見出し画像

謝謝チャイナ

3週間に及ぶ中国出張を終えようとしている。振り返れば強制隔離の8日間も、PCR検査を受ける毎日も、行動をアプリで監視される日々も懐かしく思える。

久しぶりの中国はダイナミクスに溢れていた。丁度僕の隔離中にデモが中国国内で起こり、ゼロコロナ政策は呆気なく幕を閉じた。元々は上海エリアから出て他都市に行くと、5日間は公共施設や飲食店への立ち入りができなかったが、それもサクッと変更になる。

凄まじい朝令暮改っぷりである。同時に「これが好きだから中国で仕事してたんだよなー」と思い出した。ある意味中国は間違っていることをサクッと認めて、あたかも最初からそうであったかのように軌道修正するスピードが世界一早い国だ。

コーヒーショップ数が世界で1番多い都市は、東京でもなく、ニューヨークでもなく、ロンドンでもない。上海である。コロナ禍を経てもその数は8,000店舗を超えるという。しかもここ10年で人口当たりの消費量が10倍以上に増えてる。世界のコーヒー消費量の平均増加率が2%程度に対し、中国では年15%以上増加しているのだから凄まじい。

中国のコーヒーマーケットの市場規模は、2025年に1兆元を超えると予想され、僕が創業時からコンサルティングしているラッキンコーヒーも、2022年12月時点で店舗数が8000店舗を越えて、中国最大のコーヒーチェーンになった。粉飾決算事件を乗り越えて、強固なガバナンスを取り入れた結果、既に黒字化している。

スターバックスがマーケットリーダーであることに変わりはなく、そこに中国発のチェーンであるラッキンコーヒーや、300店舗ほどを経営する人気のマナーコーヒー、またコスタ、ティムホートンズやブルーボトルなどの外資がこの巨大なマーケットで凌ぎを削っている。

中国はオンラインオーダーが主流で、もはや紙のメニューは存在しない。WechatやAlipay上でオーダーし、支払いも自動的に終えることができる。顧客体験がオンラインで完結する近未来である。

それに加えてガチな鎖国が3年も続いているから、コーヒー業界の独自の進化っぷりも凄まじい訳だ。まさにガラパゴス。今はシグニチャードリンクにどのインディペンデント系のお店も力を入れていて、独創的で見た目も味わいも美味しいドリンクに溢れている。全自動マシン、特にエヴァシスを積極的に取り入れるお店が多く、凄まじく合理的である。

コーヒーのラインアップに関しては正直物足らないし、品質もそこまで良くはない。特にインフューズドコーヒーの嵐で全く楽しめないので、結局深煎りのクラシックなアメリカーノを頼んでしまう。

バリスタの人件費も5000RMB(日本円で10万円弱)から9000RMB(18万弱)まで上がっている。低いじゃないかと思うかも知れないが、地方都市になればこの半分くらいもザラだった。

なぜこんなに大変な時期に中国に行くのですか?と聞かれる。僕の答えはシンプルで「誰も行かない時に行くことに意味がある」のである。障害があればあるほど行くことに意味があり、得るものが多い。事実これ以上ない収穫を持って日本に帰国する。

変わらぬ友情と、たくさんの学びと刺激をもたらしてくれた中国、本当にありがとう。謝謝。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?