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wyse「style」レビュー

1999年に結成したwyse。
2001年にメジャーデビューし2005年に解散。
2011年に再結成され今年再結成10年に突入。

ちょっと一昨年にPeriodと銘打ってツアーしててドキッとしたけど
ex-JanneDaArcのshujiを迎えて今なお鋭意活動中。

鬱で沈み込む私のもとへ、彼らの最新作が届いたので
そしてそれが素晴らしく素晴らしかったのでリアルタイムで触れてみたいと思います。

なお、すべて主観なので違う意見あったら是非教えて下さい。
語らい合いましょう。

今回の【style】という作品は5曲入りのリテイクミニアルバム
つまり過去に発表した楽曲を現体制で再録したナンバーとなっております。

Tr.1「離さないで」

初出2003年。
2016年に一度リテイクされ、今回二度目のリテイク。

2003年発売の「beat」というミニアルバムの5曲目に位置していたこの曲は
3拍子で展開する不安になるような進行と音色で
風刺的な「パンジー」と攻撃的な「Angela」に挟まれて
重々しくも"アルバムを彩る一曲"以上の印象はありませんでした。

ただ「Impty」や「都合のいいモラル」にも通じる、メジャーシーンへ上り詰めてから生じた怒りというものも感じられ、そういう意味ではメジャー2ndアルバム「Calm」から引き継ぐ一曲だなと。

セルフライナーでTAKUMAが述べている通り、
この数年後解散を選ぶことを思うと、終りへと向かった閉塞感
「離さないで」ほしいのに、という諦観ともとれるブレが生じた曲でした。

ただ、再結成してリテイクシリーズに再録された「離さないで」は
意思が強く反映されたアレンジへと生まれ変わっています。

空白の7年があるが故の、歴史を知っているからこそ起こりうる感情。

今すぐにこの部屋を飛び出せば まだ間に合うはず

うん、間に合ったんだね月森……と再結成して継続的に活動できている現状に、「離さないで」いてほしい、という懇願に私は感じました。

そして今回さらにリテイクに選ばれた楽曲。
よりシリアスに、よりスリリングにミステリアスにアレンジされ
もともと持っていた"不安定さ"が強調され、
ここでようやく一般的にエンターテインメントに耐えうる一曲になった気がしています。

それこそ、悪い言い方をすれば、内へ内へと向いていた曲。
例えば初出の頃にこれをテレビで一曲だけ歌唱したら
なんて中途半端な曲やってるバンドなんだろうとスルーされかねません。

それが今回のアレンジでは「離さないで」いるよ、という宣誓と
私は捉えました。
単独で聴いてもかっこいい曲になったんじゃないかなと思います。


Tr.2「D&D」

初出はなんと1999年。2ndデモテープからの選出。
つまりよっぽどのファンでない限り所持していなかった音源
20年以上の時を経てついに正式にパッケージされたことになります。

メロディックパンクのようなファストなチューン。
一応ライブでは演奏されていましたが、
ぶっちゃけ再結成前まで(~2005年)はほとんど披露してませんでした。

きっかけは確か、再結成時にリクエスト投票されたら絶対やりますライブで
あまりにライブでやらなさすぎて票が集中した中の一曲で、
普通はそれでも微妙な曲はやらないアーティストが多い中で
彼らはソレに応えてしまいます。

「10代に作った曲やで!このアレンジありえへんやろ!?」
「トシさん(永井利光/GLAYのメインサポートドラム)に叩かせるのが申し訳ない」
「最後ギター両方ピロピロするからスカスカやねんけど!?」
というメンバーを尻目に会場は大盛りあがり。

確かに

夢を見てよ もっとすごい 誰にもできないような
夢を見てよ 今のままじゃ 落ちてくだけだから

かなり青臭い歌詞で楽器隊も勢いをそのまんまパッケージしたような編曲。
それこそデモテープならではこその思春期中二病レア曲だったこの曲は
ファンのレスポンスも上々だったせいかその後も頻繁に演奏されていました。

それが今回満を持しての音源化。
しかもこの曲が持つ純粋さはそのままに、ストリングを加えることによって
若者に"夢を持てよ"と諭す大人の楽曲へと仕上げています。

ボーカルの声もほんとに40歳かと思うような瑞々しさ。
贔屓目に見ても歌唱力が際立つタイプのボーカリストではないのですが
感情を歌声に宿すのが格別。
当然ライブのほうが顕著ですが、CDでここまで感情までパッケージできるボーカリストはあまりいないんじゃないでしょうか。
普通はCD音源は丁寧に歌い上げますからね。希少です。


Tr.3「You gotta be」

初出は2001年。メジャーデビューアルバムの1曲目に位置していた楽曲。
4つ打ちにファンキーでフュージョンな上モノが乗っかり
アルバムの幕開け感満載のアッパーなナンバーで、
早口でまくしたてるBメロが印象的。
まさに歌詞の一節にある"ハイよりなグルーブ"。

よってアルバム発売当初のライブでは披露されていましたが
それ以降は出番は控えめ。
再結成後もそんなには演奏されていませんでした。

ただ彼らのライブ定番曲である「終わらない夜のマーメイド」へ繋がるのに一番適した歌詞と曲調なこともあり、演奏されれば大盛りあがり。
いつのまにか演奏される頻度も高くなってきての今回の収録。

これもいわば若い頃の楽曲、と普通のアーティストなら片付けてしまう曲調なのですが、ボーカルは今でもこんな感じで歌えるのか……とただただ感心するばかりです。

あと、wyseはV系では世にも珍しいツインボーカルです。
これはそれを活かしに活かしまくった楽曲。
ほぼ掛け合いだけで成り立っているメロディラインです。

アレンジは爽やかさ増し増し。
ホーンとストリングスでキラキラしています。
めっちゃダンサブルでDJに好まれそうな曲となっています。
1曲目!という原曲とは違い、こうしてトラック3にいても違和感のないアレンジはさすがだなという感想。


Tr.4「譲りたくはない想い」

出ました。私にとって人生の一曲。一生歌い続ける叙事詩。

といっても、おそらく普通の人にとっては単なるアルバムの一曲
ミディアムテンポなバラードで、展開の起伏が少ないナンバー。
コード進行の焦らしもなくすっとセットポジションに戻るような
ともすれば物足りないとさえ感じてしまう曲。

こちらもメジャーファーストアルバムからの選出。
アグレッシブな"Double"と"edge"に挟まれていて、悪く言えばアルバムの流れを遮断する間の悪い曲です。
どうしてこの曲順にしたんだろう……"SCREEN"の前とかのほうがいい気がするんだけど。

実際彼らのバンドの中でも人気曲ではありませんし、
特別フューチャーされることもありません。
私が勝手に歌詞を気に入ってるだけです。

少しだけこちらでも触れてます。↓

思い入れが強すぎてどうアレンジされるのかが密かに不安だったのですが
杞憂でした。

当然ですが成熟したボーカルの表現力が過去よりも増したことによって
より叙情的に歌詞が響きます
オケもホーンによってドラマティックに変貌。

作詞作曲を担うTAKUMAがライナーノーツを上げるようで、
(「離さないで」のところにあるリンクのこと)
この曲をどう語ってくれるのかが楽しみです。

深読みする余地もなくかなりストレートな歌詞なのですが
どういった思いを内包しているのか。

心から笑えたはずの顔も歪んでいくんだ
それも結局 僕のせいらしい

また一つ、私の"大切"が更新されました。


Tr.5「It's not like me, It's not like you」

初出は2001年。
メジャーデビュー直前の3枚連続リリースの第1段の曲。

wyseといえば、という爽やかなメッセージソング
PVも猫が超絶かわいいです。

背中を押してくれると言うよりは寄り添ってくれる系の歌詞。
タイトルは直訳で「僕らしくもなく、君らしくもなく」。
何が”らしくない”のかはそれぞれが読み取ればいいのです。

アレンジも相まって今回一番印象が変わる曲
アルバムのラストにふさわしく、
エンディングを匂わせる音色がたまらなくドラマティック。
TREE-Glow-時の「心の隙間」の-sound like wind-みたいに
副題を付けてほしいくらいです。
(まぁそれはTREE-wish-収録の「Scribble of child」だったり
遡れば7-marine disc-の「little peace」にも言えることか。)

簡単に言えば、原曲は"君と僕"という小さな視点で語られているような
そんなシンプルさがシングルらしくて聴き心地が良いアンサンブルですが
壮大になって大衆へ向けての投げかけになってしまってるのが面白いです。

今こうして縮こまってる姿はほんとうの君の姿なのかい?
そう問われてしまった気がします。

ましてや、今私はまさに暗中模索、
まったく上を向くことに恐怖してしまっています。

弱気な夜は 君らしくも 僕らしくもないんだから

けして自分も強くない、けどそれは本来の姿でもない。
本来の自分はもっと精力的だったはずだ。
夢見ていたあの頃の気持ちを取り戻そう?
今すぐじゃなくてもいいから。

そう言われてる気がします。

だからといって浮上しました、とはならないけど
やっぱり現行のバンドが一番私の胸には響きます。


Style総評

全体的に[Sweet Horn mix](←Surfaceにたまにある表現)という感じで
大人のwyseという印象でした。
でも柔らかくはなっても尖ってはいるな、と。
年をとってバラードとかばかり歌うボーカリストには見習ってほしいですね。笑

もちろん初見で聴いてもかっこいいと思うので
GLAYやSOPHIA辺りが好きな方は是非聴いてみてください。
といってもファン以外がこのCDを手にするとは思えませんが……


Afterword -I'm sure your dream will come true-

このwyseというバンド。再録音源が非常に多いです。
再結成しても当時の音源と今ライブ等で聞ける演奏が違いすぎて
自室ではどうしてもその乖離が寂しいなぁと思うことありません?

それをwyseは埋めてくれます
再録シリーズは「TREE」というタイトルを掲げ
ミニアルバムが4枚、アルバムが1枚。そして今回新たにミニアルバム1枚。
一部楽曲(friend、Colors、RESET、My seethrough life)は入手困難ですが
「Breath」収録の「With...」と併せ実に44曲を再録しています。

もちろん新曲の発表も怠らず

再結成しても音源を発表しないバンドが多い中で
こうして継続的に音源を残してくれるのは非常にありがたいですね。

ジャンヌは解散して好きな曲も勇気づけてくれる曲も多いけど、
そんなわけで今はwyseがやっぱりいちばん好きですね。
Kαinはもっと普通に買えるようにしてほしいです。
the WOR【L】D買いそびれました……


今日はBGMはずっとwyseです↓

画像1

20210925のセトリ、らしいです。
毎回ぜんぜん違うセトリなのもいいですねぇ。
どのライブも見逃したくなくなくなる。実際はそうもいきませんが。


というわけで今日はこのへんで。

画像は、
今回は希望者はサイン入りで購入可能だったので珍しく乗ってみました。
shujiのサインもあります。嬉しい。
食費を削った甲斐がありました。


てかwyseでタグ付けしてるの自分しかいないことに気づいた。
……もっとwyse皆に広まって!
野性爆弾くっきーが描いたPVも感動モノだから!



最後まで長文お読みいただき誠にありがとうございました。 つっこみどころを残してあるはずなので 些細なことでもコメント残してくれると嬉しいです!