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進む人口減少、地域で子どもを育む必要 〜呉服屋推進員の奮闘〜

学校と地域の橋渡し役として、双方の思いをくみ取りながら、子どもの学び、地域住民の生きがいづくりを行っている地域学校協働活動推進員。呉服店の4代目でもある萬さんは、神岡小中学校区の飛騨市地域学校協働活動推進員として活動しています。毎年保護者らを悩ませている、子どもの自由研究を「駆け込み寺」として受け入れ、サポートするなどしています。一方、積極的にイベントを企画しても思うように集客できないこともあるんだとか。活動内容や奮闘劇、展望などについて伺いました。

■プロフィール
(有)萬慶呉服店 代表取締役(4代目)、飛騨市地域学校協働活動推進員(神岡小中学校区)
萬 英久さん

岐阜県飛騨市神岡町出身。大学進学を機に大阪で就職した。その後、家業の後継ぎとして修行のため、大垣へ。29歳のときに地元神岡へUターンし、呉服店や衣料品を販売する家業を継ぐ。神岡にある桜ヶ丘体育館の指定管理者でもあり、有志のまちおこしグループにも所属している。

29歳のときに家業を継ぐためUターン。まちおこしグループにも所属

——これまでのいきさつについて教えてください

大阪の大学を卒業後、大垣の呉服店で29歳まで働いていました。その後、神岡に帰ってきて、家業の呉服店を継ぎました。ただ、呉服店といっても、今は着物も売れるものじゃないので、婦人服や学生衣料、オリジナルグッズ制作や販売などもしています。
 
実は私は体育館の指定管理者もやっています。有志でまちおこしグループみたいなものを作ってて、その延長で指定管理者の活動をしています。
指定管理者となったおかげでいろんな活動ができています。例えば、私の嫁がヨガ講師をやっていることからキッズヨガ教室、野球大会やソフトミニバレー大会もやってます。

親の代わりに自由研究をサポート。思いが届かない悔しさも

——これまでどういった活動をしてきたんですか?

プログラミング教室やスノーシュー体験会を開催しました。ただ、集客には苦戦していて…。ポートボール教室やヨガによる姿勢をよくする講座、「神岡Tシャツをつくろう」といった企画も計画はしたんですが、人が集まらず残念ながら開催できませんでした。
 
他には、地域に小学校の自由研究をサポートする有志の団体があり、その団体が開催している「自由研究駆け込み寺」を地域支援部としても協力しています。子どもたちが集まって作業しながら、わからなかったら相談している様子や楽しくやっているのをみると地域支援部としても色々と考えるところはありますが、自分たちでは有意義だと思う活動が、子どもや保護者の方にうまく刺さらない時もあります。推進員としてはまだ1年目で、うまくいかないことだらけです。

一丸となって目指す神岡の未来。スキル持つ住民の協力も必要

——推進員になったきっかけを教えてください

去年、キャンプスクールを担当することになったのが最初でした。僕は商工会議所の青年部でキャンプ企画の担当をしていたのですが、推進員をしていた仲間も同じことを考えていて、一緒にやろうという話になりました。あとはそれを引き継いでって感じです。
青年部に所属する経営者が集まって、地域の子どもに対する活動をメインにやってます。地元の会社が協力して、いわゆる社会教育みたいなことをしています。ワクワクワークという、中学校の体育館に各会社の体験ブースを設置して職業体験をするイベントを作っています。ワクワクワークが始まって6年。青年部も協議会も立場は違えど、目指す方向は同じなので、協力してやっていきたいですね。イベントが終わった後、子どもや親御さんから、「楽しかった!」「来年もやってほしい」との感謝の言葉をもらうとうれしいですね。

今年度のキャンプスクール(通称:ひだっこキャンプスクール)の様子。神岡商工会議所青年部と神岡地域学校行動本部の共催で実施された
キャンプスクールには、神岡の小学生〜中学生が参加。サバイバル体験を通し自然の向き合い方を学ぶ

——これからの活動について教えてください

子どもの数が減ってくると、先生の数も減るから、子どもの選択肢が減ってきます。でも、スキルを持つ人が地域にはたくさんいますから、子どもに教えられる体制が取れるといいなあと思っています。

コロナで縮小したバレーボールを教えたい!集客に苦悩

——萬さんが教えたいことはありますか?

この間、中学生の子と話して思ったのは、バレーボールをやりたいなと。今の神岡にはバレーボール部がないのでソフトミニバレーを子どもの入り口にしてバレー人口も増やせたらなと思っています。
最近はコロナウイルスの影響で部活をやらない選択肢がポピュラーで、団体スポーツでも壊滅的なんです。だから子どもの芽を育てられればと思っています。

——今の課題について教えてください

イベントの集客についてですね。どれも格安なのに、どうして集まらないのかなと悩むことでいっぱいです(笑)。去年のキャンプイベントは比較的人が多く集まった一方で、全く刺さらないイベントもあります。
でも、うちの小学2年生の子どもを見ているとこんなものだろうなあとも思います。コロナの影響で、子ども中心の生活が加速した気がします。子どもの習い事を増やして、忙しくなってしまうみたいな。習い事の休みは月曜日が多いので、スポーツ系イベントは全部月曜日に集中させているんだけど、あまり効果が感じられませんね…(笑)。
あと、個人的な課題としては、自分の知り合いにしか声をかけられていない現状はどうにかしたいですね。身近なところで人材バンクとかがあればいいんですけど。
とにかく、私たちの取り組みで何かが成功すれば、可能性が広がるかもしれません。集客状況を改善して、まず1回何かを成功させることが先決ですね。

——最後に一言お願いします!

人口が減っていく中で、今後は同じ思いをもついろんな団体と手を組んでいくことが肝要だと思っています。
もっと理想を言えば、他の団体から企画を持ってきてもらうこと。やりたいものというのをもってきてもらえば、こちらが全部段取りをするという風に、この町のハブみたいな組織になれたらと思っています。