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今日見た映画(2020/04/12)

・『ONE OF US』 監督:ハイディ・ユーイング レイチェル・グレイディ(2017年) 

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ユダヤ教ハシド派コミュニティーから抜けようとする人々の葛藤と闘いが描かれている。若くして結婚させられた女性は同意なき性交と連続妊娠のスパイラル。離婚すれば親権は確実に夫のもとに取られる。親権を法廷で争おうとするものなら共同体による尾行・監視・暴力の餌食となる。徹底した男尊女卑が貫かれているのだ。若い青年も自由を求めてコミュニティーを飛び出すがどこにも所属していない浮遊感に耐えられず戻ってきてしまう。とどまるものに寛大で、一旦外に出てしまったものには排除。信仰を捨てれば大きな犠牲を払うことになる。あらゆる宗教コミュニティに共通する原理だ。劇中では男の子に対する性的虐待がもみ消されているという告発もあった。アメリカでペドに対する厳しい法律が存在しているにも関わらず、閉じたコミュニティには司法のメスが立ち入れない。それだけ強固に作り上げられた世界なのだ。もちろんこの映画の中で描かれるのは外側から見た共同体の姿であり、内側からの主張はほとんど示されない。その意味でバランスを欠いていることは間違いない。あちら側が同じようにドキュメンタリーを作れば、共同体がいかに素晴らしく地域社会に貢献しているかを描くだろう。信じているものは違えどお互い幸福に生きていこうよ、というポジティブなメッセージで締めくくられるはずだ。きっと”あちら”と”こちら”の主張は常に平行線で交わることはない。世の中にはどれだけ力を尽くしても抗えないモノがあることを痛感させられた。

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