【生活日記】2023年4月18日 ベルリン国際映画祭のホン・サンスQ&A、アピチャッポンとティルダ・スウィントン対談に刺激される。
8時45分起床 9時1分出勤
今日は担当部署が私一人なので地道にタスクをこなし時間貯金を作る。
吉田類の酒場放浪記、おんな酒場放浪記をTVerで再生しながら作業を進める。
吉田類〜のほうは青森県は弘前市を訪れていた。女将さんが饒舌かつ物珍しい郷土料理のオンパレードで盛り上がっていた。おんな〜のほうは通常回とスペシャル回の両方を視聴。スペシャル後半でアトロクでおなじみの日比麻音子アナウンサーが登場。安定感のある飲みっぷりとリポーターとしての素晴らしい仕事ぶり。定期的に出演してくださると視聴率もうなぎのぼりではないだろうか。
数年前から酒場放浪記のメニュー紹介の場面をスクショする活動を続けている。寄席文字、相撲文字とならんで独特の美的センスを感じる。これだけをまとめたZINEを「酒場文字の誘惑」とか適当に名前をつけて出版したいぐらいだ。(配布を前提としない私蔵版なら”違法だよあげるくん”に摘発されないのだろうか)
本当にお金がなくなったら自分で自分の読みたいものを作って自分で楽しむ人になりたい。
昼食後に近所のドラッグストアでヤマザキパン製の4個入りドーナツとブレンディのジャスミンティーオレを購入。それを食べながら前日の日記を仕上げて公開する。
午後からはYouTubeで見つけたベルリン国際映画祭のホン・サンス登壇回の映像を観る。公式動画ではなく一般参加者が撮影したもののようだ。
ホン・サンスと主演俳優、インタビュアー、通訳者の英語・韓国語入り乱れるやりとりが40分続く。ホン・サンスの英語はかなり癖があり、ボソボソしゃべるので聞き取りにくい。韓国語に至っては歯が立たない。それでも概要ぐらいは掴めないものか。
以下に我流の翻訳メソッドを記録する。
①Google ChromeにGlaspという拡張機能をインストールする
②該当のYouTube動画の横にトランスクリプトが全文表示されるのでコピーする(画像赤枠の部分)
③ChatGPTに分割して貼り付けて日本語翻訳する。Chrome拡張機能にOndoku3-ChatGPT(BETA)をインストールしておけば、翻訳と同時に読み上げてくれる。
現状ではChatGPTが一度に翻訳できる文量には限界がある。途中で止まったり、貼り付けたはずの文章の一部しか訳してくれないこともある。それでも日本語字幕の存在しない映画祭の動画を、ある程度理解ができるレベルにまで翻訳できるのだからすごい時代になったものだ。
ちなみに韓国語で話されている部分は以下の手順で翻訳できる。
①YouTubeで動画を再生しながらGoogle ドキュメントで韓国語の音声入力を行う
②韓国の翻訳サービス Papagoに貼り付けて韓→日に変換する
『In water』上映後の質問コーナーではホン・サンスや俳優陣に対して今作の制作のプロセスや特定のシーンに込められた意図などについて質問が飛んでいた。監督に対して「〇〇のシーンには消費社会や環境問題への言及の意図があるのか?」と質問されると「観客に向けた意図はない。どのように感じてほしいとかも思っていない。ある程度は責任を持つ必要はあるが、明確な意図や効果を狙っているのではなく、より感覚的なものだ」と掴みどころのない返答しかしない。彼のたどたどしくも穏やかな語り口や仙人のような雰囲気に会場全体が引き込まれているのは伝わってきた。
観客からの質問で印象的だったものをメモしておく。なんとなくそういうことを言いたかったのかな?という意訳ですl
なんとなく良いことを言っているような気がする。
その後、YouTubeでMUBIポッドキャストのアピチャッポン・ウィーラセタクン&ティルダ・スウィントンの対談を聞く。1時間12分の長丁場だが、これがべらぼうに面白い。『メモリア』を観た人なら絶対に言っていることがわかるはず。
いろいろと面白い話が語られていく。気になったところを意訳の上でメモする。
・『メモリア』は当初タイを舞台にした物語にするつもりだったがフレームが思うようにハマらず、後にコロンビアを舞台にすることになった。
・主人公が患う爆発音の聞こえる症状はアピチャッポン自身の経験とされているが、彼によると「爆発音は自分の意思で出す(つまり頭の中で鳴らすことができる)」とのこと。ティルダがすかさず「それってつまりイビキのように出せるってこと?」と興味津々で掘り下げていたのが面白かった。
・最近良かった映画は?という質問にティルダが挙げたのがアンドレア・アーノルド監督の『Cow』。ドキュメンタリー映画だが、何かのラベルを貼るのではなく「牛のポートレート」として良かったとのこと。MUBIで配信されていた作品なので少し配慮しているのかとも思ったが、彼女が映画をよく観ているのが伝わってくるチョイスだった。
・ティルダにとってアピチャッポンと共に映画を作ることは「新たな発見」以上の意味を持っている。彼女のキャリアの中でも最初期、デレク・ジャーマン監督のやり方とアピチャッポンのやり方は似ている。つまりアピチャッポンと働くことは自分のルーツに帰ることを意味する。
全部聞けたわけではないが、2人の対談はめちゃくちゃ刺激的だし、全文書き起こしの上で記事にしてもいいぐらいだと思う。『メモリア』の日本向けパンフレットと合わせると、かなり作品に対する理解度が高まると思った。
夕食にはホットクックで作った醤油パスタと貰い物のローストポークをあわせる。タンパク質がしっかり取れたので普段より満腹感があった。
夕食後にYouTubeで限定公開中の孤独のグルメを観る。シーズン2第10話 北区十条の鯖のくんせいと甘い玉子焼。井之頭五郎が腹をすかせて商店街をさまよう姿がなんとも滑稽だった。家庭的な雰囲気の飲み屋がとても魅力的なのだが、五郎の食事シーンで手元の皿がカウンターの作りのせいで完全に隠れてしまっていた。このドラマは視覚で食事を疑似体験する醍醐味があると思うのだが、箸でつまんだ料理しか見えないので美味しさ1/3以下に感じてしまった。料理系ドラマもただ食べる姿を撮ればいいわけではないらしい…
MUBIでアニエス・ヴァルダ監督作の短編ドキュメンタリー『The So-called Caryatids』を観る。パリの街に無数に点在する裸の女性像にカメラを向ける。数少ない男性像は筋骨隆々で緊張の表情を見せる。大多数の女性像は無表情で軽々とファサードを支えているようにも見える。アニエス・ヴァルダは家父長制の色濃く残る社会で透明化される女性の労働にまで視座を広げる。終盤にかけて朗読されるボードレールの詩の引用はハイコンテクストすぎてちょっとついていけなかった。おそらく『悪の華』からの抜粋だろう。アニエスはフランスのフェミニズム運動と呼応してかなり早い時期から作品のテーマに女性の体や性についての作品を発表している。また最初期は写真家としても活躍していたので、今作の街に対する視点の向け方なども写真的な要素もあるのではないかと思った。様々なバックグラウンドが12分の映像作品に凝縮されていた。
0時過ぎから日記を書き始めたらあっという間に深夜2時になってしまった。今日こそ早めに寝たい。
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