利「僕もね日本人の悪さっていうか、良くないなと思うのは同調圧力とかね、あるいは、千万人といえども我行かんというね」
斉藤「幅の広い、なんというかな精神的、インテクレチュアルに強い人間ですね」
久保利「そうですね」


斉藤「まあ、やっぱり近代史もしっかり勉強してもらいたいし」
久保利「そう」
斉藤「やっぱり今の受験勉強の中で近代史消えてるわけですよね」
久保利「ないんですね」


斉藤「はい。これ大欠陥だと思います。アジアは特に近代史をしっかり教えてますからね、日本にやられた近代」
久保利「そこをずっとみんなね歴史的な」


斉藤「一方、やったほうの日本が近代史を勉強してないというのは、これはもうなってないと思うんです」
久保利「まるで話がすれちがいですもんね」


斉藤「お互いにピッと、ほんとうの真実をちゃんと見ながらですね、やはりあのもうもちろんたいへん日本も反省点もあるし、あれですけども今のアメリカが中国に対してやってることは、あれは昔、日本に対してやってたことですし」
久保利「まあそういうことですよね」


斉藤「それは歴史をずっと見てると同じことをやってるわけですよね。そういうこと本当は、今の若い方々には、いろんなhow to的な技術もさることながら」
久保利「歴史ですね」
斉藤「うん、歴史学んでいただきたいと思います」
久保利「なるほど」


【斉藤惇 PROFILE 】
日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー/KKRジャパン KKR Global Institute シニアフェロー

1939年生まれ
慶應義塾大学商学部卒業

野村証券株式会社代表取締役副社長
住友ライフ・インベストメント株式会社代表取締役社長・会長等を歴任
2003年4月~2007年5月株式会社産業再生機構代表取締役社長
2007年6月東京証券取引所の代表取締役社長
同年8月株式会社東京証券取引所グループ取締役兼代表執行役社長を兼任
2013年1月~2015年6月
株式会社日本取引所グループの取締役兼代表執行役グループCEO
2015年8月
KKRジャパン会長
2017年11月
日本野球機構会長
2017年12月
KKR Global Institute シニアフェロー就任

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?