Advent calendar (12/23)

●12月23日●

日付が変わってしばらく後
メールの着信音が鳴った

テギョンもようやく帰宅し
シャワーを浴び
ガウンを羽織って
髪を拭いている所だった

「イブは一日用があり残念です
兄さんやジェルミさん
シヌさんにも
誘っていただきましたが
今年は伺う事ができません
本当にごめんなさい」

午前は子供たちとのクリスマス行事で
午後からは
近くの教会の炊き出しの手伝いだと言う

どうやらテギョンの「会いたい」に
特別な意味を感じていないようで

やはり恋愛の愛
恋人とのイブなど
ミニョの思考の中には無いようだった

むしろ
早い時点で
イブの約束を取り付けていなかった事に
テギョンは安堵する始末で

自分とのイブと
愛する多くの人たちとのイブを
天秤にかけられて
重さで負けてしまうなど
考えただけでも・・・

テギョンはゾッと微かに身を震わせ
携帯を机に置いた


HEAVENconcertの後
少しだけ予定を遅らせて
アフリカへと発ったミニョは
3週間ほどした頃
それまで働いていた養護施設に呼び戻され
以降そこで働き続けている

ジェンマ先生のクラスには
今でもたくさんの星が飾られ
子供たちの笑顔があふれている

自身の生い立ちから子供たちの心を
痛い程知っているミニョは
深い愛情で子供たちに接していた

何に対しても真剣で
誰に対しても深い愛情を持って接する
そんなミニョに
自分は救われ
母までも救ってもらった
愛のかたまりのようなミニョ
テギョンが彼女を愛してやまない
大きな理由の一つだった


恋愛の愛への疎さもまぁ
ミニョらしいと言えばらしくて
まるごと愛しい気も
しなくもない

そんな諦めに似た気持ちさえ
テギョンに微笑みを齎した

テギョンは咄嗟に
鉛筆を握る

お気に入りの
芯をきちんと尖らせた消しゴム付きの鉛筆は
よどみなく五線紙の上を滑っていく

まずは音符がそして言葉が
みるみるうちに
五線紙を埋め尽くしていく

出来上がったバラードは満足できるもので
今すぐスタジオに籠って
アレンジ作業に入りたいくらいだったが

明日のラジオに備えて
のどの調子を整えたいテギョンは
ピアノ室で簡単なアレンジを試作する事にした

即興で重ねていく音も我ながら悪くない
スマホに収めながら弾き終えると
ふとあの日の光景が蘇る

ミニョの想いを知った後
ファンミーティングと称して
歌った歌

テギョンが歌い終えると
慌てて鼻のツボを押さえる彼女の右手をとり
その甲にそっと口付けた

クリスマスイブまで
あと1日

記憶がほっこりした温かさを胸に満たし
テギョンは微かに微笑みながら
ピアノ室を後にした

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?