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第2話 矢印を放て

真夏の庭はまるでひまわり畑さながらに、にょきにょきと2階のベランダに届きそうなほど伸びたひまわりで、周りが見えないくらいだ。 アリサはそのひまわりの間を歩いていた。 アリサがまだ幼かったころは、まだこれほどまでにひまわりの数は多くなかったし、背丈も高くなかったが、まだ小さかったアリサにとっては、今のひまわり畑と感覚にはそれほど違いはなかった。 そのころから、ひまわりの間を歩いたり、しゃがんでひまわりの花と、そのむこうに見える青空を見上げて眺めるのが好きだった。 なのにこの夏

    • 第1話 夢を育てるもの

      ふかふかに耕した土は温かく、ほっこりとしていて、なにを植えても、どんな種をまいてもスクスク育つ。 根を深く張り、幹を太く伸ばし、枝葉をこれでもかというくらいに広げる。 そしてうっとりするほどきれいな花を咲かせて、目を楽しませてくれたあと、果汁たっぷりの甘くかぐわしい実をたわわに実らせて、舌をも満足させてくれる。 ミゲルはそれを母親から教えられた。彼の母親は植物を育てるのがとても上手で、ミゲルが生まれたときに植えた記念の桃の木は、密のようなジュースがたっぷりとれる実が、毎年、

      • プロローグ はじまりのものがたり

        その本は普通の本と見た目は変わらない でもいつでも手に取れるかというと、そういうわけではない。 そして本を開く人によって、書かれている内容が違うのだ。 本のなかには強力な磁石があって 本を開いた人と同じ波動のものを寄せ集める。 あるいは、その人が日ごろ意識していること 望んでいることのフォーカスの先にあるものを引き寄せてくる。 だからその本を開くときには、まずその前に氣をつけてほしい。 望みをかかげるように。 日ごろ感じている不安や心配ではなくて 望む現実、こうでありたい

      第2話 矢印を放て