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【EURO2024レビュー】オランダvsオーストリア 厳しかったトランジション勝負【グループステージ グループD第3戦】

こんにちわこんばんわ、ひだりです。

Windtosh’s Catina Project.さん#ユーロ2024アーカイブ化計画 に参加しています。

抽選の結果、ひだりはオランダ代表を担当しています。
今回は2024/6/26(水)日本時間 午前1:00キックオフ、オランダ代表vsオーストリア代表戦のレポートです。

どうぞよろしくお願いします。


試合前のトピックス

グループステージもいよいよ最終第3節。オランダは前節フランス戦を0-0ドロー。グループDは1勝1分け勝ち点4で並ぶオランダ・フランスをオーストリアが1勝1敗の勝ち点3で追う形でグループステージ最終戦に臨んだ。

最終戦の結果によってラウンド16の日程・対戦相手および3位抜けの可能性が変化する状況にあった。2連敗でグループステージ敗退が決まり意地を見せたいポーランドも含め、当然ながら4チームすべてが「ここをなんとか勝っておきたい」と闘争心を駆り立てられる状況の中、試合当日を迎えた。

結果

🇳🇱オランダ 2-3 オーストリア🇦🇹

結果としては、縦クサビの中継地を消され続け、オーストリアの土俵・トランジション勝負に持ち込まれた時点で自然な結末だった。。

フルマッチはABEMAでどうぞ!

基本配置

オランダ 433 保持3241~325 非保持4231~451

オランダの配置は基本433。保持時は前に人数をかけてCFデパイを最前線に置いた3241~325、非保持守備時は4231~451くらいで中盤の枚数を厚くしてボールサイドにコンパクトに人を集めるオーストリアに対応した。

オーストリア 442(4231) 保持・敵陣非保持244 自陣非保持442

オーストリアは攻撃守備ともに442。中盤コンパクトに人数かけて前線が寄せてパスコース封鎖、中盤エリアでは前線のプレスバックも絡んでボールを奪い切る。奪ったら速い攻め。
ボールサイドに密集作りつつボール奪えた際に逆サイドのSHが1人外めに張ってペナ門外あたりを取る準備をしているのが周到。

前半

オランダの入りはアグレッシブだった。慎重さを見せた前節フランス戦から切り替え、親善試合アイスランド戦や初戦のポーランド戦でも見せていた3バック・中盤前線の縦関係の入れ替わり・テンポの速いパスワークを活かした襲いかかる。

一方のオーストリアの中盤コンパクトの密集プレスで対応。セカンドボールもボランチ、SB、SHで囲い込んで回収。
オランダのビルドアップ時3バックに対して3バックの脇が空きやすいことをふまえ、

  1. 密集で回収

  2. コンパクトな距離感でのパスワーク

  3. 逆サイドに展開してサイドからのクロス

といった攻撃を開始早々から何度も見せていた。

オーストリア狙い通りのサイドアタックで先制点

オランダがオーストリアの激しい中盤守備に前進しあぐねる中、6分の先制点もまさにこの形から生まれる。
オランダのサイドからの前進を奪ったポーランドは一度ボールを最終ラインに戻し、オランダの守備全体を前にひっぱるとCBフィリップ・ラインハートのドリブル持ち出しから中央付近のFWマルコ・アナウトビッチにつける縦楔、逆サイドを駆け上がる8アレクサンダー・プラスが速いグランダークロスを入れる。
このボールを前線からCB脇を埋めようと長い距離を走り戻ったマレンがスライディングでクリアを試みるも、クリア方向に誤りボールは自陣ゴールの中へ。
前半速い時間帯からオウンゴールでオランダが先制される波乱の空気。

オランダの前進を許さないオーストリアの激しい守備

それでもオランダは攻め手をブラさない。最前線デパイがプレスで誘導し、中盤でのボール奪取から速いテンポでの前進を試みる。
果たして奪えても圧縮守備、狭い距離感でどんどんプレスで突っ込んでくるオーストリア。ボールを奪えてもかなり窮屈な中でのパス回しを強いられる。
ミドルサードでは、オランダにプレスを突破されそうになるとファウル覚悟で抱え込んだり足をひっかけて相手を止めるシーンも多々見られた。

またオーストリアのネガトラ時の帰陣のスピード・強度がかなり早かった。
オランダがなんとかオーストリアゴール前でフィニッシュに向けた崩しを発動しようとする頃には、ほぼ同数のDFが戻っている。

オランダはオーストリアのプレスが失敗した1チャンスを素早くフィニッシュに持ち込む狙いで臨むも、オーストリアの激しい守備に塞がれ、ゴールへの道のりの遠い時間が続いた。

興味深いオーストリアの守備体系

オーストリアの非保持守備は46くらいで表現する方がよさそうな印象だった。最終ラインを4枚敷いたうえで5枚でオランダ中盤のボールの受け手を囲い込み、枠内の1枚が寄せて窒息させる。ボール奪うとすぐに縦またはボールサイドと逆側の五角形頂点にボールを逃がす。

また、オーストリアのハイプレス、素早い囲い込みで奪った後、選手同士が近い距離感であることを活かしたパス連携も非常にクレバーで安定していた。

それを、特にオランダから見てアケのいる左サイド(オーストリアの右サイド)での密集構築を繰り返した。
かなり狭い範囲でのパス回しにも余裕と勇気がある印象だったのは先制点を奪った好影響だったかもしれない。

オランダは攻め急ぐ意識も手伝ってか、縦に長めの速い縦楔で状況打開を試みるるが、間延びした布陣の合間にオーストリアの選手がいるため展開が苦しい。パスコースの選択肢が少ない分、オーストリア側も思い切って守備に寄せられる状況が続いた。
オランダが中盤でチャンスを作りかけると、即座にファウル覚悟のトリッピング・ホールディングを仕掛けては、ピンチの目をつぶした。

苦悩のフェールマン交代シャビ・シモンズ投入

34分、引水タイム明けのタイミングでフェールマンに代えてシャビシモンズ投入。誰かもXで言っていたが、オランダとしては完全に「引き摺り出された」形。上手くいっていないところを中央から代えに行く。

実際、シャビシモンズは中央で動き過ぎることなく、ボールの出し手にパスコースの選択肢を作り守備陣と攻撃陣をつなぐ仕事を見せ、オランダのボール保持も一定改善の空気を見せる。
オーストリアも4バックを維持し中盤の分厚い守備で前線を許さず、バックパスもうまく使ってオランダのプレスを引き出してからの速いロングボールでカウンターを狙う。

結果として、オランダ側もオーストリア側も、双方「ロングボールやスルーパスで一気に裏を突く攻撃」が目立つ展開の中、双方抜け出してはゴールを割らせないまま、オランダのCKが外れたところで前半終了。

前半総括

オランダは中盤でボールを受けて飛んでくるプレスをはがしてから前に進みたいところ、なかなかプレスをかいくぐれず、かいくぐれそうになるとオーストリアのファウルでプレイ中断されてしまう。

シャビシモンズの投入で長足のパスコースが取れつつあるが、シモンズの位置にパスを届けるには五角形六角形に密なオーストリア守備網を貫くボールを届ける必要があり、途中でひっかかりやすい。

中央のパスラインを見せることでオーストリア守備を誘き寄せ、サイドに展開したいところだが、オーストリア密集つくる逆サイド幅もケアしている役割の選手が配置されているので、なかなか一歩ずつの前進が機能しない。

結果、サイドよりも縦志向のスルーパスへの抜け出しばかりがオランダの主戦になりがち。密集守備に対して、もう少し横に揺さぶりたいところだが。難しい試合。

後半

一瞬の切り替え中盤奪取から8秒の高速ゴール

後半はオランダボールでスタート。冒頭のプレイでは、GK+ペナ幅に開いた3バックのつなぎに対して、中盤が斜めの移動でパスコースを作ろうと試みる。それでも、結局オーストリアの囲い込みに合いボールを奪われ、オーストリアが再度畳み掛けようと態勢を整えようとした、その時だった。

46分オーストリアのバックパスに対し、レーインデルスがジャストのタイミングのボール受け手への寄せで中盤奪取し、4対3のショートカウンターを発動。こぼれ球を回収したシャビ・シモンズからのスルーパスを受けたガクポがアウトサイド1タッチのトラップで内に切り込んでゴール右側を力強く射抜くゴール。
自陣中盤でのボール奪取からゴールまで、その間およそ8秒の速い攻撃でオランダは同点に持ち込む。

素早いネガトラ・ポジトラへの切り替わりで数的優位の状況が生まれるやすぐに素早く決めきる力は流石。
速い切り替えもまたオランダの後半の改善ポイントではあったが、それでも、この攻撃は決してオランダが本来目論むポゼッションで崩しきってのゴールではなかった。

ポゼッションでの前進の改善を見ないうちにオーストリアからすれば勝負上等なトランジションゲームに持ち込まれているとも言えて、ある種、この試合のオランダを象徴するゴールだったかもしれない。

オランダの一瞬の隙を突くオーストリア2点目

得点後も、オランダは、自陣ビルドアップから丁寧にパスコース作ってつなぐ、相手が寄せてきたらサイドに大きく展開する。
オランダの切り替えは前半のオーストリアのように早まり、オーストリアのボール保持でもボールの受け手に素早くチェックに行く。

ボール保持と縦への速いアタックで攻めきろうとするオランダに対し、ハイボールによる陣地回復とファウルによるプレイ中断でオランダのテンポを断ち切りたいオーストリア双方の出方がせめぎ合う中、前傾姿勢に出るオランダの隙を突いてオーストリアがスコアを動かす。

58分、オランダの攻撃を受けたオーストリアが大きくクリアしたボールを最前線にいた9番MFマルセル・ザビッツァーが頭でつなぐ。
そのままカウンター発動し、10フロリアン・グリリッチュがペナルティエリア内に持ち込み、タッチラインぎりぎりで上げた山なりのマイナスクロスを後ろから入ってきた18MFロマーノ・シュミットが強烈ダイビングヘッド。
ハイスピードな左右縦の揺さぶりでGKは逆を突かれ、枠内にはデフライがいたが強く叩きつけるヘディングショットにハッキリしたクリアできずゴールへ。

オランダの攻撃局面から一気のクリアボール展開で裏返され、規制かけられないままカウンターをモロに食らったのが痛かった。
最後のフィニッシュも方向的にはデフライが触れなくとも入っていたため、失点はやむを得ない部分もあるが、足には触れられていた以上、防ぎたかった。

オーストリア・オランダの相次ぐ交代戦

後半からやや出足の落ちていたオーストリアが、再度のリードを得てまた勢いづく。

得点後の63分前後でオーストリアは3選手を交代、新鮮な選手を入れて守備強度の維持・強化を図る。
65分、すかさずオランダ側もSBアケ、MFラインデルスを下げ、中盤にMFワイナルドゥム、ミッキー・ファン・デ・ファンを投入。アケも下げ、攻め手を変えていく決断をする。

強度を回復し再開したオーストリアの前からのプレスを、オランダはパスで回避しながらサイド経由での個の突破を図る。

69分中盤で2枚のオーストリア守備に挟まれつつ強引な反転を試みた18マレンが足を痛め動けず。試合止まり、オランダは交代を用意。70分、9ポーランド戦でも決めたハイタワーと献身性の男・ベグホルストがin。

72分、オーストリアGKのクリアボールをシャビシモンズ回収してGK出ているのを見てロングシュート狙うも外れる。

交代出場ベグホルストふたたびの躍動

75分、密集を抜け出し左サイドへ良い展開、ガクポのクロスを交代出場のベグホルストがヘディングで落とし、デパイがほぼ脛のキックでうまくゴールに突き刺す。VAR判定入ったが、ゴール認められオランダ再度の同点に追いつく。
ベグホルストは交代すぐのヘディングアシストで結果を出した形。ポーランド戦の決勝点に続く活躍で献身的なラッキーボーイと化している。ハイタワーは正義。

オランダ、78分ドリブルでサイドを運んだデパイがタッチ出るや否やクイックのスローイン、猛烈なランニングで駆け抜けるガクポがオーストリアSB裏を強襲、アウトサイドでおもしろいクロスを上げるもゴール前のベグホルストに届く手前でクリアされる。

オーストリアの隙を突く一撃に沈む

80分コーナーキックの後の守備戻りの隙をつかれたか、GKスローインから一気にサイドを前進され、最後19番クリストフ・バウムガルトナーのスルーパスに抜け出したサビッツァーがニア上を打ち抜くゴール。オーストリア再度前に出る。
中盤の寄せの甘さを感じた瞬間の速い攻めへの対応は、ポーランド戦以来、ずっと課題っぽく見える部分。

直後の82分にも3点目同様のオランダ右サイドのスルーパス攻略でネットを揺らされるもオフサイド判定で九死に一生を得る。
互いにオープンな展開で、オランダ・オーストリア双方ロングボール前進でせわしない展開が続く。
オランダも点を取るしかない状況で、勢いに乗ってくるオーストリアに対して受けに回るとどこか脆い、終盤自陣守備に不安定感をのぞかせるのはわかりやすく悪癖。

オーストリアは次第442ブロックで、奪ったボールもハッキリしたクリアで自陣から遠ざける逃げ切り体制に入る。その分ボールを持つオランダ。オーストリア、ボールを持った時も逃げ道の作り方がこの試合通じてとても巧み。密集守備ながら、奪った後の選手同士の角度の取り方が適切で回避しやすい。

ロスタイムは6分。

90分+2分 オーストリアは交代策を挟む。ゴール前を人海戦術で固める守備と負傷での試合中断も使ってうまく時計の針を進めていく。

90+5ファンダイク、ロングボールを最前線に入れるもベグホルスト、足一歩届かず。オワタ。

オランダ2-3オーストリア 敗戦。
オーストリアの試合序盤の押し込みでオランダを引かせたのが大きかった。

オランダはD組3位で決勝トーナメント進出

https://www.goal.com/jp/%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%88/tournament-of-uefa-euro-2024/blt79b1bc5753bb21fb#csf9ff8c54a3a3202b より引用

グループステージ成績による3位勝ち抜け決勝トーナメント行きが決まり、対戦相手どうなるのかなとヒヤヒヤしていたら、地獄の左山を回避し、右入りすることができました。超強豪級に類する相手はいない+勝ち上がれればオーストリアとの再戦またはEURO序盤に好試合で評判となっていたトルコと対戦は楽しみです。

結果としてDグループでは2位フランスだけ割食いまくった感じがすごいなこれ。もちろん右山の相手も超強いんでしょうけども。

まとめ

この日の試合は視野の広さでオーストリアがオランダを上回っていた。
オーストリアは密集守備、ハイプレスを仕掛けながらも、ボールの逃げどころをうまくつくってつなぎ、頭を越すボールやスルーパスも活かしてうまく攻めた。
オランダは縦に急ぐ意識が強過ぎた分、オーストリアの守備の壁にひっかかりまくった。当然、オランダを縦に急がせたのも、前半序盤のオウンゴール失点にはじまっている。

後半以降も、両軍の決定機の多くがカウンターからの速攻で発生しており、オランダの土俵であるポゼッションでの勝負をさせずに自分たちが得手とするトランジション勝負に持ち込んだ、このゲームはオーストリアのものだったと言える。

オランダの課題

  • アケのサイドを厚めに攻めることでアケの攻撃参加を難しくさせる

  • 最終ラインから中盤につける最初の受け手にファウル覚悟で強く行く

  • ネガトラで3バックをひっぱりながらのポケット攻略に脆弱性

あたりのオランダ対策が見えてきているとして、その上で局面(特に中盤を越える前進時)相手の激しい寄せに個の強さで上回れるか、ネガトラ局面で空いたサイドをどうケアして守るか。
同時に、サイドのケアに意識が行きすぎると縦のパスワークでソリッドな攻撃を仕掛けるオランダの強みが減衰するジレンマも存在する。

攻撃的に行く+最終ラインのファン・ダイクを中心軸とする形で採用する3バック主戦の弱点をどうボカして、決勝トーナメントで結果を出すか。

4バックでバランス取った戦いと状況見て併用したいところだとは思うのですが、フランス戦であれ今回オーストリア戦であれ4バック時の攻撃はデパイ・ガクポの単騎頑張りに依存する色が濃くやや迫力不足で、決め手にかける。

だからこそ、中盤で違いを生み出せるシャビ・シモンズを温存したい、後半のアクセントで活かしたかった今節だったんだろうなと思います。

シャビ・シモンズは2023-2024シーズンRBライプツィヒ在籍。そりゃ対オーストリアのプレッシャー下でも機能はするわ……と、不学ながら試合後に気づきました。

苦戦が伝えられるフランスやイングラントなど他強豪と同様、一抹の不安も抱えつつ、舞台は決勝トーナメントに移ります。
最後はアケとベグホルストに祈りたい🙏


決勝トーナメントROUND16はオーストラリアvsルーマニア、7/3(水)深夜1時キックオフです。

ひきつづき、楽しんでいきます!GO!ORANGE GO🍊

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