同族会社の借入に社長が債務保証!社長に債務保証料を払うのは税務上、アリ?
会社で借入をする際、社長は自分の個人財産を引き当てとして債務保証をすることは、中小企業でよく見受けれらる。
社長もただ債務保証をするのは嫌だから、その債務保証にかかる保証料を会社に支払うことを要求することも実はあったりする。
では、同族会社が社長に払う本保証料は、法人税法上、損金の額に算入されるのだろうか?
今回は、その点について解説していく。
なお、この記事は、2016年6月25日の肥田木会計事務所ホームページ記事をアップグレードして掲載したものである。最後に、追加のアップグレード情報も記載しているので、併せて読んでいただきたい。
(判例紹介)会社が代表者に保証料や担保提供料を支払うことと、その適正額
会社が金融機関から借入れをするに当たり、その会社に担保能力がないなどの場合には、経営者(社長等)自身が個人財産を担保に提供したり、連帯保証人になるケースがよく見受けられます。
このような場合、会社が経営者に保証料や担保提供料を支払い会社の費用とすることの可否や、その適正額が問題になりますが、過去の判例が参考になりますのでご紹介します。
宮崎地方裁判所 平成10年(行ウ)第6号 平成12年11月27日
①会社が経営者に保証料や担保提供料を支払い会社の費用とすることの可否
会社の代表取締役等の役員が会社の債務について保証を行う場合、公正処理基準の観点から、損金に算入できる保証料額は、諸般の事情に照らし社会通念の許容する合理的な範囲内の金額に限られると解することが相当である。
②保証料の適正額の基準
会社の代表取締役等の役員が当該会社の債務の保証を行い、その対価として保証料の支払を受ける場合において、その適正な額を確定する基準については、利益を得ないことを前提として設定されている信用保証協会の保証料の算出基準を参考として定めた基準(保証する債務額の年利率1パーセントを上限とする。)により、適正な保証料額を確定すべきである。
③適正な保証料額を超える部分の取扱い
適正な保証料額を超える部分は、費用にあたる保証料とは認められず、役員報酬として損金に算入できるかどうかを判断すべきことになる。
~以下、追加アップグレード情報~
債務保証料は、危険負担に対する保証料あるいは個人財産の処分権制限に対する保証料と考えれば、経済界の取引においても起こりうる取引形態である。(これを主たる業務としている信用保証協会の制度がある。)
これは、会社との保証契約により、社長が、自己の財産上の危険に基づいて役務の提供をなし、これに対して、会社は、便益を受け、その対価の支払いを行なったのであるから、その保証料の額が適正な額であれば、法人税法上損金の額に算入される。
保証料に対する法人税法上の損金性については、前述のとおりと考えられるが同族会社の場合は、これとは別の観点からも検討しなければならない。
すなわち、法人税法では、同族会社等の行為又は計算で、これを容認した場合には、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その同族会社等に係る法人税の課税標準等を計算することができることになっている。
もっとも、同族会社の行為否認については、他の非同族会社においてなした場合に有効であるものは、同族会社といえども否認されるべきでないといわれるところであって、この限りにおいては、保証料を支払った場合には、本来認められてしかるべきものである。
以上述べたように、債務保証のための手数料を支払うことは、現在では、慣行化されていることでもあり、また、その額も妥当なものであれば、損金算入が認められるものと解する。
要は、単に課税所得減殺のためだけの一方途として行なわれたものでないことが必要なのである!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?