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現代対遮、あるいは HyperLydian、解析"的"接続【終】

前回のあらすじ:前回の記事見ろ

注:タイトルにある3つの厳つい語は、全て私の造語です。通じません。
(~Lydian のアイデアは、私が確認する限り Jacob Collier 氏が先です。)

しかし適当ではなく、真面目に検討してネーミングはしています。

最後のは「解析学」の「解析」の意味でつけているし、解析接続を連想はしています。
流石にそのまま借用してはつけられないよ。私、数Ⅲの内容すら知らないもん。

 何の話かっつったら、G△7/F△7 みたいな構造の「増8度の対遮」を含む音響体の話でした。

ピアノ十二候』上巻より「五月晴れ」終盤。

🔹

そして今回、数学ガチ勢の方に怒られないように、頑張って

  • なぜ「Lydian要素を拾えるあのコードよりも、さらにやり過ぎちゃってる」のだと考え得るのか

  • なぜ私が、数学(複素解析)の「解析接続」を連想したのか

  • 記事のサムネは何なのか

を釈明して、このシリーズを終わる予定です。

 というわけで今回の内容は、8割くらい「プロ音楽理論アンチ(自称)が数学を調べてみた」です。

↑ 関係の無い動画。


△m△m△m△

 そもそも G△7/F△7 、前回「HyperLydianコード」と仮に呼ぶことにしたコレですが、どういう特徴を持っているのか。

 察しの良い方なら(てか Jacob Collier 氏の奴を知ってる方なら)、サムネとかこの見出しとかから分かっていたかと思いますが、
この積み上げ方、結構 顕著に法則的です。

赤:長3度 青:短3度

「ダイアトニック音組織から1音はみ出す」という点を除けば、形式的には非常に綺麗な法則性を保っています。
(今 "除いた" 点は、一般には非常に大きな問題なのだという話が前回。)

それで、
「🍋△7(9, +11, 13) コードよりも、さらにやり過ぎちゃってる」の感覚を説明するために、いよいよここから数学の話を説明しなければなりません。

キーワードは、"滑らかさ(smoothness)" です。



※注意:
 ここから、数学の実践がまるでない人間が、「文章を読む力」オンリーでまとめた内容が続きます。

複素平面上の座標見て「どっちが sinθ だっけ」って一生なってます。

🔹

🔹

🔹

「微分とは、接線の傾きを求めることだ」
「積分とは、面積を求めることだ」

みたいなのよく聞きますけれども、正直 私はこの言説には不満があります。

初対面の人(特に数学の門外漢)に対して、いきなりこう言いたいならば、

「微分とは、〇〇だ。それはつまり、接線の傾きを求めることだ」
「積分とは、〇〇だ。それはつまり、面積を求めることだ」

である必要があると思うからです。

🔹

微分

 飽くまで数学素人の私が思うにですが、微分の「核心」は、

「変化率(変化度合い)」という概念を導入することにより、
(変化する)物事の理解を、1段階「シンプル化」可能にすること

 だと思っています。

 これをWIkipediaの記事から、より玄人な文で抜き出すなら、

―― 数学における微分法は ―(中略)― 量の変化に注目して研究を行う。
―(中略)―
函数の選択された入力における微分商は入力値の近傍での函数の変化率を記述するものである。―(中略)―
一変数の実数値関数に対しては、一点における函数の微分は一般にその点における函数の最適線型近似を定める。――

フリー百科事典『ウィキペディア』「微分法」記事より。最終閲覧日:2024年7月6日。
なお、( )書きを省略した箇所がある
「函数」と「関数」は同じ。

 用語が玄人すぎて難しいので、私が具体例を示してみます。

🔹

 関数 𝒚=𝒙² について考えます。

𝒚=𝒙² なんで、もう 𝒚 じゃなくて 𝒙² と書いてます。

 𝒙² の挙動を、「𝒙²」という以上に、何か掴むために出来ること。
「𝒙 が 1、2、3… と1ずつ増える間に、𝒙² は どう増えているか」見ます。

最下段に添えたのが、「𝒙² が、いくつずつ増えているか」

 すなわち、変化率(に相当する情報)を調べました。
二次関数の変化率は、一次関数で充分 表せる挙動をする」のです。

𝒙⁰ は 1 なので「𝒚''=2」と言ってるのと同じ。
もはや 導"関数" ではないが。(その意味で「'」記号の使い方は不正確だと思う。)

𝒚' にて現れた「-1」が何の表れなのかは、今の僕には理解できない

 同じ手法(公式使わない&"定義に従って微分" もしない)で、三次関数の変化率ならば、二次関数の挙動になります。
 「変化率」という道具を認めれば、次数を一つ下げて理解・観察することができます。

私はこれこそが、「微分」からイメージすべき事柄だと思っています。

 そして座標平面上では、(𝒚の増加量)/(𝒙の増加量)が、「(その点における)グラフの接線の傾き」に対応します。
 ただし、接線というのは「接点」という、まさしく一点に対してのみ定義されるもので、先程「変化量」と言っているからには区間であり、一点とは呼べない。

 だから、"無限小" の区間を想定するのです。ほんんんnnnのちょっとだけ𝒙が増加した時の𝒚の増加量を考えて、「理想的接線」を求めようとします。

それで「極限」とか出て来て、究極的に「ε-δ論法」とか考えていくことになります。



積分、そして「微分積分学の基本定理」

 一方、積分の方に関しては、本当に歴史上の最初の動機が「面積や体積を求めること(求積)」だったため、比較的 先の言説に文句がありません。

🔹

 以上と一緒に押さえておきたいことは、
「元々 微分学と積分学は、全く別々の動機により、全く別々の分野から生えて来たモノ同士だった」という事実です。

 現代でこそ高校数学の時点で「微分と積分は逆の操作」であるということを即・知らされてしまいますが、当初は驚きの発見だったのですね。

 しかも数学の教科書では、動機(欲求)に基づかずに抽象的な問題だけを解かされ続けるから、この「世紀の発見」の本来の有難みも実感しづらい。

「もしも近道があったらなぁ」という「必要」を、疑似的にでも一度 感じてみることは、
脳への刺激になるのか、"中々ありつけなかった" それが知識として身に付き易くなる…
…場合もあると思っています。

スッと頭に入ることについては、別にやんなくても良いんじゃないかな。



「微分可能」「滑らかさ」

 もういくつか事前準備に付き合って下さい。

――微分可能関数とは、その定義域内の各点において導関数が存在するような関数のことを言う。―(中略)―その結果として、微分可能関数のグラフは比較的なめらかなものとなり、途切れたり折れ曲がったりせず、尖点(カスプ)や、垂直接線を伴う点などは含まれない。――

フリー百科事典『ウィキペディア』「微分可能関数」記事より。最終閲覧日:2024年7月19日。
なお、( )書きを省略した箇所がある

――数学において、関数の滑らかさは、その関数に対して微分可能性を考えることで測られる。より高い階数の導関数を持つ関数ほど滑らかさの度合いが強いと考えられる。
―(改行略)―直観的には、グラフの各点をどんなに拡大しても尖っていないことを意味する。――

フリー百科事典『ウィキペディア』「滑らかな関数」記事より。最終閲覧日:2024年7月19日。
なお、( )書きを省略した箇所がある

――微分可能性は、やはり極限を用いて定義されるのであって、必ずしも直感的に分かりやすい例ばかりではない。――

フリー百科事典『ウィキペディア』「グラフ (関数)」記事より。最終閲覧日:2024年7月19日。

🔹

 数学分野の用語は、そのほとんどが厳密・潔癖な定義が成されているものなので、情感あふれる改説明を安易に試みるべきでないことは承知の上で…

 ここで・この記事で、私が流用したかった「"滑らか"」のニュアンスは、「予定調和的である」「前触れなく、急に予想外の挙動をしない」というような感じです。
 絶対値関数のように急に折り返したり、ルインズスターみたいな動きする関数は、「その点に於いて微分不可能」であり、"滑らか" でない。

(まぁ実際の所、私が本題の音楽の話の方で言っていることは、「法則性を破らない」程度の、非常にライトなニュアンスではあります。)



解析接続

 ――解析学において、解析接続 とはリーマン球面上の領域で定義された有理型関数に対して定義域の拡張を行う手法の一つ、あるいは、―(後略)―

フリー百科事典『ウィキペディア』「解析接続」記事より。最終閲覧日:2024年7月11日。
なお、表示できない記号、および( )書きを省略した箇所がある

 目的の「解析接続」を説明するために、「リーマン球面」「有理型関数」「定義域」の説明が必要です。

 この内「有理型関数」は

 ―(前略)―有理型関数は、分母分子ともに正則関数である分数で表されるような関数―(後略)―

フリー百科事典『ウィキペディア』「解析接続」記事より。最終閲覧日:2024年7月11日。

 ですので、次項に「正則関数」を説明して片付きます。
「定義域」も次項に説明します。

🔹

リーマン球面(※気にならないならこの項は飛ばしても良い)

――リーマン球面は、無限遠点 ∞ を一点追加して複素平面を拡張したものである。――

フリー百科事典『ウィキペディア』「リーマン球面」記事より。最終閲覧日:2024年7月11日。
なお、( )書きを省略した箇所がある

 ということで、あの虚軸と実軸がある「複素平面」に +α した存在です。
「拡張複素平面」とも呼ぶそうです。

 ”球面” というのは、幾何学的(≒図形的)に考える場合はある意味その通りの、図形を考えず純代数的に(数字達のみを)扱う場合、ある種の概念的な比喩です。

 複素数の数体系に「無限遠点を追加する」とは、∞ にまつわるいくつかの特別な計算結果を、数体系のルールとして追加する、ことを意味します。
列挙はしませんが、具体的には「𝔃 + ∞ = ∞」「𝔃/0 = ∞」などです。
(𝔃 は任意の複素数)
一方で 0/0 や ∞/∞ は未定義のままなど、早とちりは禁物です(調べろ)。

 また、「無限遠点」と「無限大」が同じモノ、とは言えません。

 ―(前略)―無限大をある種の数と捉える場合でも、それに適用される計算規則の体系は1つだけではない―(中略)―大小関係を定義できない複素数には無限大の概念はないが、類似の概念として無限遠点を考えることができる。

フリー百科事典『ウィキペディア』「無限大」記事より。最終閲覧日:2024年7月11日。
注:太字強調は私によるもの。

 「∞」は数式に出てきたりするものの、それは1亥だとかの「巨大な特定の一つの数」を表しているものでは、概ねありません。ゆえに皆が困惑する計算結果が導かれたり、特定の演算が「未定義」とかなってたりします。

1や2などの「数の仲間」とは一線を画している、とだけ思っておいて下さい。

 一般的な複素数ではなくこの「拡張複素数」をマッピングすることを念頭に置いた時の座標系が、リーマン球面です。それは別に、地球儀みたいなのを用意して、実際に球面に書き込むわけではありません。
(多分そうしても良いけど)

🔹

正則関数

――正則関数とは、複素関数のうちで、対象とする領域内の全ての点において微分可能な関数である。すべての点で微分可能という性質は「正則性」と呼ばれる。―(中略)―
正則な複素関数は、その導関数も正則である。すなわち微分操作を無制限に繰り返してよい。

フリー百科事典『ウィキペディア』「正則関数」記事より。最終閲覧日:2024年7月19日。
なお、( )書きを省略した箇所がある

 「この関数は、〇〇の範囲で正則である」というような言い方をします。




今度こそ解析接続

 以降も ”私の説明” が続きます。不正確だったりしたらごめんなさい。

 解析接続は、まず「複素関数」の世界にしか無い概念です。
(とは言っても、実数は複素数に含まれる一部なので、私は「複素数の世界でしか成り立たない」の真の意味合いが、よく理解できていません。)

🔹

「特定の数値範囲内でしか定義されない関数」というものがあります。
いま言った数値範囲のことを「定義域」と言います。

 入力値 𝔃 が定義域をはみ出ると、出力値 𝒇(𝔃) が∞になったりして、あまり考察の余地が無くなる、というような感じです。

「解析接続」というのが・その言葉が何を意味しているか。

 誤解を恐れず、まずイメージだけしてもらうために言いますが

それは「関数のグラフ(もとい数値の挙動)に注目してみて、本来なら定義域外であるエリアにも、想像でグラフを延長してみちゃおう」というようなことです。

 当然「想像で」は、「自由に」ということではなく、「こう伸びるとしか考えられないよね」という空気読み…(たとえ話でしかありませんが)理想的な画像拡張AI、のような伸ばし方だけが許されます。

 具体的な条件は「複素平面に於いて、微分可能な関数のグラフを、同じく ”至るところ微分可能" なように(=”滑らか” に)延長する」ことだけが許されます。

 「許されるってなんだよ」ですが、上記の条件つまり「正則」は、非っ常に厳しい条件で、その伸ばし方、「もしあり得るとしたら一通りしか無い」のだそうです。これが「一致の定理」(の一側面)です。

 ゆえに、その「延長してみちゃおう」による結果物は、できたのならば、それが唯一の(妥当な)拡張の可能性なのです。

 その「あり得る唯一の拡張形」には、時に数学的に意味がある。から考察する。というのが、私が現時点で理解している解析接続です。

――解析接続された関数は、もともとの定義域での値が一致し、かつ"滑らかな"関数(この条件で一意性が生まれる)というだけで別物なのです――

https://www.youtube.com/watch?v=fH7FqsATjAg のコメント欄より。

 大雑把な言い方ですが、やっていることはある種の「水平思考ゲーム」だと思って良いのでは、と私は思います。科学の探求って概ね水平思考です。(数学は特に顕著だよね)

お疲れさまでした。



△13(+11) の ”滑らかな” 拡張 = HyperLydian

 ここまで根気強く読んで下さった方には、「解析 ”的” 接続」という造表現の意図が、既に伝わっているかもしれません。

「調性的な音組織」をはみ出すけれども、「極めて法則的に」拡張している
「定義域」をはみ出すけれども、「滑らかに」接続している

これらを対応させて連想したのです。私が個人的に。

 「長3・短3・長3・短3…って発想で重ねていったらどうなるの?」という水平思考のアイデアの産物です。

12ピッチクラスが出揃うまで「"滑らか" に拡張」すると、最後まで出ないのが A#
異名同音で root の完全4度上(≒アヴォイド)の Bb なのが、ちょいおもろい。

まぁ実質「3度も交えながら二重螺旋的に5度圏を一周」しただけなので、当たり前なんだけど。

でもスタートを一個ずらして「短・長・短・長…」でやってみて。
Am7 が土台で、ラスト E#。ちょいおもろい。

🔹

 で「どうして HyperLydianコード は、増8度対遮なのにギリ聴けるの?」については、無論「唯一の答え」なんて見つかりっこないわけですが、
完全5度を形成しながらだと、調性感があちこちで確立してくれて、複調の音響がマイルド(適当)に聴かれやすいやつ の親戚じゃないですかね?
好き好き大好き~



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