ポジション
先日、高校時代のサッカー部で集まってフットサルをした。
私にとって2年ぶりの再会だった。
参加者のほとんどがフットサルやらツーリングやらスノボやら飲み会やらで定期的に集まっているので、私だけが異分子のような存在だった。
今回参加しようと思ったのは、みんなと会うのはこれが最後の機会かもしれないと考えたからだった。
私は来年度から東北地方で就職する。
そして、関西に支社がほとんどないので、関西に戻ってくる可能性も少ない。
それに加えて、私の父もそろそろ転勤する時期なので、実家が京都ですらなくなる可能性が高い。
そうなると、みんなと会うことは難しくなる。
それらの事情を踏まえた上で、最後に餞別の意味を込めて青春時代の一番熱い時代を過ごしたかつてのチームメイトと会っておきたかったのだ。
2年ぶりという言葉でわかるように、私はサッカー部のメンバーと仲が良いわけではない。
彼らとは趣味や価値観が全然違うので、一緒にいてどこか窮屈だった。
高校時代は毎日部活があった為、オフの日に彼らと遊ぶことも多かったが、大学生になるとどんどん距離ができていった。
たまたま同じ駅から○○高校という電車の、サッカー部という車両にたまたま居合わせて同じ駅を目指して進んでいっただけに過ぎなかったのだ。
久しぶりに会った彼らは風貌こそ変われど、あの頃と同じような他愛もない会話を楽しんでいた。
私は上手く馴染めるかかなり不安だったが、杞憂だった。
それは私に明確な役割が与えられていたからだ。
ゴールを守るという、単純でいて、難しいミッション。
私は学年唯一のゴールキーパーだった。
だから、居場所があった。
対戦相手は社会人のフットサルチームで、月に何度も集まっているだけあってとても連携が取れていた。
それに対して、私たちはメンバーのほとんどがボールを蹴っていないので、序盤は一方的に攻められまくった。
私もキーパーをやるのは半年ぶりだったので、シュートを止めようとしても体が思うように反応してくれなかった。
シュートってこんなに怖かったっけ??なんて思ったりもした。
けれど、元サッカー部なだけあって感覚を取り戻すのにはそう時間はかからなかった。
裏を受けてきた相手プレーヤーに対して、私は間合いをつめてシュートコースをなくす。
股を大きく開けて、シュートを誘導する。
誘いに乗った相手プレーヤーは股下にシュートを打ってきたので、私はすぐさま股を塞ぎ、ピンチを凌いだ。
その時、チームメイトが「ナイスキーパー」と駆け寄ってくる。
ああ、何も変わらないんだな。この場所に立てば、これからもずっと。
私はそう思った。
趣味が違っても、住む地域が違っても、こうして集まればあの頃と同じサッカー少年に戻れるのだ。
結局、あっという間に時間は過ぎていった。
シュートを止めた喜びとか、喜んでくれるチームメイトとか、ゴールキーパーのやりがいとか、長い年月を経て忘れかけていた感情が蘇ってきた。
社会人になったら会社のフットサル部にでも入ろうかな。そう思えるくらい久々にボールを蹴るのは楽しかった。
ずっとゴールキーパーとして試合に出ていた為、元チームメイト達とはあまりたくさんの話をできずに解散となった。
みんながどこでどんな仕事に就くのか知らないけど、また機会があれば一緒にボールを蹴れたらいいなぁ。
私はその時までにゴールキーパー以外でも上手に組織でポジションを確立できていたらいいなぁ。
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