変形性膝関節症とサルコペニアマネジメントにおけるトレーニング効果

前回の記事に引き続き、今回のテーマも変形性膝関節症(KOA)について。当院では頻繁にご相談を受ける筋骨格系疾患の一つである。
軽度の段階での診断・治療法選択を誤ると慢性疼痛や身体障害、ひいてはうつ病発症リスクが高くなり、患者さんの身体的・経済的負担をさらに大きくしてしまう。
治療家やパーソナルトレーナーであれば知識の更新は欠かせないだろう。

前回の記事はKOAにおける栄養学的アプローチについて書いたが、今回は栄養+運動療法についてデータを元に書いてみたい。

KOAによる痛みと筋力低下は下肢の運動能力、特に歩行速度(WS)に大きな影響を与え、歩行速度の低下は5年全死亡率や3年入院率の高さと関連する。当然のことながら、WSの遅さは身体活動の低下と関連し、速いWSは身体活動の活発さと関連する。
歩行能力の維持または回復は、KOA患者の高いQOLを維持して身体的活動を保持するために極めて重要といえるだろう。

さらに、WSが遅いKOA患者はサルコペニアリスクも高くなる。
過去の研究では、KOAを有する高齢者はKOAを有していない高齢者よりもサルコペニアになりやすいことが実証されている。
また、低筋力とWSの遅さという共通の特徴はKOA進行に関連することから、KOAとサルコペニアの負のループがが強化されてしまう可能性も高まる。

したがって、KOAとサルコペニアを持つ患者(特に高齢者)のWS回復のための効果的な治療法を確立することは非常に重要なテーマと言えるだろう。

筋力低下や運動能力改善と聞いて真っ先に思い浮かぶのはレジスタンストレーニング(RET)、栄養面ではタンパク質補給(PS)。

今回の記事では、KOAとサルコペニアに対するPS+RETの治療効果について掘り下げてみよう。

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